風と雲/きみと私 2





春休みになって私は地元に帰る。

母校へと足を運んだ。

職員室へ行き、昔お世話になった先生と会話をする。

来年は私は4年で、教育実習を控えている。

母校で実習をさせてもらえないかと頼みに来たのだ。

そういう卒業生は少なくないようで、先生も慣れたものであっさり了承してくれた。




名前を呼ばれて振り返れば、田岡先生。

「お久しぶりです、先生。まだ熱血監督ですか?」

「当然だ。我が陵南を全国へ連れて行くのが私の目標だからな」

「全国制覇、じゃなくて?」

「それも含めての、全国だ」

力強くそう言い切る先生に

「相変わらずですね」

思わず笑う。

田岡先生は男子バスケ部の顧問で、監督。

自分の足でスカウトもしている。本当に陵南高校のバスケ部が大切で大好きなんだろうって思う。

は、どうした?」

「教育実習の根回しです。山吹色じゃないですけど、お饅頭、職員室において来ました」

「残っていたら貰おう」

「たぶん、なくなってますよ。山下先生がソッコー開けてました」

良く食べることで有名だった先生のそれはまだ健在のようだった。

おなか周りがハンパじゃない。余計なお世話にもダイエットを勧めてみたけど、

「何度も失敗すると、いい加減どうでもよくなってくるよ」

と言って笑う。

まあ、本人が自覚してそれなら、何も言うまい...


「しかし、そうか。も4年か」

感慨深そうに先生が呟く。

「はい。そういえば。さっき聞いたんですけど、女バス。無くなったんですね」

「ああ、去年な。まあ、元々強くなかったし、人気も落ちていたからな」

「その分、予算は男子に行ったんですね?」

「ま、まあな。そうか、が来るんだったら、顧問してみるか?」

そんなことを言われた。

教育実習に来た大学生は、顧問も体験する。

「バスケ部がメチャメチャ忙しい時期じゃないですか。6月ですよ?」

「いいじゃないか。いい経験になるぞ」

そう言って笑う。

教育実習生の忙しさを舐めないでください、田岡先生。

課題とかあるし、授業を任されたらその下調べとか。とにかく、凄く大変だって聞いたのよ!

「じゃあ、このことは職員会議で提案しておくからな。...足は、大丈夫だな?」

「まあ、一応。長時間ダッシュは無理ですけど。でも、顧問って何をするんですか?」

「考えておく。なら何を頼んでも大丈夫そうだしな」

そう言ってカカと笑う。

「当分バスケットボール触ってませんよ」

「昔の勘が残ってるはずだ。あの学年で男女合わせてお前以上に練習していた者は居ないからな」

そう言って肩にポン、と手を置く。

期待されても困るんだけどな...

心の中でそっと溜息を吐いた。










桜風
07.6.14


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