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せっかく、部活のない日にゆっくり寝ていると降り止まない雨のようにインターホンが押し続けられ、牧は仕方なく起きることにした。


今日は学校の創立記念日で休みだ。

教師たちは何かあるとかでついでに部活も休みになっている。

だから久しぶりに寝坊なるものをしてみようと思っていた矢先にこの仕打ち。

今の時間なら自分以外はもうこの家にいない。

面倒だ、と思いながらもこの音はまだ暫くは止みそうにないので仕方なく玄関へと向かった。

玄関を開ければハツラツとした笑顔を浮かべたの姿がある。

「おっじゃまっしまーす!」

「おはよう」や「ごめん、寝てた?」とかもなく、彼女はそう一言言って靴を脱いで家の中へ上がった。

牧は溜息を吐いてそのまま彼女の後を歩く。

「元気だな」

呆れた風に言う牧に対して

「まあねー」

と上機嫌の

「で?」と本日ピンポン連打をしてまで自分の安眠を妨害した彼女の行動について問うと

「暇だからさ、試験も近いし付き合ってよ」

と笑顔が返された。

「...。学校は?」

今日は平日だ。

とは通っている高校が違うため、こんな平日の休みが重なることはない。

彼女は「ふっふっふ」と笑って「所謂、“振替休日”ってやつだ!」とブイサインを牧に向けて笑った。



仕方なく、牧はそのまま彼女の勉強に付き合うことにした。

リビングのテーブルに向かい合って座る。

が、元来あまり勉強が好きではない彼女はそれに対する集中力は無いに等しい。

「付き合え、と言ったのはだぞ?」

呆れながら牧が言う。

「だってぇ...楽しくないんだもん」

ぷぅ、と膨れながらはテーブルに頬をつける。

牧が深い溜息を吐くと彼女が顔を上げた。

「ね、お腹空いた!」

面倒くさそうにを見る牧に彼女はめげずに「何か作ってよ、牧」と笑顔で言う。

と牧は幼馴染だが、彼女は牧のことを苗字で呼ぶ。

昔はずっと“紳ちゃん”と呼んでいたのだが、中学に上がってそれをからかわれて以来彼女は彼を“牧”と呼ぶようになった。

牧としては少しだけ寂しいとも思ったが、彼女がそうしたかったのだから強要するつもりはなかった。

別に呼び名が変わったからと言って関係が変わるわけでもないし。

ちなみに、牧はからかわれることもなく今まで来たので彼女の事は“”と名前で呼んでいる。



牧は立ち上がり、キッチンの炊飯器の中を見た。ご飯はある。

冷蔵庫を覗く。作れそうだ。

「...作り終わってもそれ、訳せていなかったらお預けだからな」

牧がそう言ってキッチンに掛けてあるエプロンを手にした。

やる気なくだらけていたは途端に元気になって英和辞典と教科書を捲り始める。

とりあえず、有り合わせでチャーハンを作ることにした。これなら残り物を適当に炒めればいいし、結構簡単だ。

調理をしながらも牧はの様子をチラチラと見る。

いつも、これくらいの集中力を見せていれば試験前に自分に泣きつかないだろうに...

そんな事を思いながら手を動かしているうちにチャーハンが出来上がった。

そういえば、自分も朝食を抜いてに付き合っていたのだと今更思い出し、2人分取り分けた。

多めに作っておいてよかった。


「出来たか?」と言いながら牧はの前に座る。

「あとちょっと」と彼女はシャーペンを動かして英和辞典を乱暴に捲っていた。

暫く待っていると「出来たー!」とは両手を上げてそのまま寝転ぶ。

チャーハンは冷めた気もする。

「温め直すか?」

一応聞いてみると

「いいよ。もう食べたい。今すぐ食べたい!」

そう言いながらは体を起こして目の前に広げていた勉強道具一式をテーブルの端に追いやった。


「いっただっきまーす!」と手を合わせて牧お手製のチャーハンを口に運ぶ。

「ん!」と言った後、モグモグと口を動かして嚥下した途端に「美味しい!」と目を丸くして牧に訴える。

「それはよかった」と感動したに対して淡々とした答えを返しながら牧もチャーハンを口に運んでいた。

「何、牧。どうした?!知らなかったぞ。バスケ以外にもこんな才能があったなんて!!」

何だか失礼なことを言いながら「美味しい!」を連呼しつつ彼女は食事を続ける。

余りにも感動的な彼女の食べっぷりに牧は苦笑した。

「慌てて食べるな。よく噛め」

牧が言うと彼女は頷くが、そのスピードは変わらない。

「ちょ、牧。とりあえずウチに嫁においで!」

チャーハンを口に運ぶ合間に彼女が言う。

牧は驚いて食事の手を止めた。

「まさか。こっちが言うならまだしも、言われるとはな...」

思わず呟いて苦笑を漏らす。

彼女は自分の発言の内容はあまり考えていないようだ。

「...じゃあ、貰ってくれるか?」

牧が言ってみた。

「ふえ?」

食事に夢中の彼女の耳には牧の声は届いても、言葉までは届いていないらしい。変な声で聞き返す。

「...いや、何でもない。というか、さっきも言ったが慌てて食べるな」

聞き返されてもう一度言うってのにも抵抗を感じた牧は首を振り、話を変えた。


本当に、今日はいつも以上にに振り回されている。

そんな事を思いながら彼女の和訳したノートを眺め、その中で誤りを見つけて苦笑した。

食事が終わったらまた勉強を再開しなければならない。

きっとまたごねるんだろうな...

何となく予想が出来て笑ってしまう。

ま、こんな休日も悪くない。とことん幼馴染に付き合うことを覚悟して牧は食事を再開した。









キリ番『163800』を踏まれた月守さんのリクエストです。
料理が外見に似合わず上手な牧さんに「嫁に欲しい」と言ってしまう幼馴染ヒロイン
でした。


月守さん。リクエスト、ありがとうございました!!


桜風
08.2.8(執筆)
08.3.23(掲載)


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