| のバイトが上がり、2人で並んで駅に向かう。 街灯を背に受けて伸びた影の長さの差には苦笑した。 光の当たり具合が全くの背後からではないので、それが身長差というわけではないが、それにしたって大きな差があるのだ。 苦笑を漏らしたに「?」と花形が顔を覗き込んできた。 「あ、ううん。なんでもない」 慌ててが花形を見上げた。 「え、と。花形くん、練習大変?」 何とか話題を探す。はバスケの話を振ることにした。学部の話になってもさっぱりわからないだろうから。 「まあな。でも、高校の時も藤真が相当きついメニュー組んでたか、それと同じくらいかも」 「じゃあ、藤真くんに感謝?」 からかうようにが言うと、「どうだろうな」と花形が肩を竦めて苦笑しながら言う。 「では、レギュラー取りは?」 「まだ、だよ」 少しだけ悔しそうな表情を浮かべて花形が言う。 「あ、ごめん」 それを目にしたは謝罪した。彼の目標をからかった形になったのだ。 「ん?」 「言い方、悪かったかも」 「いいよ。まだだし。そうやってつついてくれる人がいるほうが焦っていいかも」 花形言う。 しばらく歩いていると、ガサリと後方で音がした。びくりと震えたが花形の腕をつかむ。 「?」 「あ、ああ。うん。なんでもないよー」 パッと手を放してが言う。 先ほど腕をつかんでいた彼女の手が震えていた。 「何かあるよな」 確信していう花形に「何でもないって」とは返した。 「...実は、俺がのバイト先に行ったのは、の友達に話を聞いたからなんだ」 「え、ちょっと。誰のこと?」 眉間にしわを寄せてが言う。彼女にしてみれば余計なお世話だったのだろう。 「言わない。でも、来てよかったよ」 「なんで...」 「が何か問題を抱えていることが分かったから」 「だから、何も問題なんて...」 反論するが花形の目を見て言葉を失った。 まっすぐにみられているその瞳は彼女を心配している。 「え、と...」 俯くに 「誰かに付きまとわれているのか?」 と花形が核心を突くことを言った。 「え、あ...」 「だよな?さっきも、バイト中、結構外を気にしていたし、今のだって」 と花形が言う。 「...うん。なんか、そんな感じ。あ、でも自意識過剰なだけかもしれないし」 慌ててが言い訳をするが、花形はそれに同意しなかった。 「いつから?」 「...自転車を盗まれるちょっと前から」 「どれくらい?」 「2週間くらい前かも。実は、自転車、2台盗まれてて」 「は?」 花形が頓狂な声を上げた。 「警察には?!」 思わず語気を強めて問う。 「え、と。2台目だけ届けた..かな?」 びくりと震え、小さくなりながらが答えた。 「...」 憤りを抑えるように、花形が唸る。 (俺が怯えさせてどうする...) 「あのな。自身も危ないって思っているんだろう?」 「はい...」 「他に思い当たることは?」 聞くと意外と出てきた。 「それ、親御さんには?」 「心配かけたくなくて...」 「、悪いな。ちょっときつい言い方になるぞ」 一応、そう前置いて 「何かあった時の方が心配だろう。取り返しのつかないことになったらどうするんだ!そっちの方が大変だろうが!」 と叱った。 はその場で小さく蹲る。 「...」 花形も膝を折ってその場にしゃがみ込む。 「迷惑、掛けないから」 「ちがう」 の言葉にいらっとしてその感情のまま言葉が漏れる。 「迷惑かけろ」 覗うようにが顔を上げた。 「迷惑、かけてくれ」 「...花形くん、マゾ?」 の言葉に頬を引き攣らせた花形は、彼女のこめかみに拳を当ててグリグリし始めた。 「その考え方、ちょっと藤真っぽいぞ」 「この反応、藤真くんっぽよ...いーたーいー。はーなーしーてー」 涙目になっていうの訴えを聞くことにした。 「は、人よりも小さくて、でも、その分努力家なのは知っている」 花形が自分をズバッと「小さい」というのは珍しくて、は驚いたこともあって大人しく聞いていた。 「けど、体格的な話になったら不利なのは間違いない話だろう?」 「まあ、はい...」 は頷く。 「だから、俺を頼れよ」 「え、と?」 「俺は、を心配できるところにいたい。迷惑をかけられるところに立たせてくれ」 そう言って花形はの手を引いて立たせる。 「とりあえず、警察には親御さんに話してから。けど、明日には行くぞ」 「えー」 「『えー』じゃない」 ピシャッという花形には笑う。 「なんだよ」 「ううん、花形くんってば先生みたい」 くすくすと笑って彼女が言う。 「...それでいいよ、今は」 そう言いながら花形はの手を掴んだまま歩き出す。 「あの、手」 「不都合、あるなら離すけど...」 そう言った花形に「ない、かも」とはいう。 その返事に内心ほっとしながら花形は駅に向かって歩き出した。 |
桜風
13.8.21
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