| が家に帰ると珍しく姉が居た。 しかも、エプロン姿だ。 「ただいま」と声をかけると振り返った姉があんぐり口をあけた。 「あんた、日焼け止めは?!」 「一応塗ってたけど、役に立たなかったみたい」 「何処にいたのよ」 「...釣り」 不本意だが答えると姉は天を仰いだ。 「お・ば・か!」 ご丁寧にも一文字ずつ態々区切って言う。 「ちょっと着替えて戻っておいで」 「焦げ臭いよ」 姉にそう一言言っては自室に戻り、姉に言われたとおりリビングに戻った。 焦げ臭いその原因は粉ふき芋だったらしい。 姉が鍋と格闘しているのを見ながらリビングのソファに腰を下ろした。 「何してるの?」 「夕飯作ってるの」 「...なんで?!」 ビックリしてが問うと 「アンタが朝、お弁当を作ってたでしょう?久しぶりに作ってもいいかなって思ったの。あんたにもおすそ分けしたげる」 と姉が少し照れくさそうに言う。 「うん、ありがとう...」 先ほど帰りに仙道と食事を済ませて帰ったがいえない。 まあ、いっぱいいっぱい食べているわけではないので何とかなるだろう。 鍋との格闘を諦めた姉が流しにそれを置いて一旦リビングを出た。 そして戻ってきたときには籠を持っていた。 籠の中には色んなビンが入っている。 「なに、それ」 「ちょおっと若いからっていい気になってると、あっという間だからね」 そう言って姉は籠の中のビンを全部リビングのテーブルの上に置いた。 何がどう違うのかさっぱり分からない。 「まあ、一応これがいいかな...」 そういいながらビンのふたを開けて「ほら、手を出しな」と言う。 両手を出したら「右だけでいいの」と言われた。 手の上に液体をだされ、「こうする」と姉が手本を見せる。 見せられたとおりにやってみた。 とりあえず、気持ち良い。 「きもちいい」と頬に手をあてながら言うと「それ、要は火傷だからね」と呆れた口調で姉が言う。 つまり、基礎化粧を教えてくれているようだ。 とりあえず、どういう肌質か分からないので敏感肌用のものを使ってのそれだった。 「向こうに行く前に探しとく?」 素っ気無く姉が言う。 「うーん、探すの大変じゃない?」 「付き合ってあげるって言ってんの」 「あ、うん...じゃあ、お願い」 不思議だな、と思う。 家族が離れることが決まって何だか近付いた。 今までいつでも会えるとかそいういうのがあったから疎遠だったのだろうか。 数日前、悔し泣きした自分が今となると不思議だった。 8月に入ってからは引越しの準備で忙しかった。 きちんとお礼とかお別れとか言いたくて時間を作ろうとしたが、なにぶん、これまでコミュニケーションを図っていなかった両親とコミュニケーションを取らなくてはならなくなり、それに意外と手間取っていた。 同じ日本人でしかも家族なのに... 全く我が家はどうなっているのだ。 そう零すと両親と姉から「アンタもだ」と返された。 出発の前日に何とか時間を作って陵南高校へ足を運んでみた。 体育会系の部活、しかも『強豪』らしい陵南はきっと今日も部活をしている。 そう思って覗いてみたのだが、そこには仙道の姿は無かった。 「あれ?」と数ヶ月前に声をかけてきた男子、越野がの存在に気付いて近付いてくる。 「こんにちは」と挨拶をすると「ちは」と返された。 「仙道?」 「はい」 「あー...聞いてないの?」 何の話だろう? 首を傾げると越野は少し困った表情を見せた。 「あいつ、今合宿中なんだ」 「合宿、ですか?」 では、何故彼らはこうして体育館に居るのだろうか。 そうか、レギュラーとそうでない人... そう思ったが目の前の越野は確か自分が見に行った試合にも出ていたのできっとレギュラーだ。 「国体のね」 と越野が言う。 「国体?国体って、国民体育大会の、国体..ですか?」 「それ」 指差して越野が頷く。 しかし、ああいうものに出るのは優勝校とかそういうのではないだろうか... 残念ながら陵南はインターハイ予選で敗退している。優勝はしていない。 「ま、色々とあって、あいつは選ばれたんだよ」 「そうですか...」 なんてことだ。自分はその試合を見られないではないか... しょんぼりしているを見て勘違いしたらしい越野は、「君くらい可愛いときっと次もあるって」と慰める。 仙道に振られたと思ったらしい。 しかし、はまた首を傾げた。 可愛いと次の試合も見れるってどういうことだろう... の中では越野は不思議な人と位置づけられてしまった。 |
桜風
11.9.21
ブラウザバックでお戻りください