| 「さん」と声を掛けられて振り返る。 「あ、水戸くん」 を呼び止めたのは桜木の友人の水戸だった。 は水戸の周辺をキョロキョロと探す。 「どうしたの?」 「水戸くんだけ?いつも大楠くんとかと一緒にいるのに」 「いつもつるんでるわけじゃないよ」 苦笑して彼は応えた。 「そうそう、練習試合があるんだよね」 「うん。桜木くんから?」 「あー、けど。花道のヤツどこで何時からってのを言わないんだ。覚えてないってさ」 「ホントに?!」 何度も時間と場所は説明したのにな、とは肩を竦めた。 「水戸くんたちは応援に来てくれるの?」 「そりゃ、花道のダチとして...って建前で」 そう言って水戸は笑う。 体育館に来て、時々桜木をからかっている姿を見ているので、応援と娯楽の両方と言うことだろう。 は練習試合の時間と会場を説明する。 「そういえば、花道が言ってたけど。さんも経験者なんだって?」 「ああ、うん」 「何で女子部のないこの学校に入ったの?」 心底不思議そうに水戸が言う。 バスケに関わっていなければ、もういいのかなと思うが、結局マネージャーとしてバスケに関わっているのだ。だったら、女子部のある学校で選手をした方が経験を活かせていいのではないかと言う。 「自分の偏差値を考えたら、家から一番近い国公立だったから」 「近いんだ?」 「うん、自転車通学できるからね。水戸くんたちは電車?」 「そうだよ」と水戸が頷き、「朝って、混まない?」とが問うと「花道が居るからね」と苦笑する。 彼の出で立ちに怯えて人が避けるのだと言う。 「ラッシュ時には、辛いね、他の人が」 気の毒そうにが呟くと 「そんな感じだよ」 と水戸が笑う。 「じゃあさ、さんも流川のプレイを見たことがあるの?」 「『も』?」 が問うと「ああ、ゴリの妹が流川のプレイを知ってたからさ」という。 「え、赤木先輩に妹さんが居るの?!」 知らなかった... 「しかも、兄貴と全然似てなくて可愛いんだよ」 苦笑して水戸が言う。 「ホントに?!」 「たまに練習の見学してるよ」 と言われて更に驚く。 「マネージャーにならないのかな?」 「兄貴が居ると入りづらいんじゃないのかな。しかも、キャプテン」 なるほど、とは納得した。きょうだいが一緒の学校にいるってだけでも、ちょっと面倒なことがありそうだ。 「じゃあ、ありがとう」と水戸がいい、丁度予鈴が鳴った。 なぜか水戸は教室ではなく屋上へと向かっていた。 「あいつと知り合いなのかよ」 放課後、シュート練習をしていると逆のゴールを使って練習をしている流川が声を掛けてきた。 「あいつ?」 「どあほうのツレ」 流川は桜木のことを名前で呼ばない。最初は『どあほう』って誰だろうと思っていたが、どうやら桜木のことだと最近わかった。 「水戸くん?」 「たぶんそれ」 「んー、桜木くんと一緒にいる人だからね。廊下で会ったら桜木くんとも話をしてるし、その流れで..知り合いになったっていうか?」 何で知ってるんだろう... 聞いてみると 「今日の昼に話してただろう」 と言う。 確かに、昼休憩に声を掛けられて練習試合のことを話した。 そのことを流川に話すと「ふーん」と適当に流された。 何だって、話を振っておきながら流すのだろうか... 失礼だなぁと思った。 「そういえば、流川くんって陵南の仙道さんって知ってる?」 「知らね」 「去年ルーキーだったから、今年2年生なんだって。去年も練習試合したらしいけど、その仙道さん一人にやられたって彩子先輩が言ってた」 「ふーん」 さっきの『ふーん』よりは興味があるようだ。 「去年のスコアブック、彩子先輩に見せてもらう?」 「必要ねぇ」 素っ気無く答えて流川はダム、と1回ボールを弾ませる。 「いらないの?」 「それって去年のデータだろう。そのまんまのはずねぇじゃん」 なるほど。 「もっと強くなってるってこと?」 「普通はな」 「けど、彩子先輩ってば『今年のウチは流川が居るから、仙道にも好きにはさせないよ』って息巻いてたよ」 流川はチラとを見た。 何も言わなかったけど、何となく「当然」と目が言っているようだった。 「凄いね、流川くん」 がそう言うと流川は特に返事をするでもなく、練習を再開した。 腕も疲れたし... 「ボール、拾おうか?」 「おう」 流川の返事を聞いてはボールを拭いてから仕舞う。 部活のを使わせてもらっているので、ちゃんときれいにして返さなければならないのだ。 その間も流川はボールをあちこちに転がしたままだ。 ここからがまた疲れるのだ。 「体力づくり」 そう呟いて、は流川の転がしたままのボールを拾い始めた。 |
桜風
12.5.23
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