Good couple





日本人はつくづく語呂合わせが好きである。

カレンダーを見てはそう思った。

「あ、いい夫婦の日」

の背後に立った仙道が呟く。

振り返って見上げるは首を傾げた。

「何かあったほうが良い?」

何かあったほうが良いと夫が言うなら、考えようと言うことらしい。

彼もその点心得ているようで、

「そうだね」

と頷く。

「わかった」と頷いたは、腕組みをした。

そもそも、いい夫婦の日とは何をするのだろうか。

誕生日とか結婚記念日は、とにかく『お祝いする日』とすべきことを示してもらえている。

全力でお祝いをすれば良い。

では、良い夫婦の日は何をどうすればいいのだろうか...


ともかく、家に帰るまでに何頭を考えなくてはならないと思いつつも、勤務先である母校へと向かった。

「田岡先生」

こうなったら人生の先輩に聞くのが一番、と声をかけた。

「おう、どうした。そうそう、今度の練習試合だが」

と別の話が始まった。

バスケ部副顧問としてその話は重要なので、確認事項にきちんと耳を傾け、始業のチャイムが鳴り、廊下を駆け出す。

「教師が走るな!」

と田岡に叱られ、「はーい」と返事をするが、その脚は止まらない。

あれよあれよと言ううちに、放課後になり、部活が始まる。

困ったな、とは唸る。

何せ、良い夫婦の日は今日だけなのだ。

これが毎月あれば「来月までにリサーチするから」みたいにして本日をやり過ごすのだが、次の良い夫婦の日は来年になる。

「何だって、11月22日を良い夫婦の日とか言い出したのよ。何処の誰よ。どうせどこぞの企業でしょ?」

が呟いていると「ぶっ」と噴出す人があり、振り返ると仙道が立っていた。

「彰?!」

「迎えに来たよ」

にこりと微笑む。

体育館の部員達が仙道を見つけ、そして、彼らは日本を代表するプロバスケットプレイヤーの姿に興奮した。

何せ、仙道彰は我が陵南高校の誇りなのだ。

それを同じく後輩である生徒達から興奮気味に聞いたはちょっと困った。

在学中のあのサボりっぷりは一応かん口令を敷いたので、今の後輩たちには知られていないだろうが、知られていたらちょっと彼に対する後輩たちのイメージ及びモチベーションに関わってきそうだ。

「おう、仙道。よく来たな。時間があるならこいつらの練習を見てってくれんか」

田岡に声をかけられ、どの道、は部活が終わらなくては帰れないのだから、とちょっと後輩たちを揉んでやることにした。

「そういえば、。仙道が来たと言うことは、何か約束でもあったのか?」

それなら、居残り練習には付き合ってやらんでいいぞ、と田岡が言う。

「田岡先生」

突然、が真剣な眼差しで声をかけてきて、田岡はたじろぐ。

「どうした?」

「良い夫婦の日って何をする日なんですか?」

「はあ?!」

田岡があきれを含んだ声を出した。

そして、盛大な溜息を吐いてみせる。

「先生...」とが情けない声を出すと「監督、さんを苛めないでください」と仙道が声をかけてきた。

「俺に言わせて見れば、何てくだらないことで悩んでるんだ、だ。夫婦なんてもんは何かをしなくては夫婦ではないってワケじゃないだろう。今、自分たちが良い夫婦だと思ったら、いつもどおりでいれば良いだけじゃないか」

「そうか」とは納得した。

特別である必要がないのだ。

仙道を見たら彼は苦笑して

「けど、外食くらいしましょうよ」

という。

「賛成!今日は家事しない!明日は頑張る!!」

「明日は、練習試合があるからな。遅刻するなよ」

田岡がすかさず念を押す。

「大丈夫です!仙道くんじゃないんですから」

胸を張って言うに田岡は苦笑した。

「やだな、さん。今夜は眠らせませんよ」

「は?!」

仙道の言葉には真っ赤になり、田岡は額に手を当てる。

「恩師の前で、そんな宣言をするな、仙道...」

唸る田岡に仙道は爽やかな笑顔で応える。

相変わらずな教え子達に、田岡はただ溜息しか出なかった...









桜風
11.11.22


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