「牧くんは相変わらずね」

そう言うと彼は不思議そうに私を見た。

「どうした、いきなり」

「いや、ずっとキープされていますので」

私の視線を辿って彼は苦笑した。

「だから、部活は言い訳にしたくない」

爪の垢!この爪の垢...!!

は頑張ったよな」

私が視線を向けていた場所から随分と離れた場所に視線を滑らせて呟く。

「まあ、これをキープが目標かな?」

「がんばれ」

頷いて言う牧くんに「何で牧くんは成績がいいのかな?」と聞くと

「授業中寝ないからな」

と私の授業態度を指摘された。

うーん。練習量はどう考えても牧くんの方が多いのになぁ...相変わらずの超人だなぁ...





振り返って 4





 テストも無事に終了し、日常生活が始まった。

テスト終了後の答案返却は、点数をちらっと見ただけでなるべく凝視しない。

ふと、隣の席の牧くんもあまり興味なさそうにしているからお仲間!と思って声をかけてみた。

「どうだった?」

「まあまだよ」

そう言って答案を渡してくる。

お?大胆な!

そう思って手に取って「見るよ?」と宣言すると彼は頷いた。

「はあ?!」

思わず漏れた声。

「何だ?」

「めっちゃ点数良いじゃん」

私の言葉に彼は首を傾げ「まあまあ、と言ったと思うが...」と私の手元を覗き込んで自分の点数を確認する。

確かに、まあまあと言えばまあまあだ。

けど、こう..心の中で用意していたそれとは全然違ってて。

昨日、帰宅した健司に見せてもらった点数はお互い「わはは」と笑いあったくらいのものだったのに。

はどうだったんだ?」

人に見せてもらっておいて、自分のを見せないという不義理はできない。

「...牧くんよりも少し低い」

「少し?」

「ごめん、見栄を張った。少しっていう形容詞はいらない。低い」

そう言って答案用紙を見せる。

点数が悪かったと言っている私がそれを見せるのが意外だったのか、牧くんは眉を上げて、「いいのか?」と遠慮がちに受け取った。

「私も見せてもらったから」

「義理堅いな」

苦笑して牧くんが私の答案を見て、そっと返してきた。

「次は、頑張ろうな」

視線がお父さんだった。


数日後に、事務室前に張り出された各学年トップ50の中に牧くんの名前が。

しかも半分よりも前。

「牧くんって凄かったんだな」

「部活を理由にしたくないだけだ」

「いつ勉強してるの?」

「授業中だよ。が涎垂らして寝てる間だ」

「涎?!」

これは乙女として大問題!

「比喩だ」

牧くんは時々意地悪で、不思議とその時は同じ年の男の子に見える。

「何か失礼なことを考えなかったか?」

「いいえ、全然」

彼は凄く勘がいい。

「牧」

声をかけられて彼は振り返る。

あ、あれ?

先輩だと思っていた人に牧くんは敬語で話していない。

これは、つまり。彼は先輩ではなかったということだ。

まあ、確かにバスケ部の先輩と言えばひょろひょろ過ぎるけど。

「おう、宮益。凄いな」

苦笑してもう一人。

おおお...この人も背が高い。そして、牧くんが敬語ではないということはやっぱり同学年ということで。

彼らは数か月前までは中学生だった。

所謂子供。

...え、子供?!

この学校の男子バスケ部の入部条件って、もしかして...

。何か失礼なことを思わなかったか?」

「イイエ、ゼンゼン」

ぎこちなく首を横に振る。

本当に勘の鋭い人だ。









桜風
14.12.11


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