| 食堂で一緒に、と誘ったが彼女はそれに応じず、人がごった返す購買に向かっていた。 「って面白いな」 藤真が言う。 まあ、あれだけ軽口の応酬が出来れば凄いと思う。 何より、初対面のはずだったが高野のある意味失礼な言葉に冗談で応じ、そのまま会話を続けた。 藤真のチャックも冷静に指摘できる。 は、彼が気に入りそうな要素を先ほどの少しの会話で全て押さえた。 「なあ、藤真」と声をかけてきた人物が居た。 見たことはあるが、名前は知らない。 話を聞いているとどうやら藤真のクラスメイトらしい。 「お前、と知り合いなの?」 「?さっき知り合ったけど?」 咥え箸をしながら藤真が言う。 「あいつには近付かない方が良いぞ」とおそらく本人は凄く親切心を出して言ったことだろう。 宇宙人に攫われた説は彼女が吹聴したものだと彼が言う。 真実を隠すために。 「真実?」と藤真が問い返すと彼は声を潜めて言う。 その内容を聞いた藤真は「ふーん」と言った。 あ、怒った... 3年間バスケ部に所属している花形たちはすぐに藤真の怒りを悟った。 もし、仮にそれが真実であったとしてもそれを他人に吹聴するのはどうかと思う。 おそらく、本人から聞いても「ふーん、そうなんだー」程度の内容だ。 少なくとも、自分達には。 「ふーん、って。お前...」 眉間に皺を寄せるクラスメイトに「や、うん。あんまし興味なかったから」と藤真が返す。 面白くなさそうに彼は去っていった。 「いいのかよ」と永野が言う。 「ん?」 咥え箸続行中である。 「クラスメイトだろう?」 「クラスメイト全員と良好な関係を築けるほどオレは器用じゃない」 藤真の返事に肩を竦めて「まあ、そうかもな」と永野は頷いた。 教室に戻るとはひとりぽつんと自分の席でもそもそとパンを頬張っていた。 周囲はやはり彼女を遠巻きに見ている。 おそらく、先ほど食堂で聞いた彼女の噂話のせいなのだろう。 「それだけで足りるのか?」 自分の席に着きながら花形が声をかける。 「ガフッ」と彼女は咽た。 「あ、おい。悪い」と花形は慌てて彼女の背を軽く叩いたが、どの程度の力加減をしたら大丈夫なのかがわからないのでおっかなびっくりだ。 彼女は咽ながらも軽く手を上げて「大丈夫」と示す。 一頻り咽た後 「声をかける前には、一声かけて」 と訴える。 どうやって...? 花形は首を傾げてその方法を考えてみたが、思いつかない。 そんな花形を見て彼女は苦笑した。 「『無理だ』って返すところでしょう?」 「ああ、そうか。やっぱり無理だよな」 何か方法があるか検討してみてたんだ、と続けると彼女は目を丸くしてそして苦笑した。 「花形くんって真面目ね」 「よりは、な」 苦笑して返すと「まあ!」と大げさに驚いたような抗議の意味をこめたような『まあ』が返って来た。 今日初めて会話しているが、彼女の反応は時々年相応とはいえない、ちょっと年齢が高めのような気がする。 放課後になり、部活に向かう。 「部活?沢山部員が入るといいね」 が声をかけると 「多すぎても大変なんだけどな」 と返した花形はバッグを肩に掛けて「じゃあ、また明日な」と言って教室を後にした。 |
桜風
11.11.2
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