| ウチの学校は凄くバスケ部員が多い。 部長さんに聞いてみても知らない部員は居て当たり前だとか。そんなんでいいの?? そして、その部長さんが学校内でも超有名で、絶大な人気を誇る。 彼の名前は藤真健司。 絶大な人気は女子に対してで、男子にはそれなりの人気。 まあ、人気者には変わりない。 「!」 そう言って体育館から手を振ってきたのはその絶大な人気を誇る藤真健司。 「何?」 帰ろうとしたところで呼ばないでいただきたい。 「悪い、帰るところに」 何だろう。藤真って謝るタイミングが凄く上手。だから 「いいよ、何?」 と思わず言ってしまう。 ちょっとムカついてたというのに... 「あのさ、待ってて。今日、一緒に帰らないか?」 そんなことを言う。 「はあ?今、私が帰るところだって見て分かったよね?」 しかも、こんなギャラリーの前で... 藤真目当ての女の子たちも沢山見学している。 そんな中態々大きな声で私を呼びつけ、あまつ、一緒に帰る約束だと!? 「な!頼む!!ちょっと聞いてほしい話があるんだ」 そう言って手を合わせる。 「分かった。あとどれくらい?」 私って結構人がいいのね... 「えーと、1時間くらい?」 そんなにあるのか。 「りょーかい。じゃあ、コンビニで立ち読みしてるから」 そう言ってその場を去った。 ヒソヒソと小声で私と藤真の仲を疑うそんな雰囲気の中、私は体育館に背を向けて正門へと向かった。 コンビニで何気なく手にした雑誌に花言葉特集なるものが表紙に書いてあった。 あじさい。 私結構好きな花。花だと思ってるのが額で、花は凄く小さい。花、というか額の色でその土壌が酸性かアルカリ性かが分かるって理科で習ったときに楽しいなって思った。 それ以来、結構見かけると楽しい気分になる。 えーと、あじさいの花言葉は... 『移り気』『あなたは美しいが冷淡だ』 何だか可笑しい。 2つ目の方が特に。 これはきっとツレナイ人に贈ってみたらいい花なんだろうなー。 しかし、美しいって表現を出来る相手でなくてはならない。む、難しい... 「って花言葉に興味あったのか?意外と乙女チックだな」 突然声を掛けられて勢いよく雑誌を閉じた。 振り返ると、藤真が笑いながら立っている。 時計を見ても、どう見ても30分くらいしか経ってない。 「早いよ?」 そう言うと 「おう。が待ってるから超特急だ」 そう言って笑う。 「意味わかんないし」と言いながら雑誌を棚に戻した。 「で、何を奢ってくれるの?」 「うわ、手厳しい!!」 私の言葉に藤真はそんなリアクションを取り、 「アイス」と言ってコンビニの一角を指差した。 「コーヒーも」 そう言うと 「勿論です、お嬢様」 とワケの分からない返答をした。 騒ぎながらアイスを決めて、コーヒーも選ぶ。 「んじゃ、先出てて」 藤真に言われて、コンビニを出た。 少し歩いて公園のベンチに座る。 「ほら」とコンビニの袋から藤真が私の選んだアイスを取り出して渡してくれた。 「ありがとう。いただきまーす」 そう言ってペリッと袋を開けて棒アイスを取り出した。 藤真は意外にもカキ氷。 「なあ、それって最近出たやつだよな?」 私が食べてるアイスのことだろう。 「そう。1回食べてみたかったんだよー。...食べる?」 「ん?いいのか?」 そう言いながら藤真は私の手を掴んでそのまま自分の口元へ持っていく。 少しだけ、私の体温が上がる。 「へぇ、何か面白い味だな!」 「だよねー」 努めて冷静に、そう答えた。 「そういえば、さっきの雑誌にさ。花言葉が載っててね」 「おう」シャクッとカキ氷を掬いながら藤真が相槌を打つ。 「あじさい、って知ってるよね?」 「6月の花だよな。土壌が酸性かアルカリ性か分かるやつ」 「そうそう!藤真もそんな風に見てたんだ?」 ちょっと嬉しい。 「ああ、習ったときに面白いなって思ったから。で?あじさいの花言葉は?」 「あ、うん。