Jump! 16





月曜日、登校するとお祭り騒ぎだった。

特にスタメンの5人は大変そうだった。そんなに大変に思っていない人もいたかもしれないが...

「おはよ」

教室に入るともクラスメイトから昨日の試合について色々聞かれた。

が淡々と答えていると、どうも面白くないのか彼らは石井にターゲットを絞って昨日の試合について聞き始める。

もう少し興奮気味に話してもらいたかったらしい。


昨日の試合は、湘北が4点差で勝利した。

つまり、今年の神奈川県のインターハイ地区予選は、昨年1回戦敗退のチームの湘北がシード校3校破り、インターハイ出場の切符を手にしたのだ。

地元の新聞でも翔陽に勝利したとき以上の扱いを受けていた。

練習試合のことを思えば、確かに凄いことだなとも思っていたが。一方で、陵南と湘北の実力は伯仲していると思っていたので、勝利にもそんなに驚いていないのが正直なところだった。

何より、インターハイへの出場権を手にしたのは選手達で、凄いのは選手なのだ。

興奮気味に話をしている石井を囲うクラスメイト達を眺め、は窓の外に視線を向けた。

そういえば、すぐに期末試験だ...


その日も、流川はいつも以上にぐっすり眠っていた。勿論、授業中に。

そして放課後。

部活は、軽く流しただけで解散となった。

昨日の試合の疲れが残っているだろうから、ゆっくり休みように、ということだ。

赤木は病院だし、安西もまだ入院中だ。今週中に退院するとは聞いている。

入院が休日だったので、急を要する検査以外は週明けに行うこととなっていたのだ。

帰りに安西先生のお見舞いで行こうかなぁ...

そんなことを思いながら片づけを済ませて体育館に戻ると、流川しかいなかった。

「あれ、彩子先輩は?」

「帰った」

「はい〜?」

大抵帰るときには声を掛けてくれるからまだいると思っていたのに...

「今日はやんねぇの?」

流川に言われては少し考え、「やる!」と言った。

何だか体が軽い気がする。

今日は行けるかも!

アップを流川に手伝ってもらい、フリースローラインに立った。

深呼吸を1回。

ボールを2回弾ませてシュートフォームに入る。

地を蹴って跳び、ボールが手から離れる。

「入った」

流川が呟く。

そのすぐ後にパスッとゴールのネットの揺れる音がした。

リングに当たることなくストンとボールがゴールの輪の中に入っていった。

「は..入った!」

は流川を振り返る。

「おう」

と流川は頷いた。

「入ったー!」

喜びのあまりは流川に抱きついた。

まさか抱きつかれると思っていなかった流川は、の体重を支えるためにたたらを踏んでしまった。

「凄い!入ったよ!!」

そう言って顔を上げると流川の顔が間近にあり、自分の奇行に気付いた。

「わ、ごめん」

「おう」

少しの間気まずい沈黙が降りる。

「よし、じゃあ。次はスリーポイントが入ることが目標だ」

「は?」

流川はきょとんとした。

「ん?」

は首を傾げる。

「まだやんのか?」

「あ、邪魔?」

「そんなんじゃねぇけど...」

彼女の目標はワンハンドでフリースローラインからのシュートだったのではないだろうか。

流川がそう言うと

「うん、さっきまでの目標はね?」

は頷いた。

「それがクリアできたから次の目標だよ。まずは、ツーハンドでスリーポイント」

「...何でバスケ部のない学校に来てんだよ」

呆れたように流川が言う。物凄くバスケに対して意欲的だ。

「んー、ま。残念ながら頭が良くなかったからかな?」

苦笑してが言う。

「でも、流川くんたち、凄いね」

「何が」と流川はぶっきらぼうに返した。

「インターハイに出場できるから」

何言ってんだ、と言うように流川の眉間に皺が寄る。

だって行くだろうが」

「うん。けど、出場を決めたのは流川くんたち選手たちじゃん?」

だから、凄いのは選手たちだと言う。

流川は盛大に溜息を吐いた。

「インターハイ出場を決めたのは、『湘北高校バスケ部』だろうが」

「ん?」

は首を傾げる。

だって湘北高校バスケ部だろうが。マネージャーがバスケ部員じゃねぇって言ってみろ。先輩のハリセンが炸裂すんぞ」

と少し不機嫌に言う。

「俺達が凄ぇなら、だって凄ぇんだよ」

「ず..図々しくない?」

覗うようにが言う。

「どあほう」

心底呆れた表情で流川が言う。

「そんなこと言ってるとインハイ連れてかねぇぞ」

そんな権限なんて流川にはないが、そんなことを言う。

「そっか...」

「ベンチ入ってなくても、は部員だろうが」

流川の言葉を反芻するようには目を細めた。

そんなの表情を目にした流川は思わず視線を逸らす。

「どあほう」

ポツリと呟いた。

「なに?」

「なんでもねー」

そう言って流川はが向かっていたゴールとは反対側にあるゴールに向かってドリブルをはじめ、ダンクを決める。

「おー、凄い。さすが...」

パチパチと手を叩くにチラと視線を向け、「で、練習の続きは?」と流川が問う。

「あと1時間だけやって帰ろうかな。日も長いし」

「付き合ってやるよ」

「ありがとう」

あと1時間だけと言いながら、日が沈むまでは練習を続けた。

「何で、入んねぇんだ?」

「え...」

「いきなりシュートフォームも崩れるし」

「えーと...」

「今度特訓してやる」

「...ありがとー」

どうやら流川のバスケ魂によくわかんない火をつけてしまっただった。









桜風
12.8.8


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