| 最終学年に進級した4月。 窓の下には入学したてで初々しい新入生が手探りで高校生活を送っている。 「あたしたちもあんな時期があったよねー」 と感慨深そうに頷くのは、女子バスケット部マネージャーの。私の親友。今年はクラスが違うけど、去年までの2年間同じクラスだったし、出席番号も私のすぐ前だった。最近は彼氏が出来たため、浮かれてます。 「何を見てるんだ、」 名前を呼ばれて振り返る。 必要以上に見上げないといけないから、首が痛い... 「初々しい新入生たちの様子をね」 そう答えると気のない「ふーん」と言う返事をするのが、同じクラスの花形透。 成績優秀スポーツ万能、かの有名な翔陽高校バスケ部副キャプテン。メガネの奥の涼しげな瞳が女子生徒たちの憧れらしい。 『メガネの〜』のくだりは廊下ですれ違った女子がそんなことを言っていた。あのときコーヒーを飲んでいたら間違いなく吹いてたね、私。 私と透は恋人同士、とよく間違われるけど、世に言う幼馴染という硬い絆で繋がっているだけ。 というか、私が唯一普通に言葉を交わせる男子が透しか居ないからよく話しているし勘違いされても仕方ないって思ってしまう。 透には悪いことをしていると思ってるよ。 「で、何?花形君」 が聞くと 「藤真が待ってるぞ」 という返事。 ... ...... ああ!! 「何でもっと早く教えてくれないの!?」 慌てて立ち上がって透の後ろを覗くと、所在なさそうに藤真くんが立っている。 「、ごめんね」 「いってらっしゃーい」 ののんびりした声を背中に受けながら廊下へ走った。 「ごめん...」 「忘れてたみたいだな、。呼びに来て正解だったよ」 そう言って小さく笑う。 昼休み、男女バスケ部のキャプテンは顧問に呼び出されていたのだ。 すっかり忘れてた。 私は昔からの男性恐怖症と言うか... 幼稚園の頃に男の子にいじめられて以来苦手となってしまった。 挨拶とお礼と目的のある会話ならできる。 でも、条件が厳しい。漠然とした目的のある話はまだダメだ。 バスケの話を例に出すと。 バスケの何が好きとかそういう一般論はダメ。 どのポジションの誰がどのように凄いとか、そういう話になると、何とかオッケー。 授業で分からないところを教えてあげるってのも..何とかオッケーだな。 まあ、普通に目的のない日常会話をすることが出来ないと思ってくれたらそれでいい。 藤真くんは、その話を透に聞いているのか、気にしてない様子だし、それでも話しかけてくる。 相槌を打つくらいならできるようになったから。 コレって実は大進歩なのだよ。 「失礼します」と顧問の準備室へと入れば、机の上に大量の入部届けがある。 うわー、男子今年も多いんだ... ちなみに、申し訳程度に数枚置いてあるのが女子の入部届だね。 それらを受け取って準備室を出た。 ぺらぺらと捲ってみても知らない名前ばかり。初心者と経験者だったら初心者の人数の方が多いかもなー... そして、隣を歩く藤真くんの手にある同じものを見る。 全部に目を通すまで結構大変そう... 「花形に手伝ってもらうから大丈夫だよ」 突然声を掛けられた。 私、声に出してたのかな?? 「そんな顔してた。一応さ、男女で違うとは言え3年間同じ部に所属していて、去年は委員会も同じだったんだから何となく分かるんだよ」 そう言って笑う。 去年、私と藤真くんは図書委員を務めていた。 私がそれを選んだ理由は、凄く楽そうだったから。 部活に出る時間が遅くなることはあるけど、超弱小の女子バスケ部の私には誰も文句を言わない。 殆どの部員が幽霊部員だしね... 対して藤真くんは大抵昼休憩の当番に組み込まれていた。 部活動に支障を来たすことになっては大変だとかで。 確かに、1年のときから注目されてて去年の今頃には既にエースと呼ばれていたんだから納得の理由だ。 それでも、根が真面目なのか、図書委員会があるときには出席していたし、文化祭前に残らなければいけないときは部活が終わってからでも作業を手伝いに来ていた。 私にとっては藤真くんは不思議な人。 透と仲が良いからか、時々気を許してしまう唯一の男の子だったりするのだ。 |
桜風
08.1.1
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