| 放課後、日直として担任に仕事を押し付けられた。 何だってこんな日に日直になるのだろう? 自分の不運に嘆く一方で、実は自分は運がいいのではないかとも思うこの矛盾。 本当なら、手早くこの面倒くさい雑務を終えて家に帰ってゆっくりとゲームでもする、なんて流れがベストだと思う。 けど、それをしない私には理由がある。 今日の日直当番はと藤真。 つまり、私と藤真が本日の運がない日直当番なのだ。 藤真は翔陽バスケ部史上に残る凄い選手だと聞いた。 いつも教室で話している彼からは全く想像のつかない表現だけど、時々、他校の女の子から告白されたとかそういう噂を聞いたりするから人気が高いってのは本当なんだろう。 そんな他校の女の子が羨ましいと思う私はかなりの小心者なのかもしれない。 学年が上がって藤真と同じクラスになった時には感動で手が震えた。 同じクラスになってからは何だか当初抱いていたイメージと重ならない性格で、かなりガサツで口が悪かったけど、それはそれで楽しいし、こっちの方が『雲の上』みたいな遠い存在に思わずに済むから良かったと思う。 そして、私は何故か藤真と仲良くなった。 頑張って仲良くなるように話しかけたでもなく、どういった経緯でかは思い出せないけど、藤真に言われたこの言葉だけは覚えている。 「は、大雑把だよなー」 それを言われて私は咄嗟に 「ちょっと待って!『は』って何?!『は』って!!藤真君はヒトの事言えないよ!!」 と言葉を返した。 たぶん、それがきっかけだったんだろうと思う。 いつの間にか藤真は私のことを『』から『』と呼ぶようになったし、私は『藤真君』から『藤真』と呼ぶようになった。 「って、本当に俺の事が好きだよなー」 ホッチキスでプリントを留めながら何気ない様子で不意にそんなことを言う藤真に、私は咄嗟の一言が出ない。その上、顔がグングン熱くなっていくのが分かる。 つまりそれは肯定した事になるということで。 だからって、それを素直に受け入れられない私は思わず 「ばっ、..ばかじゃないの?!アンタどれだけ自意識過剰よ!?」 といつもどおりの憎まれ口を叩いてしまう。 いつものことながら言った後にはすぐに後悔の渦がグルグルと回るけど 「この天邪鬼め」 と自信満々に笑った藤真の笑顔がそれから助けてくれる。 藤真がそんな風に言うから、 「まあ、どうとでも取ってよ」 と言ってそっぽを向いて教室の窓から外を眺めた。 日が短い今の時期は夕方といえども既に外は十分に暗く、窓ガラスには教室の中の様子が鏡のように映って見える。 だから、窓ガラスに映った藤真の表情にまたしても赤くなる。 藤真はずるい。 いつも自信満々で余裕綽々で。爽やかな笑顔で厭味を言うくせに、こんなに優しく微笑むのだから。 「藤真こそさ、私の事好きなくせに」 負けず嫌いゆえに発したこの一言。 藤真の反応が少し楽しみだなって思ってたら 「何だ、ばれてたのか」 とさらりと凄いことを言ってのけた。 開いた口が塞がらないとはこのことか? 思わず藤真の顔を直視すれば、何を考えているのかさっぱり分からない笑顔を浮かべている。 次に何を言っていいのか分からずにパクパクと口を動かすと藤真は「じいちゃんちの鯉みてぇだ」と楽しそうに笑う。 「さーて、部活行くか。これ、職員室に寄って出してくるからは帰っていいぞ」 いつの間にか担任から言い渡された雑務は終了していた。私は何度も手を止めてたけど、藤真はずっと動かしてたから。 「ああ、いいよ。私が持って行くから藤真は早く体育館に行きな」 途中何度も手を止めてサボっていたのだから、私が持って行くべきだと思った。 「...じゃあ、一緒に持ってくか」 ニッと笑う藤真に 「仕方ないね、藤真は私が居ないと寂しいって言うんでしょ?」 いつもどおり返すと 「それはこっちのセリフだ」 藤真は笑う。 廊下を歩きながら西の空を見てみれば、空の色は夕焼の橙色から夜の藍色に変わりながらも溶け合っている。 この境界線のはっきりしない空は、何だかうやむやになってしまったさっきの私たちの告白に似てるなって思ってしまった。 今度改めて、仕切り直しといこう。 ...がんばれ、私。 |
この度はこの素敵な企画に参加させていただきまして、ありがとうございます。
頭の中に沢山の『バカ』が浮かびましたが、今回はこういう『ばか』と相成りました。
お付き合いいただきまして、ありがとうございました。
桜風
07.11
『馬鹿ばっか祭』提出作品です。
桜風
08.1.13
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