ハツコイ 10





テストが終われば、IH予選はすぐそこだ。

女子部の方の練習にも有る程度の人数が参加してくるようになった。



そして、試合当日。

例年のことながら初戦で敗退。

ただ、去年と違うのは1桁差の負けで終わったこと。

試合後、部員たちに言った。

「部長は皆で決めて。ただし、来年の今頃までバスケ部に所属するって決めてる子にお願いしたいわ。一応、2年が望ましいけど、それでも決まらなかったら1年が部長をやってくれて構わないから。それじゃあ、解散」

控え室でそう言って解散した。

部員たちはそんなに悔しそうな雰囲気はなく、早く終わったことに喜んでいる子すらいた。

と私は顔を見合わせて苦笑する。

、3年間ありがとう」

こそ、お疲れさま。くらいだったもんね、ちゃんと練習してたのって」

「じゃあ、何か食べて帰ろうか」

そう話していると

「キャプテン!」

と声を掛けられた。

振り返ると、今日一番頑張ってくれた1年の

「何?」

「もう引退されるんですか!?」

何だか責められてる感じがするのは、気のせい??

「うん。もう引退」

そう答えると睨まれる。

あれ〜?

「ちょっと、もういいでしょ!」

が私を庇うように立つ。

でも、

「ありがとう、。でも、私ちょっと話してみる。先行ってて。終わったら電話するから」

とお願いした。

は大仰に溜息を吐いて、「分かった」と返事をくれた。


少し場所を移す。

会場近くの公園へ行く。

「ねえ、何飲む?」

「要りません」

「ポカリね」

そう言って2本ポカリを購入。彼女に1本投げて渡した。

公園の中のベンチに座ってプルトップを上げる。

一口飲んで息を吐く。

「で、何?」

「何で、引退するんですか?今日の試合、悔しくなかったんですか!?」

そんなことを聞かれた。

その言葉が嬉しくて思わず頬が緩む。

「何笑ってるんですか!!」

「私と同じ気持ちの人が、の他にいたから。嬉しいなーって。こりゃ女子の翔陽も強くなるよ」

そう言うと彼女は立ち上がる。

「だったら、何で冬まで残らないんですか!?」

目に涙を溜めてそう言う。ホント、嬉しくなっちゃう。

「親との約束。公式戦で1勝でもしたら続けても良いって言われたんだけど、今まで勝てなかったからこれで引退。勉強に勤しまないとね。受験生ですから」

「私、キャプテンのこと嫌いでした」

突然彼女がそう言う。

「うん」

「上手いのに、そんな風に見せない。部員にも舐められてても全然平気な顔をして。あんなやつらガツンと言ってやれば良かったんですよ!それなのに...」

「だから、あの時男子部のマネージャーに立候補してみたり、透にチョッカイ出したりしたの?」

そう聞くと彼女は頷く。

「そうすれば、キャプテンは本気を出すと思ったんです。でも、全然そんなのなくて...それが余計に腹立って、凄くキャプテンに悪いことをしました」

そう言って俯く。

何?何された??

「夜中に...」

「ああ、非通知ってだったの?!が『ストーカーだったらどうするの!』って怒ってたんだよ。うん、黙っとく」

「何でそんなに余裕があるんですか?」

眉間に皺を寄せて彼女が聞いた。

「ないよ、余裕なんて。部活はね、楽しい方がいいって思ったんだ。だから、これない人は来なくていいって言ったの。
...まあ、理由が無いのにしょっちゅうサボられたらムカツクから理由を添えてもらったんだけどね。そっかー。は、結局サボったことなかったね。用事があって早く帰ることはあったけど」

そういえば、練習のある日は毎日必ず体育館に来ていた。

「私、先輩と同じ中学だったんです。中学のときはバスケしてなかったけど、でも、中学も女子部は練習せずに遊んでたし、強くもなかったけど。でも、先輩だけはいつも黙々と練習をしてて。高校に上がったらバスケしようって思って見てました。
そして、翔陽に入って。でも、入ってみたら中学のときと雰囲気は全然変わらなくて、それを先輩が容認してて。それが凄く腹立たしかったんです」

「そっかー。そう思ってくれてる人がいたんだね。私、全然気がつかなかったよ。ありがとう」

先輩」

「はい」

「私、キャプテンします。それで、2年後、神奈川で優勝します」

彼女がまっすぐそう言った。

「うん、楽しみ。ねえ、バスケ部、任せたよ?」

「はい」

彼女はポカリを飲み終えた缶をゴミ箱に向かって放った。

きれいな放物線を描いてそれはゴミ箱の中に吸い込まれた。

「じゃあ、失礼します。時々、体が動かしたくなったら来てください」

そう言って走って行った。

私もポカリを飲み干してゴミ箱に放る。

最後のシュート。

「終わっちゃった」

途端に寂しさが込み上げてくる。

私、自分が思ってた以上にバスケが好きだったみたい...








桜風
08.2.27


ブラウザバックでお戻りください