晴れたらいいね 4





の言ったとおり、新入部員は沢山入った。

入ったが、花形の言ったとおり面倒なところもある。

「相変わらずマネージャーは入らないな」

部室で入部希望届けを整理している花形に向かって藤真が言う。

「だな」と応じる花形は少し不思議に思っていた。

これは、部長の仕事で。つまりはキャプテンで監督で部長の藤真の仕事だ。

「ん、これ」と当たり前のように渡されて当たり前のように自分は整理を始めた。

「そろそろ入部希望は締め切ったほうが良いだろうな」

「どんだけ残るかな?」

「海南ほど脱落者は出ないだろう」

噂で聞いたことはある。海南は毎年多くの生徒が入部し、そして半年後には半分以下になり、1年が終わる頃には更にその半分くらいまで減るらしい。

「む...」

藤真が少し機嫌悪そうになった。

「オレの練習は甘いか...」

「毎年、梅雨までは体育館裏の側溝が酷いことになっているがな」

溜息混じりに花形が言う。

「まあ、そうだな。マネージャー以外は締め切ろう。多すぎても邪魔だし。明日顧問に話しておくよ」

「生徒会には俺が言っておこう」

掲示板に部員の募集を締め切った旨を掲示してもらうのだ。

片づけを済ませて施錠して部室を後にした。

「何でマネージャーが入らないんだろうな」

藤真が零す。

「あれだけ部員が居ると、想像するまでもなく大変そうなのが良く分かるからじゃないのか?」

「オレの営業スマイルも効かないってのが腑に落ちない」

「...そうだな」

わかっててアレか...

溜息をグッと我慢して花形は頷いた。

去年、クラスの女子が言っていたが

「藤真は深く知ったらいろいろと残念なところが増えてくるけど、見た目だけは良いから。結婚詐欺師に向いてるかもね」

だそうだ。

確かに、猫を被った藤真にコロリとやられる女子も少なくないだろう。

「花形」

「何だ?」

考えを読まれたかと思いながらも普段通りに返す。

「お前が誑し込め」

「却下、だ」

「じゃあ、誑かせ」

「同じ意味だろう。というか、そんなので入っても結局続かなきゃ意味がない」

正論にちょっとムカついたらしい藤真は肩に掛けているバッグをブンと振って花形の尻にヒットさせた。



チリンチリンと自転車のベルが聞こえた。

振り返ると立ち漕ぎをしているの姿があった。結構な暴走自転車だ。

花形たちに追いつくと自転車から降りて押しながら一緒に歩く。

「どうしたの、2人して。あ、デート?お邪魔しましたー」

そう言ってサドルに跨ろうとしたを「ちょっとまて」と藤真が止める。

「何が悲しくて素敵なオレが、こののっぽメガネとデートをせにゃならん」

「お前も大概失礼だぞ」

藤真の言葉に花形が突っ込みをいれる。

そんなに2人の様子に「あはは」とが笑う。

は家が近いのか?」

「うん、比較的」

「何だってこの時間に出歩いてんだ?」

藤真が問うと

「牛乳が切れたから」

と返された。

だからコンビニに向かっているとのこと。

「コンビニか...よし、奢れ」

「やなこった」

藤真の言葉に間髪入れずにが返す。

「何だよー」と言う藤真に「たかるな、腹ペコ」とが返す。

「まあ、いいや。付き合ってやるよ」

「頼んでない」

そんな会話をしつつも進行方向を変えて藤真はが向かっていると言うコンビニに付き合うことにした。

「そういえばさ、あたしの噂。宇宙人以外に聞いてないの?」

不思議だと思った。そして、ああ当然か、と思い直す。

「聞いてるよ」と藤真が返す。

彼女に関して言えば良い噂がなく、全て悪意を感じられるものだった。

「そう」と素っ気無く返した彼女の声音は寂しげで花形はどうしたものかと悩んだ。

「男癖が悪いとか、リスカとか。あとは、クスリとかな」

言うんだ...

花形は藤真が口にした悪意に満ちた彼女の噂を全て、『友情』という名を傘に着て、頼んでもない大きなお世話により耳にしている。

馬鹿馬鹿しくは思うが、藤真みたいにはっきりと不快を顔に出していなかったようで面白おかしく聞かされた。

物凄く不快ではあった。

「じゃあ、なんで声をかけてくるの?」

心から不思議そうにが見上げてくる。

「まあ、もし、それが真実だとしても終わったことだし。何より、男癖が悪いならオレにときめいているはずだ!」

藤真が言い切った。

花形が心底呆れているとも盛大な溜息を吐いた。

「あたしにも選ぶ権利はあるでしょう。チャック全開が第一印象の男を...」

と言うが、彼女の声音はどこか嬉しそうで。

だから、根拠のないあの噂が彼女を傷つけていたことを余計に感じる。

「だよな」と花形が頷くと「なにをー!」と藤真が拳を振り上げた。









桜風
11.11.9


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