| 「あれ?神さん。あの人今日も来てますよ?」 信長が神にこっそりという。 神は信長が見ていた方をちらりと見て「ああ、ホントだ」と何事もないかのように言った。 信長があの人というのは『』だ。彼女は最近頻繁にやってきては黄色い声を上げる。 中々声が通るから良く目立つ。 しかし、彼女がこの体育館に通うようになったのはここ1ヶ月くらいのものでごく最近だ。 その代わり、来なくなった女子生徒が居た。 。彼女はとは逆に控えめな性格ではあるが、何となく存在感があるのか目を引く。 ふと、神が視線を巡らせるとギャラリーを見上げる牧の姿があった。 「牧さん」 神に声を掛けられ、少し驚いたように牧は振り返った。 「、最近来ませんね」 とクラスメイトの神がそういう。 「...そうだな」 牧はそう言って苦笑した。 「」 翌日、教室で神がに声を掛ける。 「あ、神くん。おはよう」 「おはよう。ねえ、。最近、見学に来ないね」 「...そう、だねぇ」 は神の言葉に少し困ったような表情を浮かべて笑う。 「忙しいんだ?」 「まあ、..そんなところ?」 これ以上突っ込んで聞くのもどうかと思っていると「!」と教室の入り口から彼女を呼ぶ声がした。 「おはよう、!」 そういいながらは教室の入り口まで駆けていく。 まあ、原因はそんなところなのだろうな... 神は肩を竦めて自分の席へと戻っていった。 「けどさ、」 教室異動のため廊下を歩いていると神が不意に声を掛けてきた。 「えーと、神くん。わたし、さっき何か話の途中だったっけ?」 『けど』という接続詞から始めるということは何かの話の続きなのだろう。 何か途中でやめた会話でもあったかな?と首を傾げながら記憶をたどっていたが、「ううん」と神が言う。 「あれ?」 「ごめん。ちょっとオレが考え事をしててその続きだったから」 「変なの」とは小さく笑う。 「それで、えーと。何かしら?」 が話を促すと神は頷いた。 「それって、にも失礼じゃないのかな?」 神が指している『それ』が何かと思い当たったはばつが悪そうに俯いた。 もちろん、牧さんにもと神は心の中で付け加える。が、そっちは牧の事情なのでここで口にすることではないと思う。 「まあ、が決めたことだからオレがとやかく言うことじゃないってのは分かってるつもりだけど...逆にややこしくなる可能性も否定できないってのは頭に入れておいたほうがいいと思う」 言った神はそのまま少し歩調を速めて男子の集団に混ざっていった。 神に置いていかれたは逆に歩調が遅くなり、やがて足が止まる。 窓の外は泣きたくなるような快晴だった。 「ー!早く来ないと遅れるよ!!」 クラスメイトに呼ばれては「うん!」と返事をして駆け出した。 久しぶりにバスケ部専用の体育館へと足を向ける。 この人の多さ、懐かしい。 ふと、体育館のコートに立つ牧と目があった。 慌てて逸らすとその先にが牧を応援している。 どうしたものか... はコートに視線を向けていても何もその瞳に映すことが出来なかった。 練習が終わり、選手たちに拍手を送ってはギャラリーを降りる。 この体育館のバスケ部の見学をするときには、誰が始めたのかわからないが、通常の練習が終わると彼らを労うのか、それとも応援をしているという証のためか拍手をするのが慣わしとなっている。 初めてその噂を聞いた日にはこの体育館に足を運んだ。 そのとき、耳にしたその拍手に感動し、自分もまた通うようになった。 初心を思い出して懐かしさがこみ上げる。 「」 の肩がビクリとゆれた。 ゆっくり振り返るとそこにはバスケ部キャプテンの牧がいた。 「お久しぶりです、牧さん」 「ああ、久しぶりだな。今日は、大丈夫なのか?」 は首を傾げる。 「え、と...」 「ああ、いや。最近見なかったから体調が悪かったのかと思って」 そういことか、と納得したが口を開いた途端「牧さーん!」とよく通る声が近づいてきた。 そして、その声の主はガシリと牧の腕にしがみつく。 「今日も素敵でした!」 凄いな、とは素直に感心した。こうやって自分の感情を素直に臆面もなく表現できるが羨ましいと心から思う。 「じゃあ、牧さん。失礼します」 そう言って体育館を後にしようとしたら腕をつかまれた。 「。俺は今と話しをしているんだ」 腕に絡まっているにきっぱりと言う牧の声に拒絶の色があった。 は牧の腕から離れ、不満な気持ちを満面に表して一歩下がる。 「え、と。あの...」 「あたしさ。のそういうトコは、好きじゃない。はっきりしなよ!」 そういい捨てては体育館を後にした。 友人にそういわれては呆然とした。 「」 牧に名前を呼ばれて視線を上げる。 「俺は俺の意思を無視して勝手に譲られるのはかなわんな」 は思わず俯いた。 牧は溜息を吐き、俯いているの頭に手を載せる。 「また、明日からも応援してくれるか?」 は驚いて顔を上げる。 牧は苦笑して自分を見下ろしている。 「怒らないんですか?」 「怒る、か...怒られたいか?」 はあわててぶんぶんと首を振る。 「けど、その..わたし、生意気に失礼なことをしちゃったし...」 「俺の言いたい事を分かってくれたみたいだからな。それに...」 そういった牧は意味深な笑みを浮かべた。 「惚れた弱みってやつだ」 牧のその一言での顔は真っ赤になる。 思いも拠らなかった。 しかし、のその『思いも拠らなかった』様子に牧は肩を落とした。 「案外伝わらないものだな」 そう呟く牧を、は暫く呆然と見上げていた。 翌日、の教室にがやってきた。 腰に手を当ててふんぞり返る。 「さ、あそこのケーキセット、おごりなさいよね!!」 そう言って、めちゃくちゃ美味しいがその分値段も相応だということで有名な店の名を口にした。 は目を丸くして「怒らないの?」という。 「んー、何となく見えてた結末でもあったし」 とカラッとした感じに言われてはきょとんとした。 「...ありがとう」 「そういたしまして!」 そんな2人の様子を見ていた神は、女の子って不思議だなぁ...とぼんやりと思っていた。 |
リクエスト内容
『牧の後輩ヒロインと、ライバルになっちゃった女友達を交えたお話』
リクエストありがとうございました!!
桜風
09.8.2
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