| 決勝リーグの初戦は、常勝の海南大附属高校。 帝王と呼ばれる牧が率いるチームだ。 勿論、この試合もはスタンドでの応援だ。 これも自分の任務だと思い、は適当な席を見つけて腰を下ろす。 これまでの人生で『決勝』なんてものに縁が無かったは必要以上に緊張していた。 応援するだけなのに、緊張するなんてちょっと図々しいかもしれない。 試合の結果は、湘北が負けた。 決勝はリーグ戦だから、1回負けただけでは終わらない。だが、勝つに越したことはない。 何より、凄く惜しい試合だった。 試合中、赤木が負傷し、は慌てて控え室に向かった。 控え室には赤木と彩子、そして桜木がいた。 「赤木先輩」 遠慮がちに彼に近付く。 「桜木、彩子。戻れ」 が来たのでそれで良いと言うのだ。 「ちょっと待ってください。医務室には私が付き添います。桜木花道は、試合に戻って」 彩子がそう言うと桜木は心配そうに控え室のドアを出た。 「テーピングでガチガチに固めてくれ」 「え?!」 赤木の言葉に彩子が声を上げる。 「医務室で検査をしてもらわなきゃ!骨に異常があるかもしれないのよ!!」 彩子が訴える。 はじっと赤木を見ていた。 「やっと掴んだチャンスなんだ!」 赤木が空気が震えるほど声を荒げる。 「打倒海南!」 ドアの向こうから桜木の声がした。 「...赤木先輩。仮に、この試合を落としたとしてもリーグ戦です。まだ全国へのチャンスはゼロではありません」 が言う。 「骨が折れてもいい。歩けなくなってもいい」 唸るように赤木が言う。 「この試合、無理を押して出て、結局あとの2試合出れなくなっても良いんですね」 「くどい!」 「彩子先輩、テーピングしましょう」 「!!」 叱咤するように彩子がの名を呼ぶ。 「わたしたちに赤木先輩を止めることはできません。止められるのは、安西先生だけです。赤木先輩の納得するようなテーピングをする以外、ここから出て行く方法はありませんよ」 「それでも良いじゃない。赤木先輩、こんな足で試合に出たら...」 「、やってくれ」 「はい」 指名されてが赤木の足にテーピングをする。 「赤木先輩がコートに立って、様子がおかしかったら安西先生は迷わずに下げると思いますよ」 「良いから早くテーピングをするんだ」 肩を竦めては手を進めた。 会場の歓声が控え室にまで響いてくる。 「...、行きなさい。その続きは私がやるから」 歓声に手を止めたに彩子が言う。 「はい」と頷いては控え室を後にした。 前半で湘北は海南に追いついた。流川と桜木の活躍だった。 そして、後半。赤木がコートに戻ってきた。 はギュッと手を握る。 ガチガチにテーピングをした。途中までだが、続きは彩子がやってくれたはずだ。 だから、テーピング自体は信じられる。 だが、テーピングをしたからと言って足が痛くなくなると言うことではない。つまり、赤木はアレだけ腫れた足で走り、跳ねなければならないのだ。 彼自身が望んだ状況だし、赤木が抜けると今の湘北は支柱になれる存在がない。 「あれ?」 一瞬だけ、流川と目があったような気がした。 思わず振り返る。家族でも来ているのだろうか... あの流川だ。 きっとDNA的にあの顔なのだと思う。 ...違うのかな? 振り返っても流川的DNAは見当たらない。 ホイッスルが鳴る。 ジャンパーは桜木だった。赤木の怪我を思って彼がジャンパーになったのだろうが、如何せん、初めてのジャンパーだ。誰も居ないところにボールをはたいてしまった。 後半の海南は、神が出てきた。スリーポイントシューターだ。 彼が打ったシュートには戦慄した。 あまりにも綺麗なシュートフォーム。 は、シュートフォームが綺麗だということにある程度の自負があったが..穴があったら入りたい。 美しいシュートフォームとはアレを指すのだ。 恥ずかしい... これまでの自負をこっそりどこかに置いて、何事もなかったかのように過ごしたいと思った。 後半は特に一進一退の攻防を見せた。 しかし、前半飛ばした流川は途中で交代となり、ベンチでタオルを被って俯いているその姿は痛々しかった。 きっと悔しいのだろう。 まだできれば、という後悔が彼の中にあるはずだ。 そして、1点差。 三井のスリーポイントシュートで試合が決まったかと思ったが、そのシュートが決まらず、桜木がリバウンドを取り... 試合終了のホイッスルを聞いては立ち上がった。 ひとりだけスタンドというのは、控え室に戻ったときの疎外感が辛い。 彼らにそんなつもりは一切ないのだろうし、勝手に自分が感じているものなので誰にも訴えられるものではないが、コートの中で応援している人と、スタンドで応援している人とでは距離感が違う。 「でも、仕方ないよねー」 ポツリと呟き、は深呼吸をして控え室のドアをノックした。 |
桜風
12.7.11
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