| 練習試合から数日後、体育館に知らない顔が増えた。 「宮城!」 彼の顔を見た2・3年が名を呼ぶ。 つまり、あれが入院していたガードの宮城リョータだとわかった。 部員の情報はマネージャーとして知っていたが、やはり背が低く感じる。 バスケ部に入部する人は大抵背が高い..と思う。 だから、彼のその身長には驚いた。 そして、体育館に入る前から桜木と仲が悪そうなところに首を傾げる。 「さっき、外で会ったのよ」 首を傾げているに彩子が言う。 「あ、もう挨拶が済んだんですか」 「まあ...『挨拶』は済んだかもね」 遠い目をして彩子が言う。 宮城と安田が1対1を始めた。 「ほら、手が止まってる」 「あ、すみません」 興味があって作業の手を止めて見ていると彩子に注意された。 どうやら、宮城の武器はスピードのようだ。身長がない分それをフォローするならスピードが必要だ。 身長のことをカバーできるほどのスピードにはぽかんとした。 高校男子のバスケってホントに凄い。 先日の陵南との練習試合でも思ったが、中学から高校に上がっただけで迫力が全然違う。 宮城が練習試合のときに居たらこれまた結果が違ったかもしれないな、と思った。 翌日の昼食時。 「あー...」 は掌にコロリと落としたものを見て、遠い目をした。 歯の詰めものが取れた。 これは、今日は部活を休ませてもらわないと。早く治さないと気になるし、虫歯が怖い。 歯医者が嫌いで極力行かないよう、歯磨きだって頑張っているのだが、の口の中にはこれ以外にも詰め物がある。 これらも一応見てもらっておこう。 昼休みのうちに彩子の教室に行き、キョロキョロと見渡す。 「おい」 声をかけられて振り返った。 宮城だ。 「こんにちは、宮城先輩」 と挨拶をすると、 「お前、マネージャーだったよな」 と言われた。 「はい、1年10組のです」 「ふーん」と宮城がじっと見る。 「あの..彩子先輩は学食ですか?」 「ん?あー...」 に言われて教室の中を改めて宮城が見渡す。 「弁当食べてたと思うけど。何だよ」 「今日、部活を休ませてもらいたくて」 「だったら、普通は部長の赤木の旦那のところに行くべきだろう」 言われて気づいた。 「そういわれてみれば、そうですね」 「体調が悪いのかよ」 心配してくれているのだろうか。 「あ、いえ。歯の詰め物が取れたので。早く歯医者さんに行きたくて。今日、とっとと行こうかと思って」 「彩ちゃんには俺から言っとくから、赤木の旦那に一応言っとけば?まだ昼休憩の時間あるし」 「はい、ありがとうございます」 頭を下げたは3年の教室に向かった。 赤木の教室に行き、先ほど宮城に伝えた同じ内容を話すと「わかった」と了解が得られた。 放課後、が教室で帰り支度をしていると校庭からバイクの音が聞こえてきた。 何だろう、と思いつつも昼休憩のうちに電話していた歯医者の予約時間がギリギリなので慌てて教室を出る。 「あれ、さん部活は?」 同じクラスの石井に言われた。 「ごめん、今日は休み。歯医者さんに行かなきゃ!明日から頑張る!!」 駆けながらはそう言い、小さくなっていく背中に石井は「お大事にー」と声をかけた。 「アイツは?」 体育館へ向かう途中、流川が声をかけてきた。 石井は彼を見上げて、「さん?」と問う。 「それ」 「今日は、歯医者だって」 「ふーん」 気のない言葉が返ってきた。 |
桜風
12.6.6
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