| 花形がバスケ部の体育館へと向かっていると腕を掴まれた。 見下ろすと、いつもと一緒にいる子だった。 「なに?」 「え、と。相談があるんだけど」 不意に言われて花形も困る。 時計を見ると10分程度なら時間はとれそうだ。 「5分なら」 着替えの時間等々含めてそう言う。 「充分」 そう言いながら彼女は花形の腕を引いて、物陰に隠れる。 「なに?」 もう一度用件を問う。 「実は、最近の様子がおかしいの」 「の?どんな感じに?」 花形が問うと彼女は言いにくそうに「何か隠してるっていうか...」と曖昧なことを言う。 彼女自身が何かを隠しているようではなく、実際感覚的な話なのだろう。 「友達でも、それなりに秘密はあるんじゃないのか?」 「有ると思う。けど、何か..こう...」 うまく言葉にできず、彼女はもどかしげに眉をひそめた。 「わかった、それとなく聞いてみるよ」 「ズバッて聞いても多分ダメだから」 おそらく、彼女はズバッと聞いたのだろう。 「ああ、ありがとう」 「うん、えと。お願いしてもよかったのかな」 彼女が覗うように言う。 「ん?」 「花形君、のカレシ..だよね?」 そう言われて花形は眉を上げ、 「いや、違う。友人だよ」 と返した。 本人は無意識に苦く笑っている。 彼女は「そ、か」と呟いて何かを言おうとした。 それを遮るように 「お願いされたよ」 と花形が言う。 「うん、ありがとう」 そして、踵を返した彼女を「ちょっと待って」と花形が呼び止めた。 「のバイト先、教えて」 「え?」 「俺に言うともれなく、にとってちょっと面倒くさいのに伝わると思ってるのか、教えてくれないんだ」 「...その面倒くさいのに伝える気は?」 「本人の了解を得てからにするよ」 苦笑していう花形の言葉に頷いて、彼女はのバイト先を教えてくれた。 その日の練習が終わり、花形はのバイト先に向かってみた。 学校から少し距離があったが、彼女が自転車通学ということを考えれば、そう遠い場所でもないと思う。 店内に足を踏み入れると「いらっしゃいませー」と声がした。 視線を向けた先で、目を丸くしている店員がいる。 言わずもがなでだ。 「え、と...」 混乱して自分のしなくてはならないことが浮かばなくなったのだろうか。 「どこに座ったらいいんだろうか。禁煙席で」 「あ、はい。ご案内します」 そう言って仕事モードに戻ったが席に案内する。 「どうしたの?」 「近くを通ったからな。偶々入ったらがいた」 「ウソ。偶々入って私がいたにしては落ち着きすぎてたよ」 メニューを渡しながらが言う。 苦笑して「実は、の友達から聞いたんだ」と正直に話をした。 「藤真くんには?」 眉間にしわを寄せてが問う。 「言ってない。というか、それが嫌で教えてくれていなかったんだろう?」 と花形が指摘する。 「悪い人じゃないんだけどねー。面倒くさい人なんだよねー」 「ま、否定できないけどな」 「あら、友達なのに酷いんじゃない?」 からかうようにが言うと 「だって藤真の友達だろう?」 と花形が指摘する。 肩を竦めた彼女は「そーでした」とぺろりと舌を出した。 その仕草がかわいらしい。 素直にそう思うようになったのは、藤真に指摘をされたからだろうか、とそんな今はどうでもいいことが思い浮かんだ。 ひとまず注文を済ませて食事を摂りながらの様子を眺めていた。 様子は..確かに少し変かもしれない。 やたらと外を気にしているような気がする。 花形も外の様子を何気なく眺めてみたが、変わったところはない気がする。 「お冷、お注ぎしますね」 そう言ってがやってきた。 「、今日は何時上がりだ?」 「10時。何?」 「それじゃ、一緒に帰ろう。送るよ」 その言葉に一瞬だけ彼女の表情が変わった気がした。 しかし、「え、悪いよ」とは断る。 「いいよ、あとちょっとだし」 花形がそう言うとは店内の時計に視線を向けた。 確かに、あと10分程度。 「あ、でも、は自転車か」 「ううん。この間盗まれちゃったから、最近は歩きなの」 「え、自転車盗られたのか?」 「うん。だから、今不便なんだよね」 苦笑して彼女が言う。 「そうか。じゃあ、どうやって帰ってるんだ?」 「いったん駅まで出て電車。そして、徒歩」 「わかった。とにかく、10時ごろ店を出て待ってるからな」 花形にそう言われては頷く。 目に見えてほっとしている。 やはりに何かがあったのだろう。 |
桜風
13.8.14
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