約50センチの距離 1





 大学に入って新生活が始まった。

地元の私立大学の推薦により、入学が決まってひと月。

結構自由な時間があったから、色々とその時間を満喫した。

バスケ部の友人たちも学校が早々に決まり、時間があった時から、顧問に頼んで体育館を開けてもらい、皆で練習をしていた。

入学予定の学校で練習ができるようになって、友人たちとの練習時間は少なくなり、それぞれの進路のバスケ部での生活が増えた。


大学生活が始まって、少し戸惑いもあった。

これまでの学校は、学校側が示しているカリキュラムを淡々とこなしていけばよかった。

だが、大学は自分でその科目を取るか、単位数も計算していかなくてはならない。

まだ1年の前期だからそこまで深く考えなくてもいいようだが、これが学年が上がっていくと面倒くさくなると、バスケ部の先輩たちに聞いた。

クラスの連中とはそれなりに仲良くなり、一緒に昼食をとるメンバーも固まってきた。

「あれ、花形くん」

ふと聞こえた声に彼は足を止めた。

「花形?」

きょろきょろと周囲を見渡す彼にクラスメイトが声をかける。

「どうした?」

「や、知り合いの声が聞こえた気がして」

そういいながら見渡すと、人込みの中から手だけがにょきっと出たり消えたりする。

花形はそちらに足を向けた。

?!」

「わー、花形くん。久しぶりー」

若干息が上がっている彼女は少し嬉しそうに花形に挨拶をした。

「どうしたんだよ、こんなところで」

花形が問うと

「ん?うん。お昼ご飯を食べに」

と彼女が返す。

「...、学部は?」

「やー、ズバッと聞かない花形くんが優しい。これで藤真くんだったら『、国立落ちたんだなー』って笑いながら言うに決まってるもん」
苦笑して彼女が言う。

正直なところ、ズバッと聞きにくかったから花形も遠まわしに聞いてみたのだが...

「文学部」

「ああ、じゃあ。建物が違うよな」

「うん。学食も、いつもは近いところ使ってるんだけど。ちょっと今日は足を伸ばしてみたくなって」

「花形?」

そんな会話をしていると、一緒に学食に来ていた友人たちが声をかけてきた。

「あ、ああ。わるい」

「あ、ごめん。友達と一緒だったんだね」

友人たちに謝る花形を見て彼女は慌てた。

「誰?」

「高校の時のクラスメイト」

「へー、妹とかじゃなくて?」

一人がからかうように言う。

「間違いなく、花形くんと同じ年です。花形くんが留年してなければ、ですけど」

彼女はそのからかいをさらりとかわす。もう慣れっこだ。

「してないよ、留年なんて」

苦笑して花形が言う。

「それは、失礼」

芝居がかった礼をして謝罪する彼女に花形の友人たちは少しバツが悪そうだ。

ー。おーい、埋もれたかー」

「発掘必要かーい?」

「...呼ばれてるぞ」

苦笑して花形が言う。

「失礼な子たちだ」

彼女はそう呟き、

「じゃあ、またね」

と言って友人たちが呼んでいるほうへと向かっていった。

「あの子、ほんとに俺らと同じ年?」

「...ああ。すごく、頑張り屋さんな子だよ」

「ま、あんだけちっさいとがんばらなきゃならんのだろうなー」

彼女を揶揄した口調でいう友人たちに少しだけ不愉快な思いを抱いた花形だった。









桜風
13.7.17


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