| 「よっぽど眠かったんだね...」 の様子を見てが呟く。 「そうだな」 と言いながら、花形がベッドの上のタオルケットを持ってきてに掛けてやる。 「これだけ男が居る中で寝るなんて考えられないからな」 と藤真たちの無言の疑問に応えるように、花形が付け足した。 「ふーん...」 と藤真が呟く。 その後、気分転換してくると言って高野とが出て行った。 「なあ、花形」 机について勉強していた藤真が花形に声を掛ける。 「何だ?」 「、どうしてあんなになったんだ?」 前に高野が聞こうとしたときは止めた。でも、やっぱり気になっていた。 少しの沈黙の後に、 「...まあ、藤真にはかなり気を許してるみたいだからな」 と溜息と共に花形が呟いた。 「が幼稚園のときにクラスの男子にいじめられて、それがトラウマになったって話はしたよな?」 「ああ、それ以来花形にべったりになったんだよな?」 花形が頷く。 「その幼稚園の時の話なんだが。クラスの男子でたぶんのことが好きだったんだろうな。気を引きたくて最初は髪を引っ張ったりとそういういたずらをされていたんだ」 「まあ。俺にも覚えがあるな、そういうの」 と、藤真が頷く。 「そこで止まっていたら、まだ平気だったんだろうが。そいつはを叩いたり、階段から突き落としたりをし始めて、最後のトドメが、ミミズだ」 「ミミズ?」 「ああ、バケツいっぱいのミミズを公園かどこかで集めてきて、にぶちまけた」 咄嗟に言葉が出ない。 「え、それっていじめじゃないのか?」 一応確認するが、 「いや、たぶん違う。それだけ集めた事を自慢したかったんじゃないのか?けど、の泣き声が聞こえて俺がその場に行ったら、まあ、グロテスクな光景が目に入ったよ。それがきっかけでは男が怖くなったらしい。ついでに夏もイヤだってさ」 「確かに、トラウマになりそうだな。夏もって?」 「道路に出てきてるだろう?大抵干からびてるけど...」 「なるほどな」と言ってグラスの中の氷を口に入れた。 「泣き続けたに困った保育士が母親を呼んだんだ。その日はは帰ったが、その次の日から俺が居ないと泣くようになって。幼稚園ではすぐにクラスの編成を変えられた。まあ単にミミズのあいつと俺が入れ替わっただけなんだが。 それ以降、のお母さんが学校に俺と同じクラスになるようにとお願いしに行ってたらしいよ。ウチの母親から聞いた。まあ、高校は偶然だろうけどな」 「そうなのか?」 と藤真が問う。 「たぶん、な。ウチの母親も何も聞いてないらしいからな」 「ふうん...」 藤真はストローを咥えてピコピコと動かす。 花形は半眼になって 「お行儀が悪いってに叱られるぞ」 と注意した。 「花形、お替り」 と言ってストローを咥えたままグラスを掲げる。 溜息を吐いて花形はそれを受けとって部屋から出て行った。 藤真は四つん這いでに近寄る。 普段の生活でこんなにもの顔を間近で見ることが出来ない。それが出来るのは花形だけ。 「医学部かよ...」 項垂れながら呟いた。 「諦めるか?」 不意に背後から声がした。 「ばーか。諦めるかよ。こんなことで諦めれるようだったらとっくに諦めてら。何のために、苦手な理系に進んだと思ってるんだ。まあ、ちょっと時間は掛かりそうだけどな」 振り返って余裕の笑みを浮かべる。 その笑顔を見て花形は喉の奥で笑う。 「何だよ」 「いや。敵は手ごわいぞ、と思ってな」 そう言ってグラスを渡す。 「まあ、その方が燃えるだろう?」 再び藤真は不敵に笑った。 |
桜風
08.2.20
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