| 今回の新入部員は桜木のみが初心者で、他の部員は経験者だった。 全くバスケに触れたことがない桜木のために彩子が彼の基礎練習を見ることとなり、マネージャーとしての仕事はが主体となるという予想だにしていない事態に陥った。 慌しく体育館と流しを走って行き来する。 お遣いを頼まれて戻ってみると、桜木がこそっとサボっていた。 「こらぁ!桜木花道ー!!」 まさか、外に誰か居ると思って居なかったのか、桜木はビクッと肩を震わせて振り返った。 「な、何だ...」 「彩子先輩かと思った?」 イタズラっぽく笑ってが桜木の顔を覗き込む。 ビックリしたじゃないか、と彼は本気で驚いたようだった。 この桜木を怖いと言う生徒は少なくない。 も最初は怖いと思っていた。体は大きいし、声も態度も大きい。耳に入る噂も、あまりいいものではない。 しかし、話してみると気さくだし、一緒にいる友達もあまり怖い印象を受けない。 だから、こうしてからかうこともあるのだが... 「練習は?」 「あんなもの、この天才には必要ない。やってられるかよ」 そんなことを言う。 「基礎は大切だよ」 が言うがフンと鼻を鳴らしてそっぽを向く。 「赤木キャプテンのゲンコが落ちるよ?あと彩子先輩のハリセンとか」 「ぬ...ゴリか」 唸る。 面白いなぁとは桜木を見上げた。 「基礎基礎って...うるさいんだよ」 「わたしもそう思ってた。けどさ、そう言って、基礎をサボってた先輩は、上達しなくてレギュラー取れなくて辞めてったよ」 の言葉に桜木が興味を示す。 「バスケしてたのか?」 「うん、そんな強くない公立の中学だったけどね。楽しかったよ」 「ほう?」 「桜木くんは、体格がいいし、勿論運動神経、運動量にも恵まれてる。あとは練習して技術を身に着けるだけじゃない。体格とか運動神経は元々うまれて持った才能の一部だから、練習したって身につかないんだよ。そう言う意味では、桜木くんは天才かもしれないね」 の言葉に桜木は胸を張る。 そして、上機嫌で体育館に戻っていった。 体育館に戻った途端、キャプテンの怒号と共にゲンコツの音がに耳に届いた。 思わず首を竦める。 あのゲンコツって本当に痛そうなんだよなぁ... 自分に落とされたわけでもないのに、たまには自分の頭を擦る。 「何してんだ」 「うわぁ!」 先ほどの桜木の気持ちが良くわかった。 「流川くん?」 珍しいな、と思っているとみんなが戻ってきた。外周を走っていたようだ。 先に戻った赤木と出くわして、桜木はゲンコツを食らったと言うことのようだ。 「お疲れ様」 の言葉にチラと視線を向けて流川はそのまま体育館に入っていった。 練習が終わって、片づけをしていると流川がボールを持ってシュートを始める。 残って練習でもするのだろうか。 は思わず手を止めた。 綺麗なシュートフォーム。そして、男子だから当然といえば当然かもしれないが、ワンハンドシュート。 「いいなぁ...」 思わず声を漏らす。 「?」 手を止めたに彩子が声を掛ける。 「あ、ごめんなさい」 「流川を狙ってるの?」 からかうように彼女が言う。 「狙う?」 首を傾げたに彼女は笑った。 「ううん。中学のときから、流川は女子に人気があったからね」 「本人、我関せずって感じですよね。興味なさそう」 笑ってが言うと「その通りだったのよ」と彩子は苦笑する。 「今、流川見てたでしょ?」 「きれいなシュートフォームだなって思ったので」 「ああ、なるほど。も経験者だったわね」 マネージャーとしての経験を聞かれ、そのときに選手をしていたことを話している。 「ワンハンドシュートって憧れだったんですよね」 「かっこいいものね」 彩子がの言葉に頷いた。 「いいな、男の子は」 の呟きは聞かなかったことにして「ほら、早く済ませましょう」と手を動かすように促した。 |
桜風
12.5.9
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