Moonshine 38




ザフトのパイロットが投降したらしい。

艦内の廊下を繋がれたまま歩くその捕虜を見ては、思わず己の目を疑った。

「...トップガンって何だっけ?」

思わずちらりと見えた彼を思ってそう呟いた。

食堂の仕事が一通り片付いて、その捕虜が居ると聞いた医務室に向かう。

中でミリィの声がした。

というか、騒がしい。

ドアを開けて中に入るとミリィが捕虜に向かってナイフを翳している。

「ちょ、ミリィ駄目よ!捕虜を傷つけちゃいけないんだよ」

そう言いながらは捕虜とミリィの間に立つ。

「どいてよ!」

「ダメ!」

「コイツが、何でコイツは生きてるのに、トールは...!!」

カチャリ、と音が鳴った。

皆がその音に反応し、目を向けるとフレイが銃を構えている。

「コーディネーターなんてみんな居なくなっちゃえばいいのよ!!」

そう言ってフレイが銃を放つ。

は捕虜に被さって彼を庇い、ミリィはフレイを押さえて銃の軌道をそらした。

「何よ、アンタだってホントはそう思ってるんでしょ?!」

そういうフレイを、ミリィは泣きながら押さえていた。

捕虜とはそのミリィの姿を呆然と見ていたが、銃声を聞きつけてクルーがやって来た。

「私は、。貴方は?」

が自己紹介をすると

「お前、何言ってるんだよ!」

「『貴方の名前は?』って聞いてるんだけど?」

聞く耳持たないにそう言われ、

「ディアッカ。ディアッカ・エルスマン」

渋々答える。

「ディアッカ・エロスマンね?」

「『エルスマン』だ!!耳が遠いのかよ、お前」

「お前じゃありません。『』って素敵な名前があります」

しれっと返されて

「はいはい...」

もう何を言っても勝てそうにないディアッカは大人しく引き下がった。

「何事だ?!」

副艦長のバジルールがやってきた。

「副艦長、私この人の手当をして、そのまま独房まで連れて行きますよ。今手が空いてますし」

そう提案したに、当然のことながら

「何を言ってる、二等兵。君は丸腰じゃないか!」

「えーーー?でも、大丈夫ですよ。心配なら銃を貸してください」

「その方が心配だっつうの」

ガモフで銃の練習に参加して見事に肩を外したの経歴を知っているディアッカがボソリと呟いたが、幸いなことに誰の耳にも届いてない。

そう、以外には...

ディアッカの腰をこっそりきつく抓りながらバジルールと交渉したはディアッカの世話係の任まで獲得した。


「バカだね、相変わらず。やっぱコーディネーターでもアホはアホだね」

呟きながらディアッカの手当てをする。

「バカとかアホとか言うなよ。...何でこの船に、地球軍にお前が居るんだよ」

「長くなるから、後で話すよ。夕飯のときにでもね」

「りょーかい」

降参ポーズを取ってディアッカは了承した。



夕飯をディアッカと自分の分を持っては独房に向かった。

「お待たせ」

「サンキュ」

そう言ってディアッカにトレイを差し出し、格子を挟んで向かいに自分はペタンと座る。

「あのさ、さっき医務室に居た奴...」

「ミリィ?フレイ??」

「ナイフを持ってたヤツ。ミリィってお前言ってったっけ?」

「うん。彼女が何?悪いのはどう見てもディアッカだからね?!」

「分かってるって、一応。...アイツの彼氏?どうなったんだ?」

「『MIA』っていうんだっけ?戦闘中の行方不明とかそういうの。でも、どうだろうね。生きてて欲しいけど、でも、希望は少ないでしょ?」

「ああ、たぶんな」

沈痛な面持ちでディアッカがスプーンを口に運ぶ。

もそれ以上は何も言わない。

お互い無言で食事を済ませていった。


「ごちそうさまでした」

「ごっそさん。また食堂で働いてんのか?」

「そ。私の出来ることって少ないからね。ああ、ディアッカ。これあげよう」

そう言ってが差し出したのは飴玉だった。

「はあ?デザートのつもりか?」

「ううん。非常食のつもり」

そういうの答えにディアッカが眉間に皺を寄せて続きを促す。

「やっぱさ、コーディネーターを良く思ってない人が多いから。私が此処に来れなくなったら、ディアッカは食事自体摂れるかどうか分かんないでしょ?だから、糖分だけでも摂れたらいいかなって思って...」

「そりゃどうも。ま、そうならないことを祈っとくよ。で、本題。お前、何で地球軍なんかの軍服に袖通してるんだよ」

「話せば長くなることながら...」

そう言ってはこれまでの自分の辿った経緯を話す。

その話をディアッカは最期まで静かに聞いていた。


「へえ。お前最初からこれに乗ってたのか...危なかったな」

「まあ、ね」

「...てことは、ラクス嬢はこのこと知ってるのか?ホラ、この船に乗ってたことあるじゃん?」

「うん、ラクスには大変なことを頼んじゃった。皆には内緒にして、って...」

「おっまえなぁ...まあ、何はともあれ、結果オーライじゃね?は生きてたんだし」

そう言ってディアッカは呆れたように、安心したように笑う。

つられても笑うが、

「そういえば、そっちの皆は?」

というの質問にディアッカの表情は一瞬曇る。

「あー。長くなるから明日の夕飯の時間ってのはどうだ?お前も此処にあまり長く居ると良く思われないだろうから、今日はこれでお開きってコトで」

そのディアッカの提案が尤もだと思ったは何の疑問も持たずに了承して独房を後にした。

「...たく、俺ってやっぱツイてねぇな」

ディアッカは明日、の表情を曇らせるコトを告げなければならないその役割を担ってしまった自分に同情してそう呟いた。






アニメを見ていて、この回で『ディアッカアホ説』が確立しました。
アホだ...
そして、ディアッカ不運ですね。
ヒロインにみんなの訃報を知らせなければならないのですから。


桜風
06.3.19



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