Moonshine 19





「ねえ、皆はこの戦争が終わったら何をしたい?」

ニコルたちの部屋で皆で寛いでいるとき、がそう皆に問いかけた。

「はぁ?そんな事考えてないっての」

ディアッカがそう言ったが

「うーん、俺は思いっきり弟と遊んでやりたいな。家に居る時間が少なくてあいつと遊んでやれてないから」

ミゲルが答えた。

「僕は、ピアノのコンサートを開きたいですね。今度は大きな会場でたくさんの人にピアノを聞いてもらいたいです。そのときは、さんも来てくださいね」

「勿論!ニコルのピアノ、私好きだよ。いつもディスクに落としてくれたの聞いてるし。アスランは?」

の問い掛けがあったときから難しい顔をしていたアスランは

「俺は...どうだろうな。父の後を継ぐのかしれないし。ラクスの事もあるしな。まだ、『どうしたい』ってのは無いんだ」

と、困ったように答えた。

「そっか。ゆっくりでいいと思うよ?んじゃ、ディアッカは?」

「ああ?あー、そうだな...日舞、かな?今は稽古を休んでる形だからちゃんと身に着けたい、かな?お前は?」

「俺は、大学に入って民俗学の研究をしたいと思ってる」

「さすが!民族学オタク!!」

イザークの答えにラスティが茶々を入れる。

「うるさい!それなら、貴様はどうなんだ、ラスティ」

「俺か?俺は、旅に出る」

「...家出?」

ラスティの答えをが聞き返すと

「違う!『旅』だ。プラントも、地球もいろんなトコロで色んな景色を見るんだ。は?俺たちに聞いたんだから、お前だって答えろよ」

「うーん。ラスティと似たようなものかな?色んなものを見てみたい。知らないことが多すぎるから。ゆっくり学びたいかな?」

「んじゃあさ、この戦争が終わったらも俺と一緒に旅に出ようぜ?俺と一緒に景色を見て、歴史や仕組みは俺が教えてやるし。いいじゃん!」

「良くない!貴様は嘘を教えかねないだろ?!」

ラスティの言葉にイザークが過敏に反論をする。

「あれれ〜?イザーク、嫉妬?」

「うるさい!くだらないことを言うな!!」

「『くだらない』だって、。イザークって酷いよなー?」

「何だと、キサマーーー!!」

「おい、イザーク。やめろって」

ラスティのからかいにイザークがムキになる。それをディアッカが止め、アスランは溜息を吐き、ニコルは割れ物をイザークから遠ざける。

ミゲルは楽しそうにイザークを煽っていて、はただ笑っている。

本当は、先の事なんて考えられない。ただ、皆とこうして笑っていたい。

今のの望みはそれだった。

しかし、それも長くは続かなかった。



夕飯を食べ終わって、ニコルたちの部屋でお茶をしようと誘われた。

は一度部屋に戻っていくと告げてから1時間経つ。

「なあ、遅くないか?」

「疲れてて部屋で眠っちゃったんですかね?」

「迷子になってるとか...?」

「また、アイツらに難癖をつけられて来れないとか」

「それならまだいい。またあの時のようなコトになってたら...」

「探しに行ってみよう。部屋で寝てるならそれで安心だろう」

皆は過去のの行動その他を思い浮かべ、心配になってしまった。


さん、寝てますか?」

取り敢えず、の部屋に向かった。

ドア越しにニコルが声を掛けるが返事が無い。

「鍵は..また開いてるじゃないか。まったく、もっとキツク言っとかないとな」

そう言って皆が部屋の中に足を踏み入れた。

しかし、その部屋の中は何となく嫌な感じがした。

の姿も無い。

?いるのか?いるなら返事をしろ、!!」

そう声を掛けても返事がない。

部屋の隅で小さな光が二つ並んでいた。

「おい、あの光は何だ?」

「ハロ!」

その正体に気づいたアスランがハロを手にする。

「...俺たち、外探してくるわ」

そう言ってミゲル、ディアッカ、ラスティ、ニコルが部屋を出て行った。

「録音モードになってる」

ハロの様子を見て、アスランが呟いた。

「録音モード?どういうことだ?」

まだ残っていたイザークがアスランに聞き返すと

「だから、今、このハロは録音中なんだよ」

そう言ってスイッチを切り、再生をする。


『あれ?なんでハロの目が光っちゃうの?私何やったんだ?どれ押したんだ??うーん、仕方ない。あとでこの子持って行ってアスランに教えてもらおう。うわ、そろそろ行かないと皆が心配する!!今まで散々心配掛けちゃったからなー』

