| 天は二物も三物も与えてくれるのね... 不公平だ。 「牧くんって本当に何でもできるね」 そう言うと不思議そうに私を見る。 「そうか?」 「腹立つくらい」 頷きながら言うと 「理不尽だな」 と苦笑する。 「自分では不器用な方だと思ってるんだが...」 「うっそだー!編み物だって出来ちゃうんでしょ!」 からかうと 「何で知ってるんだ?凄いな、」 と真顔で返された。 「え?!」 「冗談だ」 びっくりしたー! |
| 「ああ、テスト期間中」 夕飯を食べながらいとこの帰宅が早かった理由を聞く。 「のところはまだか?」 「明後日から」 そう言って白くて艶々しているご飯を一口。 「ねえ、お母さん」 「なに?」 「健司のごはん、前の炊飯器にして、みんなのご飯をこっちの炊飯器にしようよ」 我が家には炊飯器が2台ある。ひとつは5年くらい前から。もう一つはつい数か月前から我が家にやってきた。 「高校生の男の子ってたくさん食べるわよね」 そう言ってうきうきしながら家電量販店の炊飯器コーナーに向かった母は、奮発して美味しく炊けるお釜の炊飯器を買った。 いっそ買い替えるかどうかと悩んだらしいが、今のは十分に使えるし、健司が下宿するのは高校の3年間だけだろうから、卒業したら卒業祝いにあげればいいし、とよその子だというのに何か美味しい思いをしているのだ。 比喩だけではなくて、実体験共に。 「じゃあ、もオレと一緒に食べればいいじゃねーか」 「健司帰って来るの遅いじゃん。お腹空いちゃう。あ!」 私の皿の上のから揚げを攫って行った! 「このオレ様を待てないなんて。って、オイ!」 やられたらやり返す。ハムラビ法典!! 「まあまあ。ちゃん。いいじゃないの。だって、あの炊飯器は健司君がウチに来るから買った物なんだし」 「だから、用途を変えればいいじゃない」 お母さんの言葉に「ふふん」って笑ってる健司に腹が立つ。 夕飯後にリビングでテレビを見ていると「健司君、テストは大丈夫なの?」とお母さんが声をかける。 「あー、うん」 そう言ってテレビに未練たらたらな健司はゆっくりと重い腰を上げた。 私はこのままバラエティを見ながらげらげら笑う予定だったのに 「ちゃんももうちょっとでテストなんでしょ。一緒に勉強すれば?」 と言われ、リビングから追い出される。 居座って居心地の悪い思いをするよりも部屋に戻って漫画を読んでいた方が気が楽だ。 「そういや、健司って勉強できる人なの?」 「できるわけねーだろ」 胸を張って言われた。 「ああ、天は二物を与えないのね」 神様は公平だ。 「は?このかっこよさと、バスケセンス!二物あるじゃねーか」 「頭の残念さを差し引いたらプラマイゼロっしょ」 そう返すと「なんだとー!」と頭を鷲掴みする。 「痛い!」 「孫悟空の頭の輪っかのようなもんだ」 「はーなーせー」 私の抗議に応じた健司は手を放した。 「けど、スポーツができる人間ってやっぱりおつむは色々と問題があるのかしら?」 「まだいうか」 健司が唸る。 「けどな、。花形は違うぞ!...たぶん」 「...どこのどなたでしょうか?」 『花形』とな? 「オレのチームメートでクラスメート」 「ああ、苦労人」 この口ぶりだと迷惑かけてる! 「は?」 「ううん。それで、その花形..くん?は賢いの?」 「ああ、眼鏡だ」 「あ、馬鹿だ」 コイツ馬鹿だ。知ってたけど、馬鹿だ。 「は?だから、花形は違うて言ってるだろ?」 コイツ馬鹿じゃねーの?という表情で言われて最高にムカつく。 「バカなのはあんたで。花形くんの事は1ミリも知らないんだから、私が何か言えるわけないじゃん」 「ああ、そうか。って、オレも馬鹿じゃねぇ」 健司の反論は聞かなかったことにして。 「じゃあね」 自分の部屋に戻ろうとしたら「ああ、漫画貸して」と健司が手を出してくる。 「勉強は?」 「赤点取らなきゃ進級はできる」 「進学は?」 「推薦」 「はらたつー!」 そう言って私は部屋の中にあるもっとも長編(しかも未完)を健司に渡してやった。 赤点取れ! |
桜風
14.12.4
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