drops 9





暫く泣いていたが落ち着いたようで、仙道は立ち上がる。

不安そうにが見上げてきた。

捨てられた子犬みたいだ、と思いながら「ちょっと待ってて。荷物見ててね」と言って駆けていった。

言われたとおり、は仙道の荷物を大切に抱えて安全を確保した。


仙道は近くのコンビニに行き、サンドイッチやおにぎりを購入して戻ってきた。

公園のベンチに座るが大切そうに自分の荷物を抱えているのを見て苦笑した。

さん」

顔を上げたの目の前に近くのコンビニの袋が突きつけられた。

驚いてのけぞったに「ごめんごめん」と仙道が笑う。

「なに、これ」

「好きなのあるかな。おにぎりとか、サンドイッチ。あ、デザートも買ってきたよ。コーヒーも入ってる」

「えっと...」と状況を整理しようとしているに「夕飯」と仙道が笑う。

「外で食べると遠足気分で楽しそうじゃない?」

「えと、うん。そうかも...暗くなるけど」

「夏だからまだまだ時間はあるって」

そういいながら仙道はとの間に少し距離を開けてそこに購入してきたものをドバーッと広げた。いくつかベンチから落ちそうになっては慌てて手を伸ばす。

「ナイスキャッチ」と仙道が笑い、「もうちょっと優しく広げたらどうですか?」と文句を言う。

クスリと笑った仙道に「なに?」と返すと「少しは元気になった?ご飯を見て」と言われてグッと詰まる。

しかし、気を取り直したように「ありがとう」と礼を口にして「どれを食べてもいいの?」と食い気に走ることにした。

「いいよ、どれでも。何なら全部」

「ムリ」

仙道の言葉には間髪入れずに返す。

どちらともなく噴出して、やがて笑い始める。

「ありがとう」と改めては礼を言い、「俺もさんに会いたかったし」と仙道がさらりと返した。

「あら、ありがとう」

「そこ、赤くなるところじゃないかなー」

指摘されては肩を竦める。


2人で笑いあいながらご飯を食べる。とりあえずお互いの胃が落ち着いて食後のコーヒーを飲んだ。

既に日が沈んで暗くなっている。外灯の明かりがベンチを照らす。

「で、何があったの?」

仙道が切り出した。

は苦笑して先ほどの親に言われたことを話す。自分の気持ちも。

「だったら、それってチャンスじゃないのかな?」

いずれは海外に行って、という話もした。だから仙道はそういった。

たぶん、冷静に客観的に考えたらそうなのだろうとは思う。だが、客観的に、冷静に考えられないからこうして悔しいのだ。

さんは、何が気に入らないの?」

「だから言ったと思うけど。選択肢がないの」

「それは、仕方ないと思うけど...未成年のさんが独りでこっちに住めるはずがないし。他に方法あるの?」

親戚づきあいとかないから親戚のところに置いてもらうことは出来ない。

かといって、あの姉に面倒を見てもらえるとは思えない。

の場合は示せる選択肢が元々ないのだ。

彼女が既に大学進学を考えず、就職活動をしているなら話は別だが、大学には行きたいと考えているのだ。

「夢を諦めて親に反抗するか。それとも、悔しいけど親に従って自分の夢を掴むか。一応、その選択肢は示されてるんじゃないかな?」

その通りかも、とは思った。

思ったが、すんなり納得できない。否、『したくない』のだ。

そんなところも子供である。

反論できずに俯くの頭を仙道は再び撫でた。

さんはいつ向こうに行くの?」

「たぶん、8月に入ってから。品行方正成績優秀のわたしは一応、既に卒業を約束されてるからもう卒業まで帰ってくることはないかもしれない」

今さりげなく結構自分を褒めたな、と思いながら仙道は「じゃあさ」と言った。

仙道の提案には目を丸くしてそして頷く。

「よし。俺、凄く楽しみだな」

ニコニコと笑って言う仙道の笑顔につられても笑った。

「その前に、定期テストだね」

のその一言に仙道は遠い目をした。

ああ、そうか。勉強はあまり好きじゃないんだ...

仙道の新しい一面には噴出し、仙道は深く溜息を吐いた。









桜風
11.8.31


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