約50センチの距離 2





 「へー、高校の時のクラスメイトに会ったんだ」

食堂で友人と無事再会できたは先ほどはぐれていた時の話をした。

「どんな人?」

「背がね、すごく高いの」

「...あんたが言ったら誰だって背がすごく高いんじゃないの?何センチだっけ?」

「私?」

「そ」

「150センチ」

胸を張って答えると

「約、ね」

とか

「お、見栄張ったねー」

と言われた。

「ひどい」

「ま、このサイズは、かわいくていいぞー」

そういってぐりぐりと頭をなでられる。

慣れているとはいえ、自分とさほど背の変わらない彼女たちに撫で繰り回されるのは心外である。


(そういえば、花形くんがいるってことは、わざわざ推薦で選手を取るような学校だったんだねー...)

帰り支度をしながらそんなことを思っていた。

これまで何気なしにとおっていた体育館脇で耳を澄ませてみる。

が、どうにもバスケをしているような音がしない。

(学校が広いからバスケ部用の体育館でもあるのかな?)

高校もバスケ部専用の体育館があったことを思い出す。

自転車置き場に向かい、愛車に乗ってバイト先へと向かった。

この大学は交通の便も悪くない。

駅が近いので電車で通うという手もあったが、基本的に人込みはつぶされるようにできているので、自転車通学を選んだ。

きっとそのほうが健康にいいし、と少し自分に言い訳もしてみる。

バイトは、学校と家との間にあるファミレスのウェイトレスだ。

初めてのバイトはどんなものがいいのだろうかと悶々と悩んでいたら、友人に「人数足りてないからバイトしたいならここにきて」と言われて行ったのがきっかけだった。

何事も経験、と頑張ってはいるが...

「はい、これですね」

つま先で立って棚の上にある食器を取ろうとしていると手を貸してもらえた。

「ありがとう」

年齢的にはよりも下の子に手伝ってもらわなくてはいけない。

却って足手まといになっているのではないかと思ったのだが、

「その分よく働いてるからね」

と意外と周囲に好意的に見てもらえている。

本当は自分一人でいろいろとできるようになりたいと思っているのだが、中々難しい。

主に、体格的な問題で。

「あんた、その分働いてるからチャラだって。店長もすごく喜んでんだよ?」

「一人前に働いてお給料もらえるものでしょ?」

「そんなこと言ってたら、半額にされちゃうよー」

今日のシフトが終わって更衣室でそんな話をした。

半額にされるのはつらいので、誰かに手伝ってもらっていることで何とか仕事ができていることは口にしないことにした。

こればかりは言っても仕方ないのだ。



「ねえ、うちの学校ってバスケ部強いの?」

花形と再会した翌日に友人に聞いてみた。

彼女はサークルに入っているので、先輩の話を聞けるのだ。

「バスケ部?あー、うん。なんか、それは聞いたことがある。だから、今年、推薦で選手を取ったって」

(花形くんだ)

なんだか少しだけ嬉しくなった。

自分の友人が評価されているのだ。

「なに?」

「昨日会った友達がバスケしてた人だから」

「へー。巨人と小人かー」

「失敬な!」

ぷいとそっぽを向くと、その視線の先に花形がいた。

(あ...)

きょろきょろと教室の中を見渡している。

バスケ部の知り合いでも探してるのだろうか。

高校までのようにクラスメイトの名前は覚えていない。

選択する科目が全く同じ人なんて、友人くらいのものだ。

「あ、いたいた」

花形はそういってのもとへとやってきた。

、来週の土曜日暇か?昼間なんだけど」

「来週の土曜日なら、空いてる」

が答える。

「だったら、うちの練習試合見に来ないか?」

「練習試合?」

おうむ返しに問うと彼は少し愉快そうにうなずいた。

「そう、練習試合」

「いいよ。何時?」

バスケ部の練習試合の日程の話を終え、「じゃあな」と花形は教室から出て行った。

「ほんとに巨人族と小人だったね」

呆然と友人がつぶやく。

「失敬な!」

はぷくーと膨れたのだった。









桜風
13.7.24


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