風と雲/きみと私 5





地元に帰って1年間、塾の講師のバイトで過ごした。

何度か田岡先生にバスケ部を見に来ないかと言われたけど、残念ながら塾講師って忙しいのです、先生...


そして、私の就職は1年の浪人期間を経て実現した。

これも田岡先生のお陰。

もう田岡先生の家に足を向けて寝ることは出来ません...


新任教師の紹介で講堂の壇上に立つ。

2年前は教育実習生として立ったけど、やはりこの眺めによって緊張を増す。

でも、知ってる顔もちらほらあるから前に比べたら落ち着いてるかも。

魚住くん、また背が伸びた!?髪も短くしてる。大きいからこっからでも分かるよ。

そして、私は唖然とした。

『アキラくん』にそっくりな子が2年にいる。

...何、双子デスカ!?


田岡先生の画策によって私はバスケ部顧問。

「えー、3年は2年前の教育実習で知ってると思うが。はこの学校の卒業生だ。まあ、バスケにも精通しているから、安心して顧問として頼って構わんぞ」

構います、先生...

「ほら、。挨拶だ」と促されて、

「えー。バスケ辞めてずいぶん経つ上、全然情報を仕入れていなかったので、頼られると正直困ると思うのですが。頑張ります」

と挨拶をする。

先ほどから私が気になってるのは、アキラくんの双子(仮定)の人。

仙道と言うらしい。

うーん、知らないなー。苗字聞いてなかったからなー...


休憩時間、3年生が声を掛けてくる。

「お久しぶりです、先生」

「久しぶり。ねえ、魚住くんってまた伸びた?」

「ええ、まあ。それより、俺たち去年、先生が入ってくるだろうって思ってたんですよ」

「意外にもまだまだ就職難が続くようだよー。気をつけてね」

そう言って笑う。

でも、視線が気になる。なんか、私の後頭部辺りに注がれてませんか?

「仙道。ちょっと来い」

魚住くんが私の頭越しに仙道くんを呼ぶ。

「先生。コイツ、去年田岡監督が東京の学校からスカウトしてきた仙道です」

東京!?

「仙道は1年のときから陵南のエースです」

誇らしげに、魚住くんが紹介する。

アキラくんの双子は、じーっと私を見て、

「仙道彰です」

と言った。

双子でおんなじ名前かー...んなワケあるか!!

心の中でセルフボケ突っ込み終了。

何と声を掛けて言いのか分からず、

です...」

改めて自己紹介。

ああ、何だか居心地悪いわ...


休憩時間が終わって、練習が再開される。

仙道くんは田岡先生が惚れ込んだとおりに凄くいい動きをする。

正直、ちょっとだけ羨ましい。

一年生と一緒に片づけをして体育館を出る頃には、もうすっかり日が落ちていた。

職員用の自転車置き場に行けば、ヌッと人影が現れる。

「え!?仙道くん?」

そこには、ツンツン頭の仙道くんが居た。

「ビックリしたー。おどかさないでよ」

笑いながらそう言うと、

さん、ですよね?」

と言われた。

私は、仙道くんがあの『アキラ』くんだと確信した。

まあ、本当にあのときの『アキラ』くん以外に見えないんだけど...

「ええ。名前はよ」

そう答える。

彼とは適度な距離を保っていないと、一瞬のうちに懐まで入ってきそうだから。

「そうじゃなくて」

「早く帰りなさい。明日も朝練があるでしょう?」

そう言って自転車に鍵を挿す。

「じゃあ、また明日ね」

自転車のスタンドを蹴ってサドルにまたがってペダルを強く踏む。

「待ってください」

仙道くんの声が聞こえたけど、でも、聞こえないフリをして、繰り返しペダルをこぐ。

一度振り返ると、仙道くんはその場から動かず、こちらを見ていた。










桜風
07.7.3


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