お昼時間





その日の昼食を食べるため、は学食へと向かった。

「席、取っておくよ〜」

友人にそう声をかけられは手を上げながら「ありがとう」と返して売店へと向かう。

いつもは教室で食べるのだが、今日は友人が学食を利用するとのことで、食べる場所を教室から学食へと変更したのだ。

ちなみに、はお弁当持参である。


そんなが向かったのは売店の中でも、パン売り場ではなく、自動販売機だ。

コインを入れてボタンを押そうとし、「あ、」と呟く。

お目当てのものが売り切れになっていた。

しまった、と振り返るとパン売り場はごった返している。

、ほら」

はるか頭上から声が聞こえて見上げると花形が立っていた。

その手には今購入しようとしていたパックの牛乳。

「えーと...」

どう反応して良いのか困っていると

「俺が向こうの買うから。これ、やるよ」

そう言われた。

「え、でも。頑張れるよ?」

自動販売機から戻したコインを握り締めたがいう。

「ムリムリ。だったらあそこに突撃って吹っ飛ばされるのがオチだぜ?」

そう言ったのは花形の隣に立っている藤真だ。

確かにその通りだが、からかいの要素を多く含んだその言葉には膨れる。

「分からないでしょ!」

「いや、分かってるから。だから、花形だってこうしてお前に牛乳を進呈してるんだろうが」

笑いながらいう藤真にはムキになり

「花形くん。それは花形くんが飲んじゃって!」

「おい、...」と止めようとした花形を無視して揉みくちゃにされているその中へと突進してみた。


しかし、5分後には藤真が指摘したとおり、吹っ飛ばされた挙句によれよれになっているがいた。

「大丈夫か、

花形が心配そうに声を掛ける。

「ほーらな。だから、花形のを大人しく受けと手とけっていったんだよ」

そう言いながら藤真は花形の手にあった、だいぶ温くなった牛乳をに渡す。

「第一、花形はもう十分デカイ。今日牛乳飲めなかったからと言って嘆くことはない。お前と違ってな」

そう笑いながら藤真は言って、「行こうぜ」と花形を誘って学食を後にした。



手にしている牛乳に目を落としてはふと思い出した。


去年も似たようなことがあった。

そのときはまだ5月だったか。学年が上がって間もない頃。藤真と同じクラスになって、すぐに背が小さいことでからかわれた。

彼は悪気があったわけではないが、気にしていることでからかわれては藤真にあまり良い印象を持っていなかった。

お弁当を食べながら牛乳を飲んでいると友人たちからは、ちょっと理解出来ないと言った表情をされていたが、それでも朝と昼の牛乳は欠かしていない。

可能性はまだ残っているのだから。

「小さいと可愛いって得でしょう?」

友人の一人が言った。

それは、それなりに背がある人の言い分だと思う。

そう思って同意をせずに毎日牛乳を飲み続けた。


そんな中、学食での牛乳争奪戦に負けたのだ。

諦めて教室に帰ろうとしたら「」と声をかけられた。

それが藤真だと分かるとは自然と不機嫌な表情となる。

「お前、牛乳争奪戦に負けたのか?」

「そうよ!だから?!」

小さくて悪かったな、と思いながらそう言った。

「小さいんだから無理すんなって」

そう言って笑った藤真に文句を言い返そうと思ったが、そのとき藤真は手にしていたパックの牛乳をに渡す。

「何、これ...」

「牛乳。これ、飲みたいんだろう?やるよ」

「でも、藤真のじゃないの?」

「いや、チームメイトの。あいつムカつくくらいでかいから1回くらい牛乳を飲まなくっても大丈夫だし」

そんなさらりと言う。

「え、でも...」

「いいから。は背ぇ伸ばすんだろう」

そう言ってワシワシとの頭を撫でて別の適当なドリンクを購入して藤真は売店から居なくなった。



もしかして、あの時貰った牛乳も花形のだったのだろうか。

確か、「花形はムカつくくらいでかい」と去年から藤真は何回か言っていた。

ー?」

友人に名前を呼ばれた。

あまりに遅いので気になって探しに来てくれたようだ。

「ごめん!」と返しながら彼女のもとへと走る。

昼休憩が終わって教室に戻ったときにでも聞いてみよう。そして、それが花形だったら1年以上経ったけどお礼を言おう。そういえば、これのお礼も言い損ねている。

どのみちお礼は言わなければならないのだ。









桜風
08.11.19


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