『移り気』『あなたは美しいが冷淡だ』だって」 「花の色が簡単に変わるから移り気なんだろうな」 頭を叩きながら藤真がそう言う。 「慌てて食べるからだよ」 呆れてそう言うと 「だって、美味いじゃん」 と眉間に皺を寄せてそう言った。 「まあ、ね。でさ、2つ目のって藤真っぽいなーって思ったんだ」 「何で?」 「たぶんさ、学校で藤真にキャーキャー言ってる子たちってそう思ってるよ。『冷淡だ』、じゃなくて『クールだ』かもしれないけど。こんな、カキ氷を食べて頭痛を覚えるやつには見て無いはずだね」 そう言って笑う。 藤真は面白くなさそうに「ふうん」と呟いた。 あれ?何か悪い事言ったかな? 「まあ、あじさいってのは俺ってのは確かに、ぴったりだな」 そう自分で言って残りのカキ氷を口に流し込む。 そして、お約束といった感じで頭を叩いてた。 「移り気が?それとも美しいが?」 興味を持って言ってみると、 「花言葉ってそれだけじゃないっての、知らないのか?」 と聞かれて私は首を振る。 「あじさいの花言葉には、『辛抱強い愛情』ってのも有るんだぜ」 そんなことを言った。 藤真って意外と豆知識を持ってたんだ... てか、『辛抱強い愛情』?! 藤真を見たらニヤニヤと笑っている。 「何?」 「さっき、聞いてほしい話があるって言っただろう?」 「うん。だから私はコンビニで藤真を待ってたし、アイスとコーヒーも奢らせた」 そう言うと藤真は苦笑いをして、 「んじゃ、聞いてくれるか?」 と少しだけ真剣な眼差しを私に向けた。 そんな藤真の視線にドキドキしてるけど、此処で目を逸らしたら私の負けだ。 「俺、が好きだ」 一瞬呼吸を忘れた。 今、藤真が声にしたその言葉はどういう意味を持っているのかグルグルと考えたけど、それはひとつしかない。 「え、えーと...」 返答に詰まっていると 「実は1年のときからなんだけどな。何か、って彼氏とか居たし。その男から奪うって選択肢もあったけど、流石にそれはのためにもならないから即却下だったけど」 と少し照れ笑いを浮かべる。 こんな藤真を見るのは初めてだ。 「な?俺の愛情って結構辛抱強いだろう?」 そう言って笑う。 「辛抱強いってか、しつこい?私高校に入ってから彼氏何人出来たと思ってんの?」 「俺が知ってるのだけでも、3・4人くらい?」 「そうだよ。藤真ってば何モタモタしてたの?!」 思わずそう言う。 本当に『思わず』で、自分でもビックリなその一言。 目の前の藤真も目を丸くしている。 「え、あー...今のなし」 「ダメ。俺ちゃんと聞いたからな。そっかー...」 そう言って何やらニヤニヤ笑ってる。 「じゃあ、さ。オッケーってことだよな?」 そんなことを言う。 ここで素直に頷きたくない私は 「でも、移り気なんでしょう?あじさいさん?」 そう言ってやった。 「まさか!土壌が酸性になったら赤くなってアルカリ性になったら青くなるんだから。次第ってところだろう?」 何てへんてこなことを言うんだ、この男は?つまり土壌が私で、私次第って事?? それはそれで楽しそう。 でもね、 「藤真、色は逆だから」 一応訂正しておいた。 藤真は絶句して動かなくなった。 そりゃカッコ悪いもんね... 「ほら、帰ろう。送ってくれるんでしょう?」 そう言って手を差し出すと 「おう!任せとけ」 藤真は私の手を取る。 大きくて温かい手が、凄く優しく感じた。 ああ、何で早くこの手を取らなかったんだ?そっか。藤真がモタモタしてたからだ。 凄く納得のいく答えに頷きながら隣を歩く藤真を見上げた。 私の視線に気付いた藤真が「ん?」と首を傾げる。 「別に、何でもない」 そう答えると 「そっかー。俺の美しさに見惚れてたのかー」 なんて馬鹿なことを言うから 「ばっかじゃないの!」 と言ってやった。 それでも藤真は嬉しそうに笑って繋いだ手に少しだけ力を入れる。 それに応えるように私も強く握り返した。 |