スポーツの秋





毎日毎日学校の周囲を走りまくっている部がある。

陸上部よりもその距離はきっと長いし、その回数も多いと思う。

「校庭じゃダメなの?」

ふと気になって聞いてみた。

「ん?」

「部活で走るの。夏は..校庭で走ってたって。野球部がそんな事言ってたよ?」

が聞いた。

「ああ、ランニングか?」

返ってきた言葉に彼女は頷く。

「あっちの方がきついからな」

そう言って苦笑したのは外周を走りまくっているバスケ部の副キャプテンの花形だった。

文化祭が残っている文系の部活動ならまだしも、体育会系の部活動は大抵の3年はもう部活を引退している。

しかし、バスケ部は3年が全員残った。

心残りがあるらしい。

翔陽高校のバスケ部は有名で、推薦の話が結構舞い込んでくるとか来ないとかであまり勉強をしなくても進路には困らないと聞いたことがある。

『進路には困らない』と言っても、希望する大学、学部にいけるわけではないので、希望がある場合は、部活をしながら勉強もしなくてはならない。

「推薦の話、来てるの?」

ふと、思い出して聞いてみた。

「俺か?」

聞き返した花形には頷いた。

「来てる事は来てるが..藤真がダントツだな」

苦笑して言う花形に「ふーん」と返した。

確かに、彼はバスケをしていると『凄い』と形容してもいいかな、という気分になる。

しかし、普段は...


たまたま廊下を通りがかった藤真と目があった。なんたる偶然...

が特にリアクションを起こさなかったのが気に入らなかったのか、藤真はズカズカと他人の教室に足を踏み入れ、の目の前に立った。

「よー、

「うん、藤真」

「オレのことを噂していただろう」

自信満々にそういう藤真に向かって心から胡散臭げな瞳を向けてみた。

「ん?図星か」

「どこからそんな自信が湧き出てくるの?」

これも心からの疑問だ。

「んー、何だろう。持って生まれたこのオレの..成せるわざと言うかぁ、たぶん、高貴なる血のせいだな」

「ふーん」

藤真はいつも適当なことを言っていると思う。

「まあ、藤真の話はしてたぞ」

ああ、余計なことを...!

花形の言葉にはこれ見よがしに溜息をついた。

「何だ、照れてたのか。初ヤツめ!」

「どこのエロ奉行だ!」

時代劇にでも出てきそうな言い回しをする藤真に思わず突っ込みを入れてしまう。

藤真は満足そうにニッと笑った。

「で?オレの何の話?」

「えーと、推薦の話だったか?その前は、何で外周かって。な?」

「そーですねー」

「ああ、まあ。推薦はありがたいことに色々と声を掛けてもらえてるんだよなー。けど、そうは言っても、結局冬の選抜の結果如何で結果が変わることになると思うけど。今は声を掛けているけど、選抜如何では、って明言している学校もあるし。現時点で」

「意外とシビアねぇ。だったら最初から声を掛けてくるな、って感じ」

目を丸くしては言う。

その反応に苦笑した藤真は「仕方ないって」と返す。

「で、えーと。外周か」

「理由はもう花形から聞いた。きついからそっちの方がいいんでしょ?」

「まあなー。でも、もうひとつ大きな理由がある」

胸を張っていう藤真に「またしょうもない理由でしょ」とは素気無く返した。

「しょうもないことはない。伝統に則って、だ」

「へえ?」

『伝統』って何だろうと興味を持った。

のその反応に、藤真は満足げに笑って高らかに宣言した。

「スポーツの秋!とことんスポーツを極めろと昔の人が言ったその名残を実践しているに過ぎない!」

「アンタ早く教室に戻ったら?」

はやはり素気無く返した。

なんだよ、そんなことかよ、と。

「何を?!」

「ってかさ。噂で聞いたんだけど。吐くほど走ってるって。スポーツの秋とか言っても限度があるんじゃないの?!」

「オレは一度も吐いたことがないぞ」

胸を張っていう藤真を見て「ちょっとコイツどうにかして!」という気持ちをこめては花形を見上げた。

その瞳に込められた意思というか思いは伝わったが、花形は首を横に振る。

俺にもムリだ、と。

「何だ、も一緒に走りたかったのか?」

「わたしはまだ死ねない!死にたくない!!」

そうムキになって返したに藤真は声を上げて笑った。

からかわれただけだって分かっていたのに、ムキになってしまった自分が恥ずかしくては俯く。

「じゃあなー」

一方気を良くした藤真はの頭をぽんぽんと軽く叩いてやっと教室を後にする。

「くっそー...」

悔しそうに呟くに花形は苦笑していた。よく見る光景だ。









桜風
09.10.1