| 花道の練習試合が隣県であると聞き、は応援のため隣県へと向かった。 『桜木軍団』と称される仲間と供に応援をしたが、その後の行動は自由だ。 子供じゃないし、何より残りの3人はナンパに出るといっていたのだ。 自分は興味ないため、知らない街をプラプラしてみることにした。 街を歩いている入り組んだ路地から声が漏れて聞こえる。 ナンパだか恐喝だか判断着きかねる言葉に水戸は溜息をついた。 そして、自分は正義の味方でも正義感の強い素敵な高校生でもないため素通りをしようと思ったが、絡まれている子を目にして「あれ?」と違和感を感じた。 そして、絡まれている彼女も水戸の存在に気づいた。 面倒くさそうな表情を浮かべていた彼女が嬉しそうにパッと表情を明るくした。 「洋平!」 突然名前で呼ばれて面食らう。 咥えていたタバコを落としてしまいそうになった。 彼女は構わず男たちの間をするりと抜けてきて水戸の背に隠れる。 「おいおい...」 小声で抗議の声を上げる。 「いいじゃないの。屋上のよしみで助け舟くらい出してよ」 彼女も小声でそう返した。 水戸は溜息をつき、 「で、コイツに何の用?」 と男たちを睨みつけながらそう言った。 喧嘩は、負ける気はしないが、面倒だなと思っていると男たちは水戸の表情にビビッて逃げていく。 「おー、さすが桜木軍団」 そう言って彼女は水戸を見上げてニッと笑った。 「...は、ここで何してんの?」 「『さん』は?」 「今、助けてやったから」 「それもそうね。助かったよ、ホント。ありがとうね」 助けてくれたお礼に近くのファミレスでご馳走するといってくれたので遠慮なくご馳走になることにした。 「お酒はダメよ」 ファミレスのドアを開けながらそう言われた。 「タバコは?」 「...禁煙席で」 人数を確認に来たホールスタッフにそう声を掛けて席に案内される。 「何で、禁煙...」 「わたしが、今禁煙中。付き合いなさい」 そう言ったに肩を竦めた。 「で、さっきの何だよ」 「あー...ぶつかってきたから謝れって話をしたのよ」 「アンタ、気が短いんだな...」 呆れながら水戸が感想を口にする。 だが、彼女は笑いながらパタパタと手を振る。 「違う違う。中学生くらいの小さい子。こかしたのにその子を罵倒していたからちょっとムカついて喧嘩を売ってしまったの」 しかし、さっきはあの現場にそんな子はいなかったと思う。 「逃げちゃったんじゃないの?怖いでしょう、普通」 「アンタは、怖くなかったのかよ」 「怖かったけど...口に出ちゃったから引くに引けずに。そんなところに丁度良く正義の味方の正義感の強い素敵な高校生登場!って感じかな?」 その言葉に水戸はこれ見よがしに溜息をつく。 「俺が通らなかったら、どうなってたんだろうな」 「どうなってたんだろうねー」とは暢気に返す。 「で、注文は決まった?」 「コーヒーとサンドイッチ」 「小食ねぇ...」と返しながら手を上げてスタッフを呼び、水戸の注文と自分の注文のワッフルを頼んだ。 「太るんじゃねぇの?」 からかうように水戸が言うと 「丁度良いんじゃないの?」 はしれっと返す。 「そういや、は何でここに居たんだ?」 「こっちの大学に来てるの」 なるほど、と納得した。 「工業系とか?」 水戸の言葉には目を丸くする。 「何で?」 「オイルの匂い」 短く答える水戸に「君は犬か」と笑いながらは返し 「美大。油絵の匂いね、きっと。サークルで描いてるんだけどね。授業ではまだ実習させてもらえない」 「へー、絵なんて描くんだ?」 「うん、好きなだけだよ。高校のとき猛勉強して、何とか引っかかったていうか。でも、親は猛反対。今でもほぼ絶縁だよ」 苦笑しながらそういうは意外と楽しそうで充実している大学生活だけは送れているんだろうな、と想像した。 「てか。じゃあ、此処奢ってもらうのマズイんじゃねぇの?」 「大丈夫。一応、貯金とかあるから。バイトもしているしね。普段締めてるから少しくらいの贅沢は何とか、だよ」 苦笑しながらそう言うは、当たり前だが数ヶ月前の彼女よりも成長しているようで、それは少し寂しい。 別れ際、「秋には文化祭があるから良かったら遊びにおいでよ」とが言った。 「時間と金があったらね」 そう言いながら水戸はタバコに火を点ける。 「それは、作りなさい」 は笑う。 「気が向いたらね」 そう言って水戸は駅へと足を向けた。 一度振り返ったらの姿はもうなかった。 「秋、ねぇ...」 どうやって連絡を寄越すつもりで居るのだろうと思いながら、ふぅ、と紫煙を吐く。 まあ、どうにかなるのだろう。 今日だって偶然に再会したんだし。 そんな事を思いながら駅への道のりをゆっくりと歩いた。 |
桜風
08.11.26
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