晴れたらいいね 9





結局は早退した。

それからも少し休みが多くなった。

既に出席日数的には無理をしなくても良いくらいになったようだ。

しかし、この休みが響いて推薦の話がなくなってしまうのではないかと、他人事ながらも花形は気を揉んだが

「推薦?今のところ続行って聞いてるよ?」

と、本人は慌てる風でもなくケロリとしている。


冬の選抜の予選が始まる。

初戦がの試験の日と重なった。

「本当に、何と言うか...」

は肩を竦めて言う。

縁がない、と。

「まあ、まだチャンスはあるし。それより、その日は晴れると良いな」

花形が言う。

「や、試験は屋内だし」

が苦笑しながら言うと

「けど、晴れてるほうが会場に行くにも気持ち良いじゃないか」

と返された。

「...花形くんも?」

何がだろう、と花形は首を傾げる。

「や、ほら。試合の会場に行くのにやっぱり晴れてるほうが良いの?」

言われて少し悩み、「まあ、そうだな」と返した。

自分のことだとそこまで思わない。不思議なものだ。


初戦は難なく勝利を収めることが出来た。

そして、その翌日学校に行くが、ホームルームでが欠席だと担任が言った。

「試験、まずったのかな?」

藤真が呟く。そのショックで休んだとか。

「いや、って本番にメチャクチャ強そうじゃね?」

と高野。

「咄嗟の機転とか得意そうだしな」と長谷川も同意した。

確かに、と皆で納得する。

次の試合まで時間はない。次の試合の会場を教えておきたいのに。

しかし、結局はその週は欠席となった。

次の試合が終わり、その足で花形はの家に向かった。

クラスメイトなので住所録がある。

住所録の住所を頼りに彼女の家に向かった。

「うわぁ...」

大きな家だった。

インターホンを押す。

返ってきた返事にのクラスメイトであること、彼女の見舞いに来たことを告げた。

しかし、会える状態ではないと言われてしまう。

かといって食い下がるのもどうかと思ったので大人しく帰宅した。

夜中に自宅に電話が入った。

母親に呼ばれて電話を代わる。

「もしもし?」

『花形くん?』

?!」

思いも拠らない人物からだった。

「体調、どうだ?」

すぐに口に出たのは彼女の体調を気遣い言葉だった。彼女が休んでいる理由は分らないが、サボリではない気がしている。

『ああー、まあ。悪くはないけど、良くもない』

苦笑交じりに彼女が言う。

「どこか、悪いのか?」

『去年、これでダブったんだけどね。まあ、体調不良』

「え...」と言葉が続かなかった。

体調不良で長期の欠席。それで留年したと言うことだ。

それなのに、あの悪意に満ちた噂を流されて彼女が傷つかなかったわけがない。

『花形くん?もっしもーし』

「何で、言わなかったんだよ」

『あー、うん。ごめんね』

軽く返されてカチンと来た。何故彼女のこの態度に自分が腹を立てているか分らないが、腹が立つ。

「何で、あのデマを甘んじて受けてたんだよ」

『あのデマ?』と彼女は呟き『ああ、宇宙人?』と返す。

「そうじゃない、悪意の塊の方だ」

自分でも呆れるほど、キツイ声音だ。彼女は全く悪くないのに。

『あはははー』と彼女が笑っている。

、お前どれだけ我慢してたんだよ」

『んー、まあ。仕方ないし』

「全然仕方ないことないだろう!」

『わお』

思わず怒鳴ってしまったが、電話の向こうのはどこ吹く風のようで、その点はちょっと安心した。

「ごめん」と謝る。

自分の家では母親が驚いて覗いてきているくらいだ。

『いいよ、ありがとう』とが返す。

『けど、こっちもごめん』

「...何が?」

『全国大会に行ってくれないと、結局花形くんの試合を見に行けそうにない』

もうちょっと安静にしておかなければならないらしい。

「わかった。ちゃんと、が俺を応援できるチャンスを作るよ」

花形の言葉には少し沈黙した。

『ねえ、俺達じゃないの?』

伺うように返す。

「いいだろう、俺だけで」

『...藤真くんみたいになってるの気付いてる?』

が困惑しているらしい声を出す。

「たまには、俺だってエゴイストになりたい」

花形の言葉には暫く沈黙して『今、凄く花形くんの顔が見たかったわ』と呟く。

「残念だったな」と花形が笑いながら返す。

『ホント残念。ね、花形くん』

「ん?」

『今度の試合も晴れたらいいね。じゃ、おやすみ』

そう言っては電話を切った。

ひとまず彼女の声を聞くことが出来たので一安心だ。そして、試合の応援にこれるチャンスを作ると約束してしまった。

だから、これからずっと勝ち続けなければならない。


「ああ、晴れるといいな」

安心した表情で花形は呟いた。









桜風
11.12.14


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