drops 3





昨日借りた傘はそのまま学校に持って行き、学校帰りに陵南高校に寄ってみた。

たしか、体育館と言っていたはず...

やはり違う制服の生徒が構内を歩いていると気になるようで、視線を感じる。

しかし、ここまで来て回れ右をするのもどうかと思う。まず、この学校に私服で入れるかどうかもわからないのに、服を着替えてきても意味がなかったら手間をかけただけ無駄だったことになる。


「何をしとるかーーーー!!」

体育館の入り口を覗き込んだ瞬間そんな怒声が耳に届き、「ごめんなさい!」とは反射で謝った。

「...ん?」

体育館の外から女の子の謝罪の声が聞こえた。

田岡は不思議に思って体育館のドアから外を覗いてみた。

男物の傘を抱きしめて肩を竦めて目を閉じている少女が居た。制服を見ればこの近辺では有名な、しかも偏差値もそこそこ高いお嬢様高校のものだ。

「君、どうしたんだい?」

怯えているようなので、なるべく優しい声音で声をかけた。

彼女は恐る恐る目を開き、「あの、えっと。仙道彰って人は此処に居ますか?」と聞いてきた。

何だ、仙道のファンか。

「今は練習中だから休憩まで待ちなさい」と言ってまた体育館の中に入っていった。

なるほど、練習中に体育館の中を覗いてはいけなかったのか。

言われたとおりは入り口の傍に立ち体育館に背を向けて待つことにした。


「休憩!」という声が聞こえた。

振り返るとワラワラと背の高い集団が出てきた。

どうしよう、怖いかも...

昨日の仙道ひとりでも結構怖かった。

そうか、バスケットをしている人たちなんだ。

ふと、越野が体育館入り口脇に立っているに気がついた。

「あれ...」

「こ、こんにちは」とは挨拶をする。

「どうしたの。あ、それって仙道の?ちょっと待ってな。仙道ーーーー!」

の持っている傘を見た越野が気付き、体育館の中に居る仙道に声をかけた。

だから仙道は昨日あの雨の中公園に傘を置いて戻ってきたんだな、と彼は納得した。

まあ、その後誰もずぶ濡れの仙道を傘に入れてやらなかったが...

「何?って、あ...もう持ってきてくれたんだ?」

体育館の入り口脇に佇んでいるを見つけて仙道は笑顔を見せた。

「あ、はい。ありがとうございました」

そう言って彼女は仙道に傘を差し出す。

「律儀だなぁ...そだ、この後時間ある?」

「へ?」

は目を丸くした。

「お前、学校でナンパするなよ」

呆れたように言うチームメイトを軽くいなして「どう?」と仙道が確認する。

まあ、暇だし。どうせ夕飯は一人で食べるし、お礼をした方が良いんだろうし...

そんなことを思っては頷いた。

「おいおい」と仙道を茶化していた越野が彼女の反応に驚く。

「じゃあ、待ってて」

「あ、けど。待つのは図書館で待ってても良い?」

「図書館?」

「近くにある、公立の?」

何故越野が会話に入ってくる...

仙道はそう思いつつもの様子を見ていると「はい」と頷く。

「そこ、平日は7時まで開いてるし」

「ウチの部活がその時間くらいに終わるから、その30分後に..公園近くにファミレスあったよね。あそこで待ち合わせしようか。時間大丈夫?」

仙道が確認すると彼女は頷く。

「じゃ、そういうことで」

そう言って仙道は体育館外の水場に向かっていった。

「あの、お邪魔しました」

体育館の中に居る田岡に声をかけたは周囲に居るバスケ部員達にも頭を下げて遠ざかっていく。

「誰だ?」

田岡は傍に居た部員に声をかけた。

あんな子と仙道がどうやって知り合ったか甚だ疑問だといいたいのだ。

声を掛けられた部員は「さあ?」と首を傾げ、彼も不思議そうな表情をしていた。









桜風
11.7.20


ブラウザバックでお戻りください