Moonshine 58





は独り暮らしをしていた。

あの孤児院でラクスたちと生活しないかと誘われたし、カガリも部屋が余っていることだし来ないかと誘われたが、断っていた。


此処だと案内された部屋にイザークは微かに絶句した。

少なくとも外観はボロいし、狭そうだ。

「家賃が安いから」

イザークの反応に苦笑をしながら鍵をさしてドアを開ける。

1Kだから狭いが、中は外観に比べて綺麗だった。

「もっと汚いと思った?」

「いや。何と言うか、少し安心した」

率直なイザークの意見には笑う。

自宅に友人を呼ぶとこのイザークと同じ反応を示す。

「物が少ないから、これで十分なんだよ」

そう言いながら湯を沸かす。

「イザーク、コーヒーでいい?」

「ああ。いや、先にシャワーを浴びてくればいい。気になっているんだろう?」

「じゃあ、お言葉に甘えて...」

火を切って、着替えを持ってシャワーを浴びに浴室へ向かう。


シャワーを浴びてスッキリして戻ると、イザークがベッドに寝転んでいる。

近づいてみると規則正しい寝息を立てている。

椅子を側に持ってきて座り、ガシガシと髪を拭きながらその寝顔を眺める。

「ずるいなー...」

改めてイザークの美貌を羨む。

銀色の月の光のような髪をひと房掬うが、すぐにさらさらと手から零れていく。

今は瞼の下に隠れているが、アイスブルーの瞳は空の青さを思い出す。気を抜くと吸い込まれそうなそれに見つめられるたびに、いつも囚われてしまいそうになる。

軍人だったにも拘らず、手が綺麗だ。すっと伸びた指が多少ごつごつしていて、とても優しいことを知っている。

「イザーク」

名前を呼んでみる。

イザークに名前を呼ばれれば、それは別のもののような響きを孕み、心が乱されるというのに、自分がイザークの名前を口にしても全然素敵じゃない。

この形のいい唇には魔法がかかっているのだろうか?

ツンツン、とつついてみたが何の変哲もないそれだ。

が、ちょっと楽しい。

ほっぺたもつついてみる。肌が綺麗だからさわり心地が良いのだ。

突然手を取られた。

心臓が止まるかと思うくらいビックリする。

の手を口元に運び口付ける。

「くすぐったいじゃないか」

「起きてたの?」

「ああ」

例え起きていなくてもあれだけつつかれれば誰でも起きるのではないだろうかと思ったが、それは言わないでおいた。

「いつから?」

が俺の髪を触りはじめたくらいからか?」

殆ど最初からだ。

「何で寝てるフリなんてしたの?」

「いや。何をするのか気になったから」

「もう!」と言いながらはイザークから離れた。

怒ったかと思ったが、湯を沸かし始め、

「コーヒーで良かったよね」

と声を掛けてきた。

「ああ。ありがとう」

イザークは起き上がって返事をする。


「ねえ、もう会議とか終わったんだよね?」

「まあな。どうした?」

「いや。何時までに帰らないといけないのかなって」

に言われて室内の時計を見る。

「もう戻らないといけないな」

これ以上遅くなったらディアッカあたりが煩そうだ。

「え、もう?」

「ああ。も一緒にな」

「私も?」

「そうだ。じゃあ、行こう」

カップのコーヒーを飲み干して立ち上がる。


先ほどと同じようにイザークの運転で孤児院に戻った。

そこでキラ、ラクスそしてディアッカと合流してカガリのいる政府庁舎へと向かった。

「え、何があるの?」

「政府非公式の食事会。非公式だから、僕たちも来るようにってカガリが」

運転しているキラがそう答えた。

そういえば、最近はカガリに会っていないことを思い出す。勿論、カガリに会っていないという事はボディガードのアスランとも会っていない。

「ねえ、キラ。アスランって元気なの?」

思い出したら気になった。

「あれ?ってアスランと会ってないっけ?」

「うん。最近はカガリと会ってないし、アスランとも会ってないよ」

「そっか。まあ、元気そうだよ。相変わらずだけど」

その『相変わらず』が何を指すのか何となく理解したは「そう」と短く返事をした。

「ところで、ディアッカは何で来たの?」

「は!?」

「いや。イザークはオーブとの折衝があったんでしょう?」

「ああ」

「じゃあ、ディアッカは?」

「イザークの護衛だよ」

「要らないじゃん!」反射でそう答える。

「え、ちょっと、?」

「だって、イザーク強いでしょ?アカデミーでの成績とかもイザークのほうが上だったんでしょ?」

「いや。まあ、うん...」

の言葉に少なからずショックを受けたディアッカは項垂れた。

「まあ、護衛と言うよりも、俺としては秘書みたいなものだ」

フォローに回るイザークに、とディアッカは心の中で「イザーク、成長したね(な)」と感想を述べていた。


カガリが提案した非公式の食事会はアークエンジェルとオーブの同窓会のようなものとなった。

先の戦争を反省し、また否定するものが少なくないため、あまり大仰なことは出来ずに時間も短かったが、それでも、にとっても嬉しい会であった。

イザークとディアッカはオーブ政府の迎賓館に泊ることになっていてここでお別れとなる。

ひとり庭に出て空を見上げる。

月が見えた。あのときに見た星空と何もかわらない。

「どうした?」

を探していたイザークが声を掛ける。

「んー。プラントってどれ?」

に言われて見上げる。

「見えないだろう。光ってないからな」

「そっかー...遠いね」

そう言って微笑むの笑顔が寂しそうで、イザークは一瞬躊躇い、そして抱きしめる。

「もう少し、待っていてくれ」

「うん、大丈夫...」

あと少しで、プラントの方も落ち着く。そうなったとき、議員の証を返してまた地球に降りて来れるから。




もう、何か展開が早くて...(汗)
ヒロイン、何気にディアッカに毒舌です(笑)


桜風
07.5.6


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