drops 2





雨足は一向に弱まらない。

しかし、先ほど借りた傘のお陰で多少は過ごしやすい。

既に下着も雨に濡れて体に貼り付いて気持ち悪いが、それでも濡れ続けるよりはまだマシだ。

は立ち上がり、公園の外に出る。


の家は公園の近くにある。

徒歩5分程度だ。

だから、先ほどこの傘を貸してくれた仙道という男の子の通う学校はよく知っている。

自分は別の学校に通っているが、陵南はそれなりに自分にとっても馴染みのある学校だ。



「ただいま」と家に帰って声を出す。

家の中に人の気配はあるが、誰も声を返さない。

これがの家では普通だ。

家族が居るのに、独りである。

仙道に借りた傘は玄関先で水を切れるだけ切って家の中に持ちこんだ。

部屋の中にビニール袋を数枚敷いてその上に新聞紙を敷く。

傘を開いて、エアコンの除湿をつけた。

これで明日には乾くだろうか...

学習机の中からバランス栄養食を取り出して、それを口に運ぶ。

雨が降らなければコンビニにでも行ったのだが、さすがにこのずぶ濡れ状態でコンビニの中には入れまい。

諦めて非常食と位置づけているそれを食べることにしたのだ。

が帰ってから家のドアが開く音が3回した。

おそらく、今は家の中に誰もいないのだろう。

部屋を出て風呂に向かう。

家に帰ってから体は拭いたが、やはり冷えている。

蒸し蒸しと熱い日々が続いており、今日もその例外ではないが、除湿の効いた部屋の中に居れば体だって冷える。

風呂に湯を溜めて湯船に浸かった。

「ふぁ〜...」

思わず声が漏れる。

「ああー」とかいうオヤジ臭い声ではなかったことに何となく安心してゆっくりと湯船に浸かった。

「早く返さなきゃ、だよね」

仙道は体が大きい。だから、傘も大きかった。

逆に、普通のコンビニで売っている傘とかだったらきっと彼の体からしたら小さいだろう。

まだまだ雨の日が続くだろうからあの傘は彼には必要だろうし、早く返さなくてはこちらも返しづらくなる。

しかし、仙道という男は返す返すも不思議な人だった。

雨に濡れている人を見て態々声をかけて、しかも自分が濡れるのに傘を貸すだなんて...

「奇特だなぁ」とは声を漏らした。


の家族はそれぞれがそれぞれで生活している。

勿論、生活費も全部稼いで来い、とは言わない。はまだしがない高校生だ。

だが、家族でどこかに出かけるとか、一緒に食事をするとかがない。

家族らしいところが無いのだ。

だからなのか、も家族の事が苦手である。

両親は忙しく、姉も年が離れている。

今日も、両親はそれぞれの仕事の関係で外に出たのだろうし、姉は基本的に夜は友人などと外食すると決めているようで、結局は独りでの食事となるのだ。

親からは食費とお小遣いはもらえている。

それで充分ではないか、という意見もあるだろうが、は何となくそれに素直に頷けない。

「傘、乾くかな...」

肩まで浸かっていたが、そろそろ湯あたりしそうなので湯船から出ることにした。









桜風
11.7.13


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