『ナンバーワン』という響きは私には遠いもので。

「ナンバーワンって言われる気持ちってどんなもんなの?」

想像もできないから実際にそう称される人に聞いてみた。

「特に特別な想いはないなー」

首を傾げて本当に何でもないことのように言う。

「じゃあ、誰かにあげる?」

「やらん」

即答されて苦笑が漏れる。

「ナンバーワンかー」

私が呟くと

牧くんは見下ろして

「勝てない人もいるぞ?」

「牧くんが?」

私の問いに牧くんは頷く。

には勝てん」

「は?」

勉強も運動も私のはるか上空を行く牧くんが何言ってんの?

「惚れた弱みってのを知ってるか?」

な、何を言うんだねこの人は!!

「痛い。。照れた時叩くのやめろ。そこそこ痛い」

うるさい、ばーかばーか。





振り返って 5





 「そういや、って海南だったよな」

「何か月通ってると思ってるの...」

呆れて問い返すと健司は「うるせー」と返してきた。

「んじゃ、牧って知ってるか?オレらと同じ年」

「知ってる」

クラスメイトだよ。

「マジか!そっかー、噂は本当だったんだなー。あいつバスケ部だろ?」

「健司こそ知ってるの?」

頷きながら問い返す。

「直接当たったことはないけど、同ポジだしな。全国大会で注目されてたんだよ、あいつ。あれでオレらと同じ年ってどうだよ?思わね??」

失礼なことを思うのはこの身に流れている血のせいだろう。きっとそうだ。間違いない。

「それで、牧くんがどうかした?」

「いや。オレと牧。どっちがつえーかって話になって」

「...ウチの学校の推薦の話が牧くんに来たってことはそういうことじゃないの?健司に来てなかったんでしょ?」

「チームの雰囲気とか、そういうのもあるんだよ。しかも、あいつは県内だろう?」

ムキになって返す健司に「ふーん」と気のない返事をする。

「オレの方が強い」

「...まあ、今年から同じ県内の学校に通ってるんだから、全国大会の予選で当たるんでしょ?白黒はっきりつければ?」

そういうと「そのつもりだよ」といつもとは違う声のトーンで言われた。

ああ、こんな顔できるんだ。

何だかいとこの成長が感慨深い。


「牧くんって藤真健司って知ってる?」

「藤真?ああ、知ってるが...はなんで知ってるんだ?」

確かに、これまでの私の生活に男子バスケ部の強豪など、海南以外にインプットされていない。

「いとこなの」

と、藤真が?」

目を丸くして牧くんが言う。

あ、初めて見る表情。本当にびっくりしてるんだ。

「うん、私と藤真健司はいとこ。今ウチに居候してるよ」

「は?!」

「寮っていう手もあるけど、ウチの方が気が楽でしょって。おばちゃんとウチの母親が勝手に話を進めて」

肩を竦めていうと牧くんは視線を彷徨わせて「そうか」と呟いている。

「牧くんと健司って同じポジションだけど当たったことがないんだってね」

「え?あ、ああ。藤真と当たると言ったら全国大会しかないからな。中々難しいさ」

心ここにあらずっぽい牧くんが言う。

「今年から毎年当たるね。何か、男子ってルールややこしいみたいだけど」

「ルール?ああ、トーナメント後の決勝リーグって話か?女子は違うのか?」

「男子ほどチーム数ないみたいだからね。普通に少し大きめのトーナメントで収まるらしいよ」

「そうか」

「男子はシードなんだよね」

私が確認すると牧くんは頷く。

「女子は?」

「いや、1回戦からガンガン試合あるよ。1日2試合とか勘弁してほしい」

「そんなもんだぞ」

牧くんは苦笑してそう言う。

知らなかった。

普通、1日1試合だと思っていたから、スケジュール貰って「うわっ」と呟いてしまったくらいだ。

そんな私を見て先輩は笑ったけど、これって普通だったんだな。

が、バスケを始めたのって...」

先日の赤っ恥劇場を思い出していると牧くんに声を掛けられた。

「ん?」

がバスケを始めたきっかけって。藤真か?」

「あー、当たらずとも遠からずって感じかな?健司ってば、昔からバスケの話しかしなかったし。馴染みがあったのよね、やったことがなくても」

「...そうか」

間を空けて牧くんはそう相槌を打ち、ふらっとどこかに居なくなった。









桜風
14.12.18


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