Moonshine 20





気が付いたときには冷たい床の上だった。

薄目を開けて様子を窺うと、自分を連れ出した男の一人が目の前に座っていた。

もう一人はどうやら少し離れたところにいるらしく、今の自分の視界の中には居ない。

そして、最も驚いたことに、いま自分が居るのは小さな宇宙船らしい。

気が付いたことを悟られると危険だと本能で悟ったはそのまま気絶した振りをしていた。

「こいつから、ZAFTの作戦を聞き出せば、クルーゼ隊を壊滅に追い込めるな」

(クルーゼ隊の、壊滅?!どうして、そんな...)

「ああ、エースパイロットたちと仲が良かったんだ。作戦の話もしてるだろうさ。これで、世界は青き清浄なる世界へ戻る」

『青き清浄なる世界』と聞いて、思わず声を上げそうになる。

彼らは、コーディネーターではない。ナチュラルだ。しかも、コーディネーターの排斥を強く願う『ブルーコスモス』。

そして、彼らは大きな勘違いをしていた。

は皆から軍のことについて聞いていない。つまり、何も知らないのだ。

自分でそう決めていた。

何かあったとき、知っていたら彼らを危険な目に遭わせるかもしれない。それは、自分にとっても耐え難い事になるに違いない。

だから、皆が演習の内容など、軍に関係していることを話し始めるとは席を外していた。

皆もそれに気付き、の前ではそういう話をしなくなっていた。


暫くして、どこかのステーションに入ったことが分かった。

ヴェサリウスは今、『ヘリオポリス』とかいう中立国オーブの資源衛星の傍にいた。

そう聞いた気がする。

つまり、ここはオーブのヘリオポリスだと考えるのが妥当だろう。

は、薄目を開けて様子を窺い、脱出方法を考えていた。

肩に担がれ、階段を上り、一室に入ると乱暴に下ろされた。

「おい、起きろ」

頬を叩かれ、仕方が無く起きる。

取り敢えず、ここが2階だということは分かっている。そして、自分のすぐ後ろは窓だ。

腕は後ろ手に縛られ、しかし足はなぜか縛られていない。

少し離れたところで男たちが何やら言い合っている。

「じゃ、俺が先な」

そう言って一人が近づき、もう一人は出て行った。見張りに出たのだろうか。

男は近づき、を押さえ込もうとする。

咄嗟にラスティの言葉が頭を掠める。

「体の弱点ってのはコーディネーターもナチュラルも同じだ。まあ、コーディネーターの方が丈夫だけどな。でも、これから教えるところを攻撃されたりするとコーディネーターの俺たちにもかーなーり脅威だ。てか、『人でなし』って思うだろう。いいか...」

その説明を聞いたときはセクハラではないだろうか、と思ったが今ここで役立ちそうだ。

ラスティに教えてもらったとおりの箇所を思いっきり蹴り上げ、男が悶絶しているうちに窓を開けて飛び降りた。

2階からアスファルトの上に飛び降りたため、足が痺れたが、立ち止まれない。

手を後ろ手に縛られているのだから、早く走れない。

木を隠すなら森の中という。

それなら、と思い、人ごみを目指して走った。

途中、学校を見つける。

学校なら自分と年恰好が似ている人が多いはずだ。

そう判断したは敷地内に入り、木陰に隠れた。


夜の時間になって、は動き出す。

とにかく、この手を自由にしておきたい。

構内をウロウロしているとビンが捨ててあった。

ゴミのマナーの出来てない人が居るものだと呆れる。しかし、今日はその人に感謝だ。

そのビンを割り、欠片で何とか腕を縛っているロープを切った。

これで、自由になった。

今の自分の持ち物を確認する。

服装は、実は私服だ。

ニコルたちの部屋に遊びに行くときは大抵服を着替えている。

ポケットには兄の写真が入っている懐中時計。イザークがくれた、大切な宝物だ。

懐中時計の蓋を開けて兄の写真を見る。

大丈夫。

そんな気がしてきた。

明日は、街に出よう。学校の中に居ると、生徒の皆に迷惑がかかるといけないから。




次回から、アニメの時間に入れます。
前置きに20話。
長かったですね...(遠い目)


桜風
05.6.19


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