晴れたらいいね 8





新学期が始まり、教室でいくつかのパンフレットを並べては悩んでいた。

担任から推薦の話をもらえた。

しかし、全部知らない学校。ということで、パンフレットをもらったのは良いが、どれも同じに見えてしまう。

は将来の夢とかないのか?」

「自分の食い扶持は自分で稼いで、もし相方がいるなら同じことを求めるくらいかしら?」

「厳しいなー」と藤真が笑う。

先ほど借りた英和辞典を返しに来たところ、の机の上に大学のパンフレットが広げられていたので興味を持ってその場に留まっているのだ。

「職業的な目標は?」

「最悪、一人でも全然余裕で生きていける給料がもらえて福利厚生が整っているところ」

「それ、公務員くらいのもんじゃないのか?あとはでっかい企業だろうけど、中々難しいだろうし」

「じゃあ、それ。公務員。安定してそうだし」

藤真を指差してが言う。

「夢がないなー」

「何を言ってるの。『将来は安定を!』をモットーに生きていく気満々なんだから!人生にスリルはもう要らない」

そう宣言した後、ハタと我に返ったように「そういや、2人は?」と問う。

「沢山声をかけてもらっているからな。検討中。なるべく早いほうが良いだろうけど、冬の選抜の方に集中したいってのがあるし。県外も興味あるっちゃあるんだよなー」

と藤真。

「花形くんも?」

「藤真ほどは声は掛かってないけど。お陰さまで。俺は大体決めてるけど」

と肩を竦める。

「藤真くんの方が凄いの?!」

「何でそんな意外そうな声を上げんだよ」

不満そうに言う藤真に「人格的に考えたらどうやったって花形くんでしょう?」とは真顔で返した。

、ひでぇ!」と藤真が声を上げ、「当然の評価でしょう?」とが返す。

チャイムが鳴ると藤真は慌てて教室を後にした。


2学期になって席替えがあった。

花形との席も離れ、花形は自分の席に戻る。

花形は相変わらず一番後ろの席だ。そして、はその対角線上の一番前の席。最も遠い席になった。

頬杖をついて授業を聞く。

ふと、の方を見たら少し体調が悪そうだ。大丈夫だろうか。

授業が終わってすぐにの元へと向かった。

?」

声を掛けられて顔を上げたの顔色はやはり良くない。

「保健室に行くか?」

「...その方が良いかも。若くないしね」

「10代はまだ『若い』はずだぞ」

そう言いながら手を貸してやる。

こんなとき背の差が難しい。藤真くらいだったら無理なく支えられたんだろうな、と思っていると藤真がやってきた。

どんなエスパーだ。

「おい、どうした?、顔色悪いぞ?」

「保健室に連れて行こうと思うんだ」

「...お前ととのタッパの差はどう考えでもに負担だろう」

藤真がそう言って花形を押し退けて自分が彼女を支えた。

「抱っこしてやっても良いぞ」

「御免被る」

花形はついていくべきかどうか悩み、結局2人を見送った。



「失礼しまーす」と保健室のドアを開ける。

「うわ、またいねぇ...」

保健医の姿がない。

仕方ないので、藤真はをベッドまで支えた。

「先生、よくいないの?」

「オレはエンカウント率低いぞ。他のやつはどうか知らないけどな」

そう言いながら保健室に置いてあるノートにの名前を書き込む。

「寝てりゃ治る?」

「たぶん。けど、無理だったら先生と相談する」

「そーしろ。さすがにチャイムが鳴れば戻ってくるだろうし」

そう言いながら藤真がのベッド脇まで戻ってきた。

「なに?」

「オレさ、好きだよ」

まっずぐ目を見て藤真が言う。

「光栄です」

にこりと微笑んでの答えに藤真は深く溜息を吐いた。

「知ってたって顔して言うなよ。せめて驚いてくれ」

「年の功ってヤツよ」

「...花形?」

藤真の言葉には表情を変えることなく

「コメントは差し控えさせていただきます。って言いたいけど、まあ...イエスよ」

と返す。

「そんなあからさま?」

驚いたようにが言うと

「ずっと見てりゃ何となく。オレんが良いと思うけどなー」

藤真が呟く。

「未練たらたら」

「たらたら未練持たれてるやつが笑って言うなよ」

恨めしそうに藤真が言う。

「ま、せいぜい花形に振られて来い。もうちょっとならオレも空いてる」

「残念。藤真くんとはせいぜい根強い友情を育むくらいしか出来そうにないって思ってるのよ」

の言葉に藤真は「まあ、それはそれで光栄ってことか?」とおどけて言葉を返した。









桜風
11.12.7


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