文化祭 ―前編―





廊下を歩いているとふと視界にが入った。

どうやら、外部の人に道を聞かれているようだ。

今は文化祭で、外部の人が多くこの翔陽高校にもやってきている。

に声をかけていた人たちはしきりに恐縮したようで、彼女も困ったように手を振っている。

「ありゃ、制服を着てたにも拘わらず、この学校の生徒だと思われなかったんだろうな」

一緒に歩いていた藤真が呟いた。

3年ともなればクラスで模擬店や展示をすることもなく、サボる人も少なくないが、翔陽高校のバスケ部はお祭大好き男の藤真を始めとして、皆が皆、文化祭を楽しみにしていた。

後輩のいるクラスの模擬店を冷やかしたり、展示を眺めたり、体育館での軽音部のパフォーマンスを見たりとかなり楽しんでいた。

そして、生来の性格、真面目さからかやはり文化祭に出席していたを見つけたのだ。


と会話をしていた外部の人たちが自分たちの傍を通り抜けていく。

「小さいから...」

「こっちは悪くないわよ」

そんな会話だ。

藤真の推測はどうやらあたりだったようだ。

確かに、は小さい。

本人曰く、「身長は150センチ」らしいのだが、それは目指している数字で実際はそこまで届いていないと思われる。

「まあ、は小さいもんなぁ...」

長谷川が苦笑する。

苦笑するが、少し、いい気はしないという表情で、藤真に至ってはかなり不機嫌だ。

自分がからかうのは構わないが、他人がからかうのは面白くないと言う俺様的な理屈でかなりのご立腹のようだ。

!」

名前を呼ばれて振り返ったは苦笑した。

それもそのはず。

自分を呼んだ人たちはこの学校で一番背の高い集団で、そして、彼らは何かしらの食べ物を手にしている。

「やっぱ、それくらい食べなきゃダメなんだねぇ」

笑って言うに「も食べるか?」と花形が言う。

花形が持っているのはたこ焼きだ。別けることができるもので誘うには丁度いい。

「ううん、さっき学食でうどん食べたから」

昼過ぎの今の時間だと、昼食を食べ終わってそう間を置いていないことになる。

「そうか」と花形が納得すると手に持っているパックからたこ焼きが2つ消えた。

「あっつ...」

はふはふと藤真が口の中の熱を冷ますように顔を上に向けて口を開閉している。

そして、もうひとつはどうやら高野の口の中に放り込まれたらしい。彼もまた藤真と同じように口の中を冷ましている。


は一人なのか?」

永野に問われて「うん、みんなサボったみたい」とは笑う。

はサボんないのか?」

「だって、登校しちゃったもん」

藤真の言葉には笑いながら返した。

「お前さー、こんな祭の中学食はないだろう。しかも、うどんって」

「いいじゃない、好きなんだから」

そう返すは少し拗ねたようである。

「よし、。一緒に回るか」

藤真の提案には一瞬驚き、苦笑しながら首を横に振る。

「藤真くんたちと一緒に居たら目立って仕方ないもん」

「ま、俺は誰もが注目するヒーローだからな」

「色々と性格に問題あるけどね」

が返すと藤真は「何をー!」とムキになる振りをする。

「それに、そろそろ帰ろうって思ってたし」

「後夜祭に出ないのか?」

「...藤真くんたちって、そこまで残る気なの?!」

後夜祭ともなれば、だいたい4時ぐらいに文化祭の終了のアナウンスがあって、それから片付けを済ませて7時ごろから始まる。

つまり、まだ6時間以上学校内に居ると言うことだ。

「まあ、バスケ部の体育館は今回使われなかったから文化祭に飽きたら部活をして後夜祭までの時間を過ごすつもりだけど」

花形に言われて、そうかとは納得した。

「あ、じゃあ残る」

突然のの言葉に花形は首を傾げ、「そうか、俺様と一緒に後夜祭を楽しみたいか」と藤真が納得している。

そんな藤真を見るの視線は「どうでもいいや」という彼女の気持ちを雄弁に語っている。

それに気付かない藤真は、その後も暫くしきりに納得したように頷いていた。









桜風
11.10.5


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