晴れたらいいね 7





夏休みに入っても部活は毎日あった。

時々、体育館前に差し入れが置かれる。

一人で持つのは大変だろうに、と思いつつその厚意には甘えている。

必ず「熱中症に要注意」というメモ書きと共に2Lポカリが5本。

部員数から考えると少ないが、持ってきている人物の体格から考えたら多すぎる。


差し入れがあった日は、部活が終わると図書館へと向かうようにしていた。

必ず彼女がいる。



彼女は学校の図書館で勉強をしているのだ。

「外に出るのが面倒じゃないか?暑いし」と前に聞くと「家の中に居たらカビが生えそうだから」と返された。

「宿題は終わったか?」

「3年に宿題出すうちの教師の神経が知れないわ」

嘆くように彼女が言う。

確かに、受験勉強に本腰が入るのは夏休みからだろうに。

「けど、課題自体が受験を意識したものになってるだろう?」

文理、さらに国公立と私立で分かれているので受験の傾向はクラスごとで分かれている。

なので、課題もそれにあわせたものが出ている。

「花形くんは終わった?」

「いや?の写そうと思ってるから」

しれっと返されたのでは「はい?」と図書館にそぐわない声量で声を漏らす。

周囲の非難の視線を浴びて小さくなった。

「真面目に!花形くんは真面目だと思ってたのに...」

「藤真に良く『要領が悪い』と指摘されているから、これを機に要領の良さを身に着けようかと思って」

笑いながら花形が言う。

「花形くんの長所が...」

頭を抱えてが唸った。

「俺の長所は真面目だけなのか?」

「起点は『真面目』だと思う。そこから分岐して色々と長所へと変わるの」

真面目に返されて花形は少しだけ照れた。

その照れが伝わっても照れる。

「そういえば、いつも重いのに悪いな。ありがとう」

花形が礼を口にする。

「何が?」とすっとぼけるの目は泳いでいる。

藤真たちは勿論、後輩たちにもばれていると教えてみようかと思ったが辞めた。

彼女の差し入れが惜しいと言うわけではなく、応援してもらっているということが明らかにわかる事項がなくなる。

それがなくても彼女が応援してくれているのは此処最近の会話でよくわかる。

しかし、差し入れがある日は彼女が学校にきているのが分かるので非常に便利なのだ。

「帰り、どこかに寄って帰らないか」

花形の提案に「乗った!」とが応じる。



ひとまず、昼時間になったので昼食を買いに出ることにした。

「何で食堂閉めちゃうんだろうね」

「夏休みだからな」

の言葉に花形が応じる。

「コンビニが遠いのに」

「そこまで配慮する義理は学校側にないからな」

「けち」

「俺に言うなよ」

苦笑して花形が言う。

は受験校決めたのか?」

「推薦もらえたらそっちに飛びつくつもり。私立でも良いって親が言ってくれてるから。ただ、ダブってて推薦もらえるのかなって思って」

「理由が『単位を落とした』じゃないんだから大丈夫じゃないのか?」

現在の成績はすこぶる良いし、素行も悪くない。

彼女が口にしたように問題になるとしたら留年だろうが、それは事情があったのだから差し引いてくれるのではないだろうか。

実際、彼女がどんな理由で留年したのかは未だに聞いていない。しかし、特に聞きたいとも思わない。不思議なものだ。

自分はたぶん、バスケ推薦で学校決めるんだろうな、と何となく思っていた。

やりたい、将来の夢が今のところないからだ。

まだバスケから離れることを考えられないというのもある。


はサンドイッチが好きだな」

「基本パンが好きだからね」

そう言いながらコンビニのサンドイッチコーナーの前で商品を吟味している。

昼時間と言うこともあって、店内は人が多い。

そんな中で彼女は揺るがずにじっくり吟味。

藤真と並ぶマイペースさだと思う。

先にレジを済ませた花形は店の外に出て彼女を待った。じりじりと照りつける日差しが少しだけ痛い。

「ごめん、お待たせ」と慌てて出てきたは結構な買い物をしている。

「それ、昼に全部?」

「まさか、夕飯も含めて」

そう言いながらは袋の口を開きながら掲げる。

覗き込んでも良いということだろうと花形が覗くと、菓子とカップ麺。

「これが、夕飯?」

「うん」

「帰りにどこかに寄ろうって話しただろう」

「あ、そっか。まあ、じゃあ夜食」

体に悪そうだ...

の持っているそれに手を伸ばして自分のものと一緒に花形が持つ。

「いいよ」と彼女が遠慮するが「いいよ」と花形も返す。

今日は重いものを運んでくれているのだ。これくらいはしないとバチがあたる。









桜風
11.11.30


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