HAPPY BIRTHDAY





部活が終わって自宅に帰ると門の前に一人の少女が座り込んでいた。

近所に住んでいるだ。

?どうした??」

声をかけると、彼女は驚いたように顔を上げて立ち上がった。

「部活は?」と聞かれて「終わった」と答えると「オッケー」と上機嫌に頷く。

何が『オッケー』なのか分からず花形は首を傾げた。

「じゃあ、付き合ってよ」

「どこに?」

「買い物」

白い息を吐きながらニコリと微笑んでそういった。

「こんなに寒いのにか?」

「何言ってんのよ。若いんだから」

苦笑しては言い、花形は溜息をついた。

「着替えてくる」

「そのままでも良いよ?」

部活ジャージでも良いとか言われた。

「着替えてくる」ともう一度言うと「じゃあ、寒いから家の中に入れて」とが言う。

だって寒いんじゃないか」

「寒くないなんて一言も言ってないでしょ?」

ああ言えばこう言う。

花形は溜息を何とか堪えて家の鍵をあけた。


着替えて戻ってくるとはコタツの中に入っていた。

「出かけたくなくなっただろう?」

そう声をかけると「スイッチ入れなかったから大丈夫」と返された。

じゃあ、何でそこに入ってたんだよといえばきっと「病は気からの親類的な考え方で」とか何とか言いそうなのでそこは突っ込まないでおいた。

「買い物ってどこまで行くんだ?」

「んー、駅前で良いや」

妥協した物言いに、花形は肩を竦める。

「透。最近はどうですか?学校」

が聞く。高校に上がってからは通う学校が別々になったのだ。だから、時々こうして会えば彼女はこの質問をする。

「まあ、ボチボチ..かな?」

「ボチボチってどのレベルなのかさっぱりわかんないんだけど」

「じゃあ、は?」

「そうね、まあまあよ」

「それもどのレベルかがイマイチ分からないと思うんだけど」

「『まあまあ』は、『まあまあ』よ」と自信満々に返されて花形は反論する気にはならず、「はいはい」と適当に返した。

と花形の身長差は30センチもある。

そうなると自然と歩幅に差が出来るものだが、は無理なく歩けている。

こういうところはとても感心する。特に気をつけているわけでもなく、彼は自然にそういうことが出来るのだ。

それに気づくたびに「むむ、やるな」とは思うのだが、口には出さない。

何となく悔しいのだ。

暫く歩いて駅前の広場に出た。そして、その傍の百貨店へと向かう。

「何を買うんだ?」

「さあ?」

」と花形が言うと「参考書。選ぶの付き合って」と返された。

曰く。

花形は参考書選びがとても上手らしい。

なので、彼女は参考書を買うときには必ず花形についてきてもらう。

駅前の百貨店に入っている書店はここらでは結構大きい方だから品揃えも充実している。

なるほど、と花形は納得した。

書店に向かう途中、が少し足を止めた。

気づかず数歩先を歩いていた花形は振り返る。

?」

「あ、うん。ごめんごめん」と言って小走りにはやってきてまた花形の隣に並んで歩き始める。

もう一度彼女は未練があるように振り返った。


参考書を選び、がレジに向かったのを確認して花形は先ほど彼女が足を止めた店に向かう。

店頭に並べてあるのはぬいぐるみで、カバンなどに付けられる小さいものだ。

並べてあるそれらを見て、花形はひとつ選んでレジに持っていく。

「プレゼントですか?」と聞かれて「はい」と答えた。

自分用ではない。

店から出ると書店の前でキョロキョロと周囲を見渡しているの姿を見つけた。

先ほど購入したものをコートのポケットに突っ込んで足早に書店に向かう。

「どこ行ってたの?」

少し怒ったようにが言う。「ちょっとな」というと「ふーん」と言って歩き始めた。

「もう良いのか?」

「うん。今日の用事はこれでお終い」

「どこか寄って帰るか?」

そういうと少し心がぐらついたようだが「いいよ」と彼女は断った。

「透、部活の後で疲れてるんでしょ?」

そういう心配りをするなら突然家の前で待ち伏せて連れ出すのはやめてほしい、とちょっとだけ思った。

来た道をまた並んで帰っていく。

「ありがとう」とはマンションの前で足を止めた。

彼女の家のほうが駅前から近いのだ。

「ああ」と花形は頷き、は背を向けた。

」と呼び止められて振り返る。

「ほら、これ」と花形が何かをコートのポケットから取り出した。

「なに?」と首を傾げながらそれを受け取る。

「誕生日だろう?」と言われて目を丸くした。

「何で知ってるの?」

「知ってるも何も...」

どう答えていいかわからず花形は言葉に詰まった。

自分にとっては知っていることが当然だったから、知っているのだ。

「ありがとう。開けていい?」

はそう聞きながら既に受け取った袋を開けている。

「えー!?...どんな顔して買ってくれたの?」

笑いながらそういう。とても嬉しそうだ。

花形が顔を歪めるとまた笑って「ありがとう」と言う。

「ああ」と言って花形はに背を向けて自宅に向かう。


数日後、駅の構内でを見かけた。

同じ学校の友達らしき女子と話をしている彼女の通学鞄にぬいぐるみが付いているのに気が付いた花形は苦笑した。

今度会ったときに「意外と似合ってないな」と声をかけてみよう。

怒るかな、と思ったがおそらく「まったまたー!」と笑い飛ばすような気がしてきてまたおかしくなってきた。





お誕生日おめでとうございます、でチアキさんへ





桜風
10.1.10執筆
10.1.31掲載


ブラウザバックでお戻りください