冬の朝





冬の通学は本当に辛い...

別に冬が嫌いと言うわけではない。空気がキンと張っているようなその緊張感のある空気が好きだし、何より、新鮮な空気のように思える。

けど、寒い。スカートで自転車で早い時間の朝というのは、かなりキツイ。きっと今しか出来ないだろう。

そんな事を思いながらは自転車を所定の駐輪場に止める。

既に自転車は数台ある。ステッカーで学年が分かるようになっており、やはり自分と同じ色のステッカーがついた自転車は今のところこの駐輪場にはない。

運動部は夏だろうと冬だろうと朝から練習をする。そのため、自分がいつもよりもかなり早く登校してみても一番乗りになることはない。


校舎に入っても人影がなくシンとしている。

やはり、運動部以外でこんな朝早くに学校に来る生徒なんて少ないのだろう。

特に、この階は3年しかいない。だから、部活のために早く来る生徒なんて殆どいない。

引退していないのは、既に推薦が決まっているような将来を望まれたプレイヤーくらいのものだ。もしくは、普段から勉強も怠らず、どう転んでも大丈夫という自身のある者。

はぁ、と白い息を吐き、足早に教室に向かった。

教室に近づき、は首をかしげる。

どうやら、電気がついている。

見回りの先生が何か用事をしてそのまま消し忘れた、とか...

それはないな、と思って教室のドアを開けると珍しい人物がストーブの前にいた。

「おう、。早いな」

「さっむー!」

教室の自分の机の上に鞄を乱暴に置いてそのままストーブの前に立って手を翳す。

「挨拶くらいしたらどうだ」

苦笑しながら牧が言う。

「はよ。寒いねー」

まだ噛みあわない歯がカチカチと鳴る。ちょっとストーブに当たったからといってそれがすぐに解消されるわけではない。

「どうした、珍しいな。いつもチャイムが鳴るかならないかで教室に入ってくるのに」

「いいじゃん。いつもよりも随分と早く目が覚めたから来てみたの。誰もいない教室だったら勉強が捗るかなーって思って」

「場所を選ばないと捗らないということは、どの道捗らないだろうなー」

牧のわざとらしい呟きには膨れた。

「牧こそどうしたの?朝練は?寒い日はお休み?」

の言葉に牧は「まさか」と笑う。

「これからだ。7時半からだからな」

「じゃあ、何で教室にいたの?」

時計を見ると7時20分。

「昨日古語辞典を教室に忘れて帰ったんだ。だから、ちょっと早く来て今日の予習をしてたんだよ」

「んなもん態々持って来てんの?重いでしょ」

「あの先生は授業でも結構使うだろう」

呆れたようにいう牧にも負けずに呆れた表情を浮かべた。

「牧さー、推薦バッチリ決まってんだから学校の授業はもう適当にしておけば良いのに...ホント真面目だよね」

「最後まで気を抜かないのが俺の信条だ」

「それはまあ、大層なことで」と呟き、黒板に書いてある日付を見て、慌てて自分の腕時計の日付を確認した。

、当たるんじゃないか?」

の考えていることを察した牧がからかうように言う。

く、その通りだ!しかも、受験を控えているから学校の授業を疎かにしていたらきっと教師に軽く厭味を言われる。

は短く溜息を吐く。気を取り直したように顔を上げて「牧、練習行かなくても良いの?」と聞いた。

あと5分で7時半だ。

「ああ、そうだな」

教室の時計を確認した牧は頷き、机の上に置いていたスポーツバッグを肩に掛けた。

「灯油はさっき足したからな。あと、古文のノートは俺の机の中だ」

「牧ならそう言ってくれると思った!優しいねー」

笑いながらがいう。

「俺は、を甘やかしすぎか...?」

「偶になら良いじゃない」

「いや、かなりの頻度だと思うぞ」

そう言って笑いながら牧はドアに向かっていく。

「じゃあな。またあとで」

そう言って教室を出て行った牧に

「練習頑張ってねー」

は手を振りながら返しつつ、その足は既に牧の席へと向かっていた。







1周年おめでとうでれんれんへ



桜風
08.11.21(執筆)
09.1.9(掲載)


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