| が悩んでいたストーカーまがいの行為は彼女の両親に話をした後、警察に届け出て、一応の収束を迎えた。 彼女自身、不安に思っていたことがなくなり、すっきりした表情を見るようになった。 そして、その代わりと言っては何だが、別の悩みが出た。 あの時は、本当に心配してくれているのだという気持ちだったが、反芻してみると、どうにもそれだけではなさそうな気がしてきたのだ。 花形の『俺は、を心配できるところにいたい。迷惑をかけられるところに立たせてくれ』という言葉の意味だ。 何だか、告白されたような、そんな風にもとれる。 だが、そんな風にとっていいのだろうか。 花形は高校時代から色々と面倒を見てもらっていた。 この身長のおかげで難しいことはたくさんあった。それを助けてくれていたのが花形だ。 だから、今回もその延長だと思われる。 何せ、背が小さいのは不利だって話をしていたのだ。 「」 休日、買い物をしに足を伸ばしてみると、そこに藤真がいた。 「わ、どうしたの?」 「練習試合帰り」 「試合多いのねー」 感心したようにがいうと「まあなー」と藤真が苦笑した。 「レギュラーは?」 「獲ったぜ」 ニヤッと自信満々に笑って言う。 「すごーい」 「花形だって獲ったってこの間聞いたぞ?」 「そうなの?」 目を丸くしているに藤真も目を丸くした。 「え、お前らまだなの?」 「...まだって、何が?」 「わー、おいおい。何やってんだよ、花形」 遠い目をして藤真は勝手に何かを言っている。 「何なの」 「や、うん。なあ」 「何?」 「ちょっと、お兄さんとデートしようか」 そう言って藤真はの手を取って歩き出す。 掴まれた手は、先日花形に掴まれた方の手ではなかった。 「そっか、左利き」 「ん?天才が多い左利きの俺様がどうしたって?」 「多いだけで、全員が天才ってわけじゃないってのは理解してるかしら?」 首を傾げてが言う。 「ははっ」と笑って藤真がそれを流した。 「そういや、はなんでここらにいたんだ?」 「気分転換の買い物」 「バイト先ってどこ?」 「いきなり話題に飽きるってどうなの?!」 の抗議はやはり軽く流された。 「晩飯どうする?」 「家に帰って食べるよ。藤真くん、外食?」 「付き合えよー」 「やだよ。お茶くらいなら付き合うけど」 そう言うと 「んじゃ、それで我慢してやる」 と何故か上から目線で言われた。 「ま、いいけど」 取り敢えず、買い物に藤真を連れまわし、はそれなりに満足できた。 もうちょっといろいろ見たかったが、この大きなお兄さんが駄々をこね始めたのだ。 宥めすかしてまで買い物をしようと思わなかったは大人しく、藤真が我慢してくれるというお茶をすることになった。 「女子って何で買い物好きなんだ?」 「藤真くんって何でバスケが好きなんだ?」 似たような言葉を返すと「ふーん」と彼は納得したような相槌を打った。 「そういえば、時々花形くんと遊んでるんだって?」 以前駅までの道のりで聞いた。 「遊びじゃない。練習だよ。1on1。もしかして、あいつが『遊び』って言ったのか?」 「ううん、私の解釈」 首を振ったに「あ、そ」と藤真は返す。 (なんでそんな風に話をするのに何の進展もねーんだ?) 不思議だ。 客観的にみて、双方まず間違いないはずだ。 「、花形とよく話すんの?」 「そうでもないかな。普段使う建物が全然違うもん。会えるとうれしいけどね」 「嬉しいんだ?」 「知ってる人に会ったら安心するでしょ、普通」 「先ほど、街中で俺様にあったじゃないか」 「面倒事が待っていることが分かっているとそれは話が別なのよねぇ」 頬に手を当ててが言う。 「あ、そ」 その後、お互いの大学の授業の話などをしていると、不意に 「って花形のことどう思ってんの?」 と話題を振られて、は咽た。 「は?」 「いや、その慌てよう見たら、何かいろんな憶測飛ばせるんだけど、どうよ?」 藤真の言葉には一度咳ばらいをした。 「何、突然」 「や、オレの質問に答えてから質問しろって。質問に質問を返すのはマナー違反だぞ」 正論を言われてぐっと詰まる。 「わかんない」 「じゃあさ、花形に告白されたとして。お前、断る?」 「...わかんない」 「とりあえず、付き合ってみっかなってなんねーの?」 首を傾げて藤真が言う。顔が整っているとこんなかわいらしい仕草をしても様になる。それが腹立たしい。 「断る理由は、見つからないかも」 「じゃあ、好きってことじゃね?」 「結論まで飛んでない?」 は眉間にしわを寄せて言う。 「そりゃ、出会って、数日の相手のことを言うんだったら話は飛んでるかもしれねーけど。高校で1年間同じクラスだっただろ?それなりに知ってるって言っても過言じゃないだろ。なんなら、花形のセールスポイントアピールしてもいいぞ、オレ」 藤真は不敵に笑ってそう言った。 「何でそんなに花形くんを推すの?」 が迷惑そうに言う。 「オレが落ち着く」 「どういうこと?」 「オレが、好きだから」 とさらっと言われた。 「は?」 「て、言ったら納得してくれる?真剣に考えるか?」 どこかからかいを孕んだ声音でそう言われては不快を露わにした。 「藤真くん、ふざけすぎ」 少し棘のある声でいい、「悪かったって」と藤真が返す。 お詫びと言って、藤真がその場の勘定を持った。 駅まで送ってもらい、「じゃあな」と藤真が言う。 「うん、じゃあね」 「ちょっとは、考えてくれよ」 不意に言われたその言葉。考えるのが何か。 「じゃーなー」 そう言って藤真は雑踏に紛れていく。 「何なのよ...」 呟いたは改札をくぐった。 |
桜風
13.8.28
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