...独り言が多い。

2人はそう思った。

そして、ドアの開く音がした。

『あれ?鍵掛けてた筈なんだけど。ってどなたですか?』

『来い!!』

男の声がした。

『え?!イヤだ、何??』

『抵抗するな!!』

先程とは違う声の後に鈍い音がする。

『イザ...』

微かな声がした。

『これで、ZAFTの目的も分かるな』

『ああ、コイツは赤のガキどもと仲がいい。これからの作戦も知ってるはずだ。これで、コーディネーターの主力部隊を壊滅できる』

『青き清浄なる世界のために』

『青き清浄なる世界のために』

ドアの閉まる音がした。


「な?!これは!!」

録音を聞いたアスランは驚きの声を上げた。

は、ブルーコスモスに連れ去られた。急いで艦長たちに知らせないとと思い、ハロを止めようとするが

「止めるな!」

イザークに制される。

「イザーク?」

「それを再生したままブリッジに行くぞ」

そう言ってイザークはハロを抱えて走り出した。

約5分後に

さん、寝てますか?』

というドア越しのニコルの声が聞こえた。


皆もブリッジに集まり、の不在を告げられたラフも来ていた。

艦内全てのモニタをチェックする。を運ぶ不審者が映っているはずだ。

「...ねえ、ディアッカ。アンタがもう一人いるわよ?」

「は?何言ってるんだよ...って俺じゃん」

ここに居るにも拘らず、モニタにディアッカが映っていた。

「つまり、これは...」

「録画、ってことか?!」

「くそ!!」

「このモニタに細工できそうなヤツって...」

「やっぱオペレーターだろ?」

そう言って皆はくるりと振り返りオペレーターに視線を走らせる。

「我々を疑われるのか?!」

オペレーターのチーフが抗議をするが

「んじゃ、誰ならこのモニタに細工できるんだよ」

少年たちに睨まれていたチーフの後ろで

「あのー...」

と控えめな声が聞こえた。

「えっと、何かの手掛かりになるか分からないんですけど。今のシフトに入ってるはずで、でも、何処にも姿の見えない男の人がいるんですけど」

「何だと?!」

「そういえば、彼ってメカニックに仲のいい人、いるよね。さんについて私しつこく聞かれたことありますよ」

「あ、俺も聞かれたことあるな。彼女は赤のメンバーとどういう仲なんだろうなとか。いつも何話してるんだろうとか」

「そいつが犯人か?!」

「分からない。けど、確かめてみる価値は有るよな」

そう言って出て行こうとしたときに

「あ!」

と声がした。

少年たちは思わず振り返り、彼女が示しているモニタを見ると、を抱えて脱出ポットに乗り込む姿が見えた。ヘルメットをしているから男たちが誰だか分からなかったが、確かにがポットに押し込められたのは間違いない。

それを見た少年たちはポットのある部屋に向かって走り出した。

彼等の背中を見送り、ラフが視線をはずしたときに、見てしまった。

ブリッジに居て、少年たちが騒いでいたモニタを見ながら口角を吊り上げているクルーゼ隊長の顔を。



その数時間後、明日行われる作戦の説明があった。

ヘリオポリス侵入、そして、地球軍の新型兵器の奪取。

皆の、地球軍、ナチュラルへの怒りが高まっていた。




やっとこさ、ガンダム奪取作戦までやってきました。
クルーゼ隊長自身、出演は初めてですよね。
名前だけなら1〜2度ありましたが...


桜風
05.06.03


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