drops 11





一応日焼け対策は講じている。

講じているが...

「日焼け、するよね」ポツリと呟くと「たぶんね」と返ってくる。

が日焼けを気にしていることに気付かない仙道は軽く頷いた。

くそう、それならそうと早く言えばいいのに...

は心の中で毒づいた。

だったらもうちょっと防御力を上げて挑戦したのに。

テクテクと仙道と並んで歩く。

車道と歩道の区別の無い道を歩いているとふと気が付く。

どうやら仙道は車道側を歩いてくれているようだ。

まあ、これだけ背が高いのだから、遠くからでも人が歩いているとドライバーに気付いてもらえるだろう。


「暑い...」

が言うと「夏だからね」と返された。

「ところで、今は何が釣れるんですか?」

「んー、そうだな」

考えながら仙道が魚の名前を口にする。

聞いたことがある名前ばかりだ。

「本当に釣れるの?」

「俺、良く釣りに行ってるからね」

「キャッチアンドリリース?」

「そんな時もあるし、家にもって帰ってばあちゃんに捌いてもらうときがある」

なるほど、とは納得した。

自分の親が魚を捌けるかどうかは甚だ疑問であり、自分も学校で習ったが自信がない。

釣りをする人は魚を捌けるのだろうなと何となく思っていたが、それでも失礼ながら仙道にその才能があるとは思えなかった。

なるほど、お祖母さんなら魚が捌けても全く不思議ではない。

暫く歩くと「そこだよ」と仙道が指差した。

その先にはたくさんの釣竿が見える。

「あんなの人が居て、糸が絡んだりしないの?」

「偶に絡む」

苦笑しながら仙道が返す。

なるほど、絡むのか...

それはそうと...

は仙道が持ってくれている鞄の中身が気になった。

炎天下でどれだけ持つだろうか...

食べられなかったら魚にあげると言う意味で海に放ってもいいのかな??

そんなことを考えていると「ねえ、さん」と名前を呼ばれて見上げる。

「なに?」

「これ、お弁当?」

仙道はの鞄を軽く掲げた。

「う..ん」とぎこちなく頷くに仙道が笑顔を見せる。

「ホント?!じゃあ、釣りの前に食べていいかな?俺、朝飯抜いてきてるんだ」

仙道の言葉には目を丸くした。

「いいけど。なんで朝抜きとか...」

「寝坊」

「せっかくの初デートに」とが少し非難するように言う。『デート』という定義をつけて出かけているわけではないが、おそらくカテゴライズすれば『デート』で間違いないと思う。

「うん、だから昨日中々寝付けなくてね。気が付いたらもう家を出なきゃいけない時間だったってワケ」

肩を竦めて仙道が言う。

『デート』を否定されなくて、の心臓は一度跳ねた。

「あ、けど。さんは食べてきたんだよね?」

「うん。でも、高校男子の胃袋を充分に発揮してくれたらたぶん、なくなるくらいの量かも...」

が言うと「じゃあ、先に日陰に行ってブランチしてから行こうか」と仙道は歩道の無い海沿いの道をの手を引いて渡った。


臨海公園、というほどのオシャレさを持ち合わせていない公園に辿り着く。

木陰を見つけてそこに仙道は腰を下ろした。

さん、此処に座る?」

「それって、セクハラというのをご存知かしら?」

半眼になって言うに仙道は笑う。

仙道が『此処』と言ってぽんぽんと叩いたのは自分の膝だった。

そのままが乗ったら乗ったで困ることになるのに、ちょっとからかいたくなったのだ。

の反応も想像したとおりのクールなもので可笑しくなる。

弁当を広げた仙道は感嘆の溜息を吐いた。

「お口に合うかどうか分かりませんけど」

の言葉が合図となり「いただきます」と仙道は手を合わせた。

「いいな、カラフルな弁当」

「どういうこと?」

が首を傾げる。

「ばあちゃんが作るご飯ってやっぱり煮物とか多いんだよね。全体的に茶色というか...」

なるほど、とは納得した。

一応、これの弁当は色彩を考えて作ったのでカラフルになっている。

しかし、やはり高校男子の胃袋は未知なる領域だった。

あっという間に平らげて「あ、」と仙道が声を漏らす。

「ごめん、さんのも全部食った」

「まあ、美味しそうに召し上がっていただいたので、それで充分。寧ろ、見事な食べっぷりに感心しました。良いものを見たわ...」

感心していう

「こんなもんでよかったら毎日見せてあげるよ」

と仙道が笑いながら答えた。









桜風
11.9.14


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