drops 13





最後の制服を着ては帰路につく。

久しぶりの日本だ。

昨日帰国して、本日の卒業式を迎えた。


結局仙道に会えないまま海外での生活を向かえて、あれから半年経っている。

あっという間だった。

毎日が慣れない習慣や言葉に苦労しながら一生懸命生活した。

生活するのに『一生懸命』が必要だったのは中々貴重な経験だと思う。

『チャンス』と仙道が言ったとおり、今ではも素直にそう思っている。

卒業式は無事終わり、クラスメイトと一旦家に帰ってから打ち上げでもしようと話をして正門の前で別れた。

最後の制服だが、この制服は有名すぎてあまり外出に向かないのだ。

着替えてから、ということは色々と羽目を外す気満々なのだなとクラスメイトのこの後の行動を想像して苦笑を漏らす。


ポツポツと雨が落ちてきた。

鞄から慌てて折り畳み傘を出す。

小ぶりなその傘を広げて歩き、公園の前に差し掛かった。

ベンチに誰かが座っている。

はそちらに足を向けた。

「何をしてるの?」

傘を差し掛けて彼に言う。

彼はゆっくりとこちらを見上げて微笑んだ。

「人を待ってたんだ」

「雨が降ってきたよ?大丈夫?その人、ちゃんと来てくれる??」

スカートの裾を気にしながらもベンチの前にしゃがむ。

そんなを見下ろして「うん、来てくれた」と頷く。

は目を丸くして周囲を見渡す。

「あ、もう帰っちゃったの?」

誰も居ない。自分以外。

「今、目の前に居る」

は目を丸くし、「え、何か約束してたっけ?!え、ごめん仙道くん」と慌てた。

「ううん、約束はしてない。俺が、さんに会いたいって思ってただけだから」

ほっと息と吐き安心したは「ん?!」と声を上げる。

「今、何ていった?」

さんが好きだって言ったんだ」

の手から傘がするりと落ちる。本降りに変わった雨に打たれながらも呆然とした。

「そんなの今までいちども」

「うん、言わなかった。けど、今日会えたら言おうと思ってた」

呆然と仙道の顔を見上げるに仙道は傘を拾って差しかける。

「合宿から帰ったら越野からさんが来たって聞いて凄く残念だった。合宿に呼ばれたのは嬉しかったし、殊勝なことを言えば、勉強になったけど。けど、さんに会えなかったことが悔しくてそれが全てになった。
居心地良かったんだ、さんとの恋人ではない曖昧な関係が。けど、いざ会えなくなるとそれがどうにももどかしくて、ね。だから、次に会ったらちゃんと言おうって思ってたんだ」


突然の告白にはちょっと思考が止まった。

そして、頭の中を整理してみることにした。

自分にとっての仙道の存在とか、自分の仙道に向けている気持ちとか。

色々と考えたは、コクリと頷いてみる。

その頷きが何を意味するか分からない仙道は「さん?」と首を傾げて声を掛ける。

「よし、わかった!」

突然立ち上がったを呆然と見上げる仙道に彼女は「保留」と言い放った。

「へ?」

「わたし、仙道くんのことは好きだけど色々と考えるに、時間が足りないから後でゆっくり考えることにした!」

高らかな宣言。

「えっと...」

別に返事がほしいわけではない。いや、ほしいし出来れば恋人という関係になれるととても嬉しいが...

呆然とする仙道を見ては「えへへ」と笑った。

その笑顔を見て仙道も思わず苦笑する。

「ま、雨の日に俺がさんを拾ったのは運命だったってことで」

そういえば、仙道と初めて出会ったのも土砂降りの雨の日で、あの時も家の事がいやだったような気がする。

それが今ではきちんと『家族』と思える関係になった。

「仙道くんは魔法使いだね」

彼に出会ってから色々な環境が変わった。それは間違いなく良い方に。

の言葉に少し驚いた表情を見せた仙道は人差し指を口に当てて「内緒だよ」と悪戯っぽく笑った。









桜風
11.9.28


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