| 書店を出た後、多少寄り道をして駅に着くとは「うわぁ...」と言って天を仰いだ。 楽しかったのですっかり忘れていたが、今は帰宅ラッシュの時間帯だ。 いつもこの時間になる前に電車に乗っていたというのに、すっかり忘れていた。 「どうした?」 「うん。私、もう少し寄り道して帰ることにするわ。近くに図書館あるし」 そう言って「じゃあね」とが駅に背を向けて歩き出そうとした。 「は、何処まで乗るんだ?」 「ん?」 花形に聞かれては振り返る。 「だから、はどこの駅で降りるんだ?」 そう言われて自分の家の最寄り駅を口にすると、 「そうか。俺はその次の駅だよ。一緒に帰るなら大丈夫だろう?」 が今の時間の電車を避けようとしたのか何となく察した花形が言うとも少し考えて頷いた。 これだけ大きな人が側に居るなら、少なくとも潰れてしまわないだろう... 「じゃあ、帰ろっかな」 花形を見上げて言うと「うん」と頷いた。 しかし、いつも避けていたからこんなラッシュは久しぶりだ。 一度帰宅ラッシュの時間帯の電車に乗って結局人を掻き分けて出る事が出来ずに知らない駅で電車を降りる羽目になったのだ。 電車がやってきて乗り込むと、思ったほどきつくない。 やはりこれは目の前の花形のお陰なんだろうと改めて感心する。 電車の中で会話はせずにそのままは電車のドアに体を預けて見慣れた窓の外の風景を眺め、花形もの頭越しに外を眺めていた。 車内アナウンスで次がの降りる駅だと告げられ、振り返って降りるほうのドアを見る。 やはり、そこまでは人がぎっしりと詰まっている。 を見ると少し不安そうに花形越しにその詰まった人たちを見ていた。 「もう移動しておこう」 頭上から降る声には頷いた。 「すみません」と言いながら花形がを腕で庇い、反対側のドアに向かって移動する。 反対側の出口に着いたときに丁度電車も駅に到着してドアが開く。 花形は一度電車を降りて人の流れが落ち着くのを待って再び電車に乗った。 「ありがとう」 電車に乗る寸前、にそう言われ、 「気をつけて帰れよ」 軽く手を挙げてそう言った後電車のドアが閉まった。 花形は自分が言ったとおり次の駅で電車を降りて、もう一度電車に乗った。 翌朝、学校に行くとと目が合う。 「昨日はありがとう」 「ああ」 そうか、以前早く教室に来たとき既にがいたのはラッシュを避けて通学していたからか。 今頃になって納得した。 「なあ、花形。何でお前昨日あの電車に乗ってたんだ?お前んち逆だろう?」 2時間目が終わってノートを返しに来た元クラスメイトがそう言った。 花形は内心舌打ちをしての席に視線を遣る。 驚いた表情のが振り返っていた。 ったく、おしゃべりめ... そう思いながら 「用事があったんだよ」 簡潔にそう答えた。 「ふーん」と興味無さそうに元クラスメイトは相槌を打ってそのまま教室から出て行った。 「ねえ、花形くん」 「なんだ?」 「昨日...」 「用事があったんだよ。が気にすることなんてないさ」 と言って微笑む。 「うん。でも、ね?ありがとう。用事があったのに寄り道にも付き合ってもらって」 「ああ。いいよ、そんなこと。また一緒に帰ろうな」 花形にそう言われてはきょとんとする。 「またあっち方面に用事があることもあるし」 と付け加えられては納得をして 「楽しみ!」 と頷いた。 |
桜風
07.5.30
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