My dear 3





保健室の中からイザークの怒声が聞こえてきて、とディアッカは唖然としたが、尚もイザークの怒声は止まらない。

「ねえ、ディアッカ...」

に名前を呼ばれて

「ったく、何をそんなに騒いでるんだか...」

と呟きながらディアッカは保健室のドアを開けた。


保健室の中はイザークの放つ殺気が渦巻いていた。

イザークは椅子を蹴って立ち上がっている。

一方、ラフは椅子に深く腰を掛けて腕組みをしたまま立ち上がったイザークを見上げている。

「何騒いでんだよ」

ディアッカの声にイザークは振り返ってキッと睨む。

ディアッカと、その後ろに隠れていたは一瞬わが目を疑った。イザークの目に涙が浮かんでいるような...?

ディアッカとは顔を見合わせ、

「ま、まあ。落ち着けよイザーク。ラフも」

険悪なムードを和らげようとディアッカが2人の間に立つ。

「俺は、今日ほどラフがヤブ医者だと思ったことはない!」

唸るようにイザークが言う。

「あら、そう?」

挑発的にラフが応えた。

は2人の会話を聞きながら首をかしげたままだ。

ディアッカだって首を傾げたいが、取り敢えず、この険悪なムード、早くどうにかしてほしい。

俺って本当に損な役回りだ...とか思って、さてどうしたもんかと悩んだ。

「なあ、ラフはイザークになんて言ったんだ?」

の診察の結果を言ったのよ。あと7ヶ月だって」

思わずディアッカは絶句した。そしてを見る。まだ首を傾げている。しかも、眉間に皺が寄っていた。

それは、流石にイザークでなくとも叫びたくもなるだろう。自分の愛する妻の命があと7ヶ月だなんて。

、別の医者に見せよう。大丈夫、悪いところはないから」

そう言ってイザークは首を傾げたままのの肩を抱いて退出を促した。


が、

「先生が悪い!普通は『3ヶ月』って言い方するもんでしょ?!そりゃ、どっちを言っても結果は同じだけど、印象が全然違うよ」

が主張する。珍しくラフに向かって怒っている。

ラフを見ると視線が彷徨っていた。誤魔化すように今にも口笛を吹きそうな印象だ。

「え、...?どういうことだ?」

詳しい説明を求めるイザーク。

「あのね、なんと言いますか。今、3ヶ月らしいの」

と言いながらおなかを擦る。

流石にそれで何を指しているか分かったイザークとディアッカ。

「ほ!?」

と絶句してぽかんと口を開けているイザークに対して

「ホントか!おめでとう!!」

自分のことのように喜ぶディアッカ。

「ありがとう」とはにかみながらは答え、ディアッカ、、イザークの視線がラフに向かう。

ラフはピュ〜、と本当に口笛を吹き始めた。

「ったく。ラフ、たち悪いぞ」

とディアッカ。

「本当ですよ!」



「ラフ、キサマ〜!!」

当然に怒り心頭のイザーク。

「だって、普通に伝えても面白くないと思ったんだもん!」

「や、此処は敢えて普通でいこうぜ」

呆れたようにディアッカが呟いた。


「つか、ホント。おめでとう。イザークも」

ディアッカの言葉にイザークは「ああ、」と照れくさそうに俯いた。

「でも、そうだよな。は純粋培養のナチュラルだもんな。全然遺伝子弄ってないんだろう?」

「うん。私は大豆やとうもろこしじゃないからね」

「だよなー。だから、イザークが第二世代のコーディネーターでも子供が出来たんだろうな。凄いな、が母親って。全然想像つかない」

「私も!」

ディアッカとの間に和やかな空気が流れる。

「じゃあ、の体調不良って...」

イザークが呟くと

「つわりってやつよ。フルーツは大丈夫だったんでしょう?そういうの、よくあるみたい。悪いところはないけど、ちゃんと様子を気に掛けておいてあげないと。栄養が偏っちゃったりするからね」

ラフが説明をする。

「わかった」

イザークは短く答え、に視線を向けて目を細める。

は今までもその存在で自分に幸せをもたらしてくれていた。

そして、今回も。

第二世代のコーディネーターの自分に子供なんて夢のような話だ。

今でもその研究はされているが、結局目覚しい解決法が見つからないまま時は流れている。

と一緒に居ると守りたいと思うものが増えていく。

それは、きっと幸せなことなのだろうと思う。


「ところで、イザーク。知ってる?」

「何をだ?」

上機嫌なラフの声に少しだけ嫌な予感が過ぎる。

「あのね。一説によると、つわりってのはパートナーの遺伝子を体が拒否しているんだって。ほら、おなかの中の子は自分の細胞から出来てるけど、その半分はパートナーのでしょ?
つまり、つわりは拒否反応なんだって。イザークってば細胞レベルでに拒否されてるのね〜」

ああ、本当に楽しそうに、嬉しそうにイヤなことを言うな...

そう思いつつ、イザークは溜息を吐く。

そんなはずあるか。

細胞レベルで自分がに拒否されるわけがない。

ふとを見る。楽しそうに笑うを見ると凄く心が和む。

イザークは全力でサポートすると改めて心に誓う。


が。取り敢えず、今はディアッカがと仲良くしている姿は見ていて楽しくないので睨んでおいた。

イザークに睨まれたディアッカは項垂れた。

コイツ、全然変わってない...










桜風
07.6.27


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