| 地元に帰って1年間、塾の講師のバイトで過ごした。 何度か田岡先生にバスケ部を見に来ないかと言われたけど、残念ながら塾講師って忙しいのです、先生... そして、私の就職は1年の浪人期間を経て実現した。 これも田岡先生のお陰。 もう田岡先生の家に足を向けて寝ることは出来ません... 新任教師の紹介で講堂の壇上に立つ。 2年前は教育実習生として立ったけど、やはりこの眺めによって緊張を増す。 でも、知ってる顔もちらほらあるから前に比べたら落ち着いてるかも。 魚住くん、また背が伸びた!?髪も短くしてる。大きいからこっからでも分かるよ。 そして、私は唖然とした。 『アキラくん』にそっくりな子が2年にいる。 ...何、双子デスカ!? 田岡先生の画策によって私はバスケ部顧問。 「えー、3年は2年前の教育実習で知ってると思うが。はこの学校の卒業生だ。まあ、バスケにも精通しているから、安心して顧問として頼って構わんぞ」 構います、先生... 「ほら、。挨拶だ」と促されて、 「えー。バスケ辞めてずいぶん経つ上、全然情報を仕入れていなかったので、頼られると正直困ると思うのですが。頑張ります」 と挨拶をする。 先ほどから私が気になってるのは、アキラくんの双子(仮定)の人。 仙道と言うらしい。 うーん、知らないなー。苗字聞いてなかったからなー... 休憩時間、3年生が声を掛けてくる。 「お久しぶりです、先生」 「久しぶり。ねえ、魚住くんってまた伸びた?」 「ええ、まあ。それより、俺たち去年、先生が入ってくるだろうって思ってたんですよ」 「意外にもまだまだ就職難が続くようだよー。気をつけてね」 そう言って笑う。 でも、視線が気になる。なんか、私の後頭部辺りに注がれてませんか? 「仙道。ちょっと来い」 魚住くんが私の頭越しに仙道くんを呼ぶ。 「先生。コイツ、去年田岡監督が東京の学校からスカウトしてきた仙道です」 東京!? 「仙道は1年のときから陵南のエースです」 誇らしげに、魚住くんが紹介する。 アキラくんの双子は、じーっと私を見て、 「仙道彰です」 と言った。 双子でおんなじ名前かー...んなワケあるか!! 心の中でセルフボケ突っ込み終了。 何と声を掛けて言いのか分からず、 「、です...」 改めて自己紹介。 ああ、何だか居心地悪いわ... 休憩時間が終わって、練習が再開される。 仙道くんは田岡先生が惚れ込んだとおりに凄くいい動きをする。 正直、ちょっとだけ羨ましい。 一年生と一緒に片づけをして体育館を出る頃には、もうすっかり日が落ちていた。 職員用の自転車置き場に行けば、ヌッと人影が現れる。 「え!?仙道くん?」 そこには、ツンツン頭の仙道くんが居た。 「ビックリしたー。おどかさないでよ」 笑いながらそう言うと、 「さん、ですよね?」 と言われた。 私は、仙道くんがあの『アキラ』くんだと確信した。 まあ、本当にあのときの『アキラ』くん以外に見えないんだけど... 「ええ。名前はよ」 そう答える。 彼とは適度な距離を保っていないと、一瞬のうちに懐まで入ってきそうだから。 「そうじゃなくて」 「早く帰りなさい。明日も朝練があるでしょう?」 そう言って自転車に鍵を挿す。 「じゃあ、また明日ね」 自転車のスタンドを蹴ってサドルにまたがってペダルを強く踏む。 「待ってください」 仙道くんの声が聞こえたけど、でも、聞こえないフリをして、繰り返しペダルをこぐ。 一度振り返ると、仙道くんはその場から動かず、こちらを見ていた。 |
桜風
07.7.3
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