| 車を降りると兵士に花束を渡される。 これを供えろということだろう。 墓地の中にまで『護衛』の兵士がついてきた。 どの道、誰の墓があるのか分からなかったから案内してもらうのに丁度いい。 まずは、ラスティの墓石へと向かった。 遺体は回収されなかったため、この石の下にラスティは居ない。この墓地に眠る者の殆どがそんな感じだ。 白い花を供えて手を合わせる。 こちらには宗教というものがないため、ラスティが信仰しているものが何だったか、そしてどう祈りを捧げればいいのか分からなかったは、自分が今まで両親の仏壇に向かって手を合わせていたように、そうした。 ラスティ、私は生きてます。一緒に旅がしたかったよ。一緒に世界を知りたかったよ。 ラスティが一緒に旅をしようって誘ってくれたとき、凄く嬉しかった。何も知らない私を気遣ってくれたんだよね? ありがとう。 目を瞑り、ラスティに心の中で語りかける。 顔を上げたとき、優しい風が頬を撫でるように吹き抜けた。 は誰かがいるような気がして思わず振り返ったが、何もなかった。 「どうした?」 「ううん、何でもない。次は、ミゲルだね」 の行動にイザークが声を掛けるが、は笑顔で首を振った。 きっと、気のせいだ。 次にミゲルの墓石まで案内してもらう。 ミゲルもラスティと同じく遺体は回収されていない。MSが爆発したのだから、それは残っていないだろう。 手を合わせて目を瞑る。 ミゲル、いつもありがとう。ミゲルが居てくれたから、私は皆に馴染めました。 いつもお兄ちゃんみたいに私を守ってくれてありがとう。またミゲルと話がしたかったよ。 ミゲルの撮った写真、もっと見せてもらいたかったな。ミゲルが頭を撫でてくれるとき、お兄ちゃんみたいだった。もう一度、撫でてもらいたかったなって思ってます。 目を開ければまたしても奇妙な感覚が起こる。 頭を、撫でられた...? 首を捻っていると 「どうしたの?何処か調子悪い?」 とラフが声を掛けてきた。 「いえ、大丈夫です。最後、二コルですね」 最後の二コルは2人の墓から少し遠い所に位置していた。 教えられた墓石の前に人が佇んでいる。 どうしようかと、皆で顔を見合わせたが、正直、今が墓参りできる最後のチャンスかもしれない。 様子を見ながら皆が近づいていき、アスランが足を止めた。 「どうしたの?」 「あれは、ニコルのお母さんだ」 アスランの言葉を聞いて、一度だけニコルのコンサートであったことのある母を思い浮かべる。 凄く穏やかそうな、優しい笑みを持ったお母さんだった。 きっと、たったひとりの息子を亡くして悲しんでいるのだろう。ニコルは優しい性格だった。その彼が軍に所属し、戦場で散ったのだ。 「おはよう、ございます」 こんな早朝から突然声を掛けられて肩を震わせる。 振り返れば見たことのある人物たちが立っている。 その中で、一度だけ目にした事のある少女に気付いた。先日の彼女の演説を聞いた。 演説ではない、会話だったか... そんなことを思いながら「おはようございます」と挨拶を返した。 「あの、ニコルのお墓に手を合わせさせてもらってもいいでしょうか?」 そう言われて、ニコルの母は頷いて場所を譲る。 花を供えて手を合わせる。 ニコル、久しぶりだね。オーブに来てたこと、あったんだね。皆から聞いてビックリしたよ。私も、皆に気付いたもん。...たぶん。 私、ニコルのピアノ好きだったよ。凄く優しくて、ニコルみたいだった。 ニコルが居てくれて良かった。ニコルに会えて良かった。また聞きたかったよ、ニコルのピアノ。 「さん、ですよね?」 顔を上げたに、ニコルの母が声を掛ける。 「はい」 「息子が、貴女のためにピアノを弾きました。ディスクに録ってあるので今度差し上げます」 「あの、でも。それは彼の...」 「ええ。でも、貴女のために弾いたものです。だから、貰ってもらえませんか?渡せなかった息子でしたが、こうしてさんにお会いできたのもきっと息子が貴女にそれを渡してほしいと言いたかったからかもしれません。 受け取って、いただけますね?」 貰っていいものかと悩んで皆を見ると静かに頷く。 「では。はい、頂きます」 そう言って頷いた。 「私たちの居場所はまだ公表されません。だから、カナーバ議員に預けてください。正直、私たちの一存で受け取れるかどうかも定かではありませんので...」 ラフが付け足す。情報規制されていないとは言え、軟禁されているたちだ。外からのものを受け取れるかどうかは確定できない。 たちの境遇を察したニコルの母も静かに頷いた。 兵士に急かされて、たちは先ほどまで乗っていた護送車で軟禁場所へと帰っていった。 |
これじゃあ、皆が成仏していないようですよね...
いや、そういうつもりは無いのですが...
桜風
07.3.4
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