| とりあえず図書室を後にして教室へと移動した。 図書室から一番近いのは藤真のクラスだった。 「で、何でダメなんだ?ヤマ」 見下ろして言ってくる。 「当たらなかったら悲惨な状況だから。さすがに赤点取れないでしょ?キャプテン」 藤真は苦い顔をする。 確かに、赤点なんてものを取ったら後輩に示しがつかない。 「けど、普段俺らは部活してるんだぜ?試験週間くらい遊びたいのが年頃の男子の心境だ」 藤真が訴えるが 「好きで、バスケしてるんでしょ?だったら、それは理由にならないんじゃない?」 とが言い返し、藤真はそれに反論できない。 藤真の負けだな、と花形が思っていると 「なあ、って身長いくつ?」 全く関係ないことを聞いてきた人物が居た。高野だ。 「...150センチ」 間をあけた上に顔を背けて応えるものだからその場に居た、と初対面の者たちでさえ「嘘だ」と反射的に思った。 その視線を受けては居心地が悪くなる。 「って、いうか。藤真くんたちは図書室に勉強をしに行ったんでしょ?だったら、当初の予定通りに勉強すれば良いじゃない」 が話題を戻す。 こっちのほうが自分に利がある。 「いや、俺たちは全くやる気は無いんだがな?花形大先生が、どーしても勉強をするようにって無理やり図書室へ連れてきたんだよ。そしたら、勉強のお出来になる大先生がいるだろう?これは、大先生にヤマを張ってもらうしかないって、神の啓示かと思ってさ」 「そんな神様は居ないと思う...」 半眼になって藤真を見た。 藤真は本気でそう思っていたのだろうか。どっちでも良いが、もう帰りたい。ラッシュに被ってしまうと帰る時間を遅くずらさなくてはいけなくなる。 「まあ、そういうわけだから。ヤマは張らない。地道にコツコツ勉強したら?」 適当な机においていた自身の鞄に手を伸ばしながらが言って話を終わらせようとした。 が、 「じゃあ、もそれに付き合え」 と藤真がの鞄を取り上げた。 「ちょっと、返して!」と言いながら藤真の周りをぴょんぴょん跳ねるを見て「本当に小さいなぁ...」と高野たちは思っていた。 あの藤真から荷物を奪還できないとは... 「やめろ、藤真」 やはり止めたのは花形だ。藤真が腕を上にあげて持っていたの荷物を取り返してに渡す。 「悪かったな、うちのキャプテンが」 そんな花形の様子を見て藤真が「ちぇー」と言いながら口を尖らす。 「せっかく、花形の負担を減らしてやろうと思ったのに」 藤真の言葉には首を傾げてそのまま花形を見上げた。どういうことだ? 「気にしなくて良いから」と言う彼だったが、「お前一人が俺たち4人を教えるって大変だろうなーって思ったのに」と藤真が続ける。 は改めて4人を見上げた。 この全員を花形が面倒を見なければならないのか。 「慣れてるから」と花形が続けたがは溜息を吐いた。 「今日だけ、付き合いましょう」 の言葉に藤真はにっと笑って「んじゃ、よろしくな。大先生」と言って肩を叩いた。 たちは学校を後にした。 藤真の性格から言って図書館は無理だ。 そして、腹減ったと騒ぎ出した高野のお陰で近場のファミレスへと向かうことになった。 勉強を始めては呆然とした。 「何で...?」 此処までとは思っていなかった。 「だから、俺は言っただろう?花形の負担を減らすとな!」 「胸を張って言う言葉?」 はそう言ってすぐさま藤真の今解いた問題の誤り指摘をする。 初対面だというのに他の3人にも容赦なく厳しいことを口にするに正直皆は驚いた。 さすがはスポーツマンと言ったところか、乗ってきたら彼らの集中力は中々すばらしいものだった。 段々要領も飲み込めてきたらしく、が指摘しなくても理解し始めてきている。 しかし、もしかして花形は毎回テスト前にはこの4人の面倒を見ていたのか... 花形を見るとと目の合った彼は苦笑した。 何を思っているのかがその目を見たら分かったのだ。 暫く黙々と勉学に勤しんでいた6人だが、突然が立ち上がった。 何だ?と皆が見ていると、その場から離れてレジ付近の公衆電話に向かった様子だ。 何気なく藤真が時計を見て驚きの声をあげる。 「うげ、もうこんな時間か!?」 時計を見て皆が驚く。 自分たちは物凄く集中していたようだ。 が電話に走った理由も何となく分かった。 「んちって、門限あるの?」 藤真が花形に聞く。 「さあ?」と花形が肩を竦めた。さすがにそんな会話をしたことはない。 戻ってきたは慌てていた。 「もしかして怒られた?」 申し訳なさそうに藤真が聞く。 「あ、いや..」との返事は歯切れが悪い。きっと怒られたのだろう。 「ごめんな」と言う藤真に「気持ち悪いよ」とが笑う。 花形も荷物を纏め始めた。 がどうしたのだろうと見ていると「送るよ」と言い出す。 「え、いいよ。大丈夫だよ」 慌てるだったが、「よろしくな、花形」と藤真たちが口々に言う。 本人の意向を無視して話を進めるのは、このバスケ部の方針か何かだろうか...? そんな事を思いながら手を止めていると花形がを待って立っている。 「また勉強見てくれよ」 など口々に言われては困惑気味に頷いた。 店を後にして、駅へと向かう。 突然が「あ、」と足を止めた。 倣って花形も足を止めて見下ろす。忘れ物だろうか。 「私、自分の払ってない。明日払いに行かないと。誰に払ったら良いのかな?」 ファミレスで勉強と言うことで色々飲んだり食べたりはした。 何だ、そんなことかと思いながら花形が笑って口を開く。 「まあ、藤真の奢りって事で。いいんじゃないか?授業料だ」 「でも」というに「気にするな」と花形が言う。 きっとの分は皆できちんと割るに違いない。勿論、その人数には自分も入っている。 「今日はありがとうな」 不意に花形に言われては苦笑いを浮かべた。 「毎回アレって大変だね」 「まあ、慣れたよ。良かったら、また付き合ってくれ」 花形にそういわれては少し悩んで 「本当に『偶に』、だったら。うん...」 と曖昧に答える。 その様子に花形は笑って「ありがとう」と返した。 |
桜風
08.7.2
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