約50センチの距離 4





 未成年故、まだアルコールデビューはできない。

夕飯と言ったら、とファミレスへと向かった。

「そういや、って普段何してんだ?」

と、席に案内されて腰を下ろした藤真が問うた。

「普段?」

「そういえば、サークルにでも入っているのか?」

藤真の問いを補完するように花形も質問する。

「ああ、普段はバイト」

「お前、働けたのか?小学生が」

「わー、腹立つ!」

笑顔で返したに、藤真は笑った。

「じゃあ、お前のバイト先に飯食いに行けばよかったなー」

「絶対教えない」

歯をむいて言う彼女に藤真は笑う。

そんな2人を眺めながら少し複雑な表情を浮かべているのは花形だった。

高校時代からこの2人はこんなやり取りをしている。

藤真も花形も高校時代に彼女と1年間同じクラスをしている。

1年の時のを知らない花形は、彼女と藤真がどんな仲なのかはわからない。

『どんな仲』と言っても友人という関係というのはわかるが、明らかに自分とは系統の違う友人だろう。

気の置けないというか、そういう。

それを面白くないと思っている自分にも呆れている。


夕飯を済ませ、そのファミレス前で解散となった。

が自転車だから、という理由だ。

「じゃあ、またねー」

彼女はそう言って自転車をこいで遠ざかっていく。

「よかったな」

不意に言われたその言葉に花形は藤真を見下ろした。

「何がだ?」

試合のことだったら、自分は試合に出ていないので、あまりうれしい言葉でもない。

それに、そうだとしたら、藤真の言葉に疑問が起こる。

藤真は相当な負けず嫌いだ。その負けず嫌いが、簡単に相手の勝利を『よかったな』というとは思えない。

何より、自分が試合に出ていないのだ。

「ん?と同じ学校ってこと」

?」

「好きなんだろう?」

丁度、そのことについて考えていた。それを指摘されて花形は眉間にしわを寄せる。

「...お前は?」

「は?俺様??」

頓狂な声を上げて藤真が言う。

「ああ」

花形が頷くのを見て、藤真は苦笑した。

「確かに、のことはお気に入りだけどなー。恋愛感情は一切ない。ちっこいのをからかうのが楽しいんだ」

言い切った藤真に何となく違和感を感じた。

だが、その点について花形は指摘をしなかった。

「何?」

「いや」

「んで?どうよ」

「わからん」

花形の言葉に藤真が眉間にしわを寄せる。

この期に及んで、と顔に書いてある。

「よかったかどうかがわからんということだ」

彼女に対する好意は、認めざるを得ないだろう。

だが、同じ学校でよかったかと聞かれたらよくわからない。

同じ学校である利点が殆どないし、別の学校に通っているのとさほど変わらない。

複雑に考えすぎだろう、と思いつつもそれを指摘せず、藤真は「ふーん」と相槌を打った。



その後、とは校内で会う機会はそれなりに出てきた。

相手が校内にいると知っているということは認識しやすくなるということだ。

しかし、講義を受ける建物が違うので授業が重なって机を並べることはない。

会えて昼食時だが、お互い友人と一緒なので、これまた一緒をすることがない。

挨拶をする仲、という以外何もないのだ。


一方藤真とは時々連絡を取って、近所の公園などで1on1をしている。

ただ、休憩のたびに「んで、とはどうなんだよ」と聞かれるのは勘弁してほしい。

何もどうもならないのだから。

そういうと、彼はこれ見よがしなため息を吐く。

「初恋も知らないこどもじゃねーだろ」

「ほっとけ」

苦々しく返すと藤真は笑った。

どこか痛そうなその笑顔を、見ないふりをした。









桜風
13.8.9


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