| 日常には嘘が沢山溢れている。 優しい嘘や悪意をこめた嘘。色々と嘘にも種類があると思うが、悪気のないたちの悪い嘘ほど残酷なものはない。 今日はいつもより日常生活の中に嘘が横行している...はず。 統計を取っているわけではないので、何とも言えないが、嘘を吐いても良い日だと公認なのだからたぶん心置きなく嘘をつく人が多少増えるだろう。 「おはよう」 頬杖をついて窓の外を見ていると声を掛けられた。 「はよ」 そちらを見ずには返す。 「そっけないなー」 笑いながら彼はそう言った。 今日は部長会というものだ。そういうのは学校があるときにしてほしいのだが、何でも新入生に対して行う部活説明会についての説明会だそうで、早めに説明しておいたほうが準備などに時間を掛けられていいだろうという思い遣りから各部部長に招集がかかった。 体育会系はともかく、文化系の部活の部長にとっては良い迷惑だ。 春休みに部活動をする文化系なんて本当に少ないのだ。 「機嫌悪いね」 「まあねー。別に新学期早々で良いじゃんね?準備に時間なんてかけないよ」 声を掛けてきている昨年のクラスメイトでバスケ部のキャプテンの仙道にやっと顔を向けては話す。 「あー、まあ..そうかもな。オレはどっちでもいいけど」 「てか、仙道は部長までやってんだ?」 の言葉に仙道は目を丸くする。 「オレ、キャプテンだよ?」 「うん、知ってる。ほら、運動部って部長とキャプテンが違うってことないの?部長ってどちらかといえばこういう事務的なこともしなきゃいけないでしょう?」 「ああ、なるほど」と仙道は頷いた。 確か、野球部がそういう制度を導入していると聞いた。 「ウチは、一応キャプテン=部長だな」 ああ、そうか。仙道みたいに色々サボりそうな人がキャプテンをしたことがないからか... 何だか勝手な想像なのに妙に納得してしまうことを思い浮かべていると生徒会と担当の教師が会合をすると指定されていた教室に入ってきた。 短い会合が進んでいき「じゃあ、新学期が始まったらまた集まってくれ」と教師が言って解散となった。 「結局また集まるんじゃん」 不満を漏らすを「まあまあ」と宥めながら仙道はと共に教室を後にした。 「そういえば、仙道はこれから部活?」 「午後から。オレも少しだけ無駄足..かな?」 苦笑しながら言う仙道だが 「結局学校にくる用事があったんだからいいじゃん」 とは全く同情しない。 少しくらい同情しても良いのにな、と思いつつもそんなことを口にしたら今以上の勢いで彼女は不満をその口から止め処なく漏らしていくだろう。 別にそれに付き合うのはやぶさかではないが、まあ、避けたいと思っても罰は当たらないだろう。 「なあ、。昼飯、一緒に食べない?」 家に帰って食べようと思っていたが、まあ、良いだろう。 そう思っては頷いた。 「おごらないわよ?」 「期待してないから大丈夫」 の言葉に苦笑しながら仙道は学校近くのファミレスに行こうと提案して足を向けた。 ファミレスって結構学生の味方だな、と仙道の前に並んでいる料理を見ながらは思った。 自分はホットケーキセットだ。 「そんので足りるの?」と仙道が不思議そうに聞くが、それこそ、仙道くらい食べると乙女としてどうだろう、という視線をファミレスの店員から向けられかねない。 「体育会系の子はもっと食べるかもね」と言いながらメイプルシロップをたっぷりかけてホットケーキをナイフで一口サイズに切る。 「前言撤回。カロリーはありそう」 「お黙り」 ぴしゃりとそう言ってもぐもぐと口を動かす。 仙道は苦笑して自分の目の前の丼ものに手を伸ばした。 「そういえば、。知ってるかもしれないけど、オレ、のこと好きなんだよね」 さらりと言った仙道にはちらりと視線を向けた。 彼女は全く動揺を見せない。 少しつまらないな、と仙道は思う。 はっきり言ってここで動揺してフォークを取り落とすくらいしてくれると思っていたのだ。 「仙道...」 は持っていたフォークを皿に載せて、ナプキンで口元をそっと拭く。 「今日はエイプリルフールよ?」 仙道は知っているといわんばかりに頷いた。 「エイプリルフールには確かに嘘は吐いて良いとかそういう迷信と言うか俗説がある。けどね、普段嘘ばかりついている人は、その日だけでも嘘は吐いてはいけないって説があるの知ってる?」 ああ、なるほど。だからは全然動揺してくれなかったのか... 納得した仙道はまたしても苦笑した。 「知ってるよ、それくらい」 仙道も言葉に目の前のは目を丸くして固まり、ゆっくりと、確実に顔が赤くなっていく。 ああ、面白いな。 仙道は笑いそうになるその口元を一生懸命引き締めた。ここで笑ったら信じてもらえないことは勿論、物凄く機嫌を損ねてさらには慰謝料と称してここでの食事代を持たされる。 暫くと仙道の間に沈黙の時間が流れた。 はおもむろに手を伸ばして水を一気飲みする。 「...わたしは、好きじゃないわ」 ばっさり切られてしまった。 んー、やはりタイミングとかそう言うの諸々が悪かったのか。残念だ。またチャレンジしようと思うが、それでもちょっと回復に時間がかかりそうだな... そんなことを俯きつつポーカーフェイスで思っていると咳払いが聞こえて顔を上げる。 「今日は、何の日?」 先ほど以上に真っ赤になって言うの表情を見て仙道はきょとんとしてやがて彼女の言いたいことに気が付き、今度は我慢をせずに笑った。 「エイプリルフール。正直者は優しい嘘を吐いても良い日、だよな。けど、まあ..さっきのは優しくないというか...」 少しだけ恨めしい目をして言ってみたが、「いいじゃない。たまには、ね?」と全く悪びれずにそういわれて「参ったな」と漏らす。 何だかよく分からないが、今から彼女に勝てない予感が胸の中で渦巻いていた。 |
桜風
09.4.1